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金融庁

「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」について

2016.06.06
小石原 英勝 (こいしはら ひでかつ)
小石原 英勝 (こいしはら ひでかつ)
新日本有限責任監査法人
金融アドバイザリー部 エグゼクティブディレクター
2011年7月検査局検査監理官を最後に金融庁を退職。在職中は、幅広く金融検査・監督行政に携わり、入所後は、セミナー活動やトップマネジメント・インタビューなどに従事。

金融庁は、2016 年3月4日、「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」を国会に提出、同法案は4月28日衆議院で可決、5月25日参議院で可決成立、1年以内の政令指定日からの施行が予定されている。

同法は、金融審議会のワーキング・グループなどでの議論を踏まえて、①金融グループの経営管理における銀行持株会社等が果たすべき機能の明確化、②金融グループ内の共通・重複業務の集約等の容易化、③金融関連IT 企業への出資の柔軟化、④プリペイドカード利用についての苦情処理体制の整備、⑤仮想通貨への対応(仮想通貨の売買などを業として行う仮想通貨交換業者に対する登録制・規制等の導入)などが盛り込まれている。本稿においては、主として法改正に伴う金融グループの経営管理の留意点について記載する。

1. 銀行持株会社の機能の明確化

これまでの銀行持株会社(或いは傘下に子会社を有する銀行グループの銀行)は、子銀行等の経営管理を行うこと及びこれに付随する業務を行うこと以外の業務を営むことはできないとされていた。

今般の改正により、①グループの経営の基本方針等の策定及びその適正な実施の確保、②グループに属する会社相互の利益相反の調整、③グループの法令遵守体制の整備が銀行法上明確化されたほか、グループの業務の健全かつ適切な運営の確保に資するものが別途内閣府令で定められることになるなど、銀行持株会社等の機能の明確化・充実が図られている。

2. 共通・重複業務の集約を通じた金融仲介機能の強化

(1) 持株会社による共通・重複業務の執行

銀行持株会社グループに属する複数の会社に共通する業務(銀行を含む場合に限る。)で、その業務を銀行持株会社が行うことが、そのグループの業務の一体的かつ効率的な運営に資する一定の業務(例えば、「グループ全体の資金運用や共通システムの管理など」)を、その銀行持株会社自身が実施することを可能とするなど、銀行持株会社の業務範囲の拡大が行われている。
なお、銀行持株会社への業務の集約には、あらかじめ、内閣総理大臣の認可が必要とされている。

(2) 子会社への業務集約の容易化

銀行持株会社グループに属する複数の会社が、共通する業務(銀行を含む場合に限る。)を、そのグループに属する他の会社(業務委託先)に委託する場合、委託元の各子銀行に課される委託先管理義務(業務の的確な遂行を確保するための措置を講じる義務)を、銀行持株会社に一元化することを可能とする業務委託先管理義務の見直しが行われている。
なお、上記措置を講じようとする場合には、内閣府令で定めるところにより、当該業務の的確な遂行を確保するための措置を講ずる必要がある。

(3) グループ内の資金融通の容易化

同一の銀行持株会社の子銀行同士で取引等を行う場合、銀行の経営の健全性を損なうおそれがないこと等の要件(内閣府令で規定)を満たすものとして内閣総理大臣の承認を受けたときは、「特定関係者との間の取引等の規制」を適用しないこととされ、いわゆる「アームズ・レングス・ルール」の緩和が行われている。これにより、例えば、アームズ・レングス・ルールに基づく利率(市場レートなどグループ外の「同一の信用力を持つ者」との間で取引を行う場合)とは異なるレートで、グループ内の子銀行同士の資金融通が可能となる。

3. ITの進展に伴う技術革新への対応

(1) 金融関連IT企業等への出資の容易化

銀行又は銀行持株会社は、金融関連IT企業等(情報通信技術その他の技術を活用した銀行業の高度化若しくは利用者の利便の向上に資する業務又はこれに資すると見込まれる業務を営む会社)の議決権について、基準議決権数(銀行:5%、銀行持株会社:15%)を超える議決権を取得・保有することができることとされ、いわゆる「5%ルール」の緩和が行われている。この改正により、いわゆるFinTech関連企業への出資が容易となる。
なお、金融関連IT企業等の基準議決権数を超える議決権の取得等には、内閣総理大臣の認可が必要である。

(2) 決済関連事務等の「従属業務」の受託の容易化

銀行及び銀行持株会社が子会社とすることができる「従属業務」を営む会社(主として銀行等・銀行持株会社等の営む業務のためにその業務を営む会社)について、「従属業務」を営んでいるかどうかの基準、いわゆる「収入依存度規制」が見直されている。
この改正により、「従属業務」を営む会社に求められる収入依存度規制(現行、親銀行グループからの収入が50%以上であること等が必要)を緩和し、グループ外からのシステム管理などの業務を容易に受託することができることとなる。

以上が、今回法改正に伴う金融グループの経営管理の留意点である。今般の改正により、「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」において議論された「銀行持株会社の業務規制の明確化」、「5%ルールの緩和」、「アームズ・レングス・ルールの緩和」等が行われ、金融機関は一層の業務の効率化等が実施できるようになると考える。金融機関においては、今般の改正を踏まえ、将来にわたり質の高いサービスを提供出来るよう、持続可能なビジネスモデルの構築に向けた取組みを進めていくことが重要である。

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