業種別
金融庁

「平成27事務年度 金融レポート」の公表について

2016.09.27
小石原 英勝 (こいしはら ひでかつ)
小石原 英勝 (こいしはら ひでかつ)
新日本有限責任監査法人
金融アドバイザリー部 エグゼクティブディレクター
2011年7月検査局検査監理官を最後に金融庁を退職。在職中は、幅広く金融検査・監督行政に携わり、入所後は、セミナー活動やトップマネジメント・インタビューなどに従事。

金融庁は、9月15日、「平成27事務年度 金融レポート」を公表した。本レポートは、平成27年9月に策定・公表された「金融行政方針」に基づき、当該方針の進捗状況や実績等を継続的に評価し、その評価を更に平成28事務年度「金融行政方針」に反映させるため、取りまとめ、公表したものであるとしている。

「金融レポート」は、「第Ⅰ章 我が国の金融システムの現状」、「第Ⅱ章 金融行政の重点施策に関する進捗・評価」、「第Ⅲ章 金融庁の改革」の3章で構成され、証券取引等監視委員会及び公認会計士・監査審査会の実績・評価等を含め金融庁全体として取りまとめられており、今後の各金融機関の業務運営等を改善するうえでの示唆に富んだものとなっている。当該レポートには、今後の金融行政の方向性等も記載されているなど、金融機関等が適切な対応を図る観点からも十分な留意が必要である。

以下は、今般公表された「金融レポート」の第Ⅱ章を中心とした概要及び主なポイントである。

なお、同日付で金融機関における金融仲介機能の発揮状況を客観的に評価できる指標「金融仲介機能のベンチマーク」及び貸付条件の変更先の現状や金融機関による支援状況等の調査結果である「抜本的な事業再生への課題について」があわせて公表されている。

1. 金融仲介機能の十分な発揮と健全な金融システムの確保

(1) グローバルに活動する金融機関

① 3メガバンクグループ

平成27事務年度は「ビジネスモデルの確立と銀行経営上の課題」や「経営管理・リスク管理等の課題」等を中心に、モニタリングを実施したとしている。

3メガバンクグループは、G-SIBSの中でも比較的資産規模が大きいが、ROA(総資産利益率)は低く、総資産資金利益率や総資産非金利利益率は欧米主要銀行の半分程度となっており、今後の経済動向次第では信用コストが増加し、ROAが一層低下するリスクがあるとしている。

また、海外業務の拡大が継続する中、海外与信管理や外貨流動性管理について、水平的レビューを実施しており、

  • 海外貸出は、資源関連与信や新興国向け与信を積み上げており、特定の企業や業種に対する与信集中が高まる傾向
  • 資源価格の下落等が与信全体に与える影響等についてのリスク分析・報告、経営レベルのリスク認識を組織全体に浸透させるための仕組み等、ガバナンスの十分な発揮が必要
  • 海外貸出が急速に拡大していく中にあっては、預金や外債発行といった安定的な外貨調達とともに、外貨流動性リスク管理の高度化が必要であり、市場混乱が生じる可能性も考慮した管理が重要

としている。

金融庁としても、個別金融機関の行動とマクロ経済環境との相互作用の分析を含め、次の危機の兆候を把握し、「金融機関においてストレステストを活用しつつフォワードルッキングかつ機動的な対応ができているか」について、対話を行っていくとしている。

② 外国金融機関(在日拠点)

平成27事務年度は、G-SIFISについては、銀証一体の立入検査やオフサイト・モニタリングを実施、非G-SIFISについては、オフサイト・モニタリングを通じて、より焦点を絞った立入検査も実施したとしている。

モニタリングの結果、本店からのコストカットの要請等により、一部の在日拠点では、人員体制が不十分となり、「マネー・ローンダリング(資金洗浄)対策等、法令遵守上の問題が生じている先が認められた。」としている。

今後とも、各在日拠点のビジネス動向やリスク特性をタイムリーに把握し、新たな課題については、在日拠点に改善を促すほか、本店・地域本部幹部とのコミュニケーション等を通じて、本店・地域本部主導での改善を求めるとしている。特に、G-SIFISについては、在日拠点に留まらず、グループ全体でのビジネスやリスクの把握に努めるとともに、監督カレッジへの参加等を通じて、「母国及びアジア地域本部を監督する当局との連携を継続していく。」としている。

(2) 地域金融機関

平成27事務年度は、地域経済の発展と自らの経営基盤の安定を目指すというビジネスモデルについて検証を進めたとしている。

① 人口減少と貸出業務の将来

地域銀行の中長期的な収益構造がどのように変化するかを分析・推計した結果、顧客向けサービス業務(貸出・手数料業務)の利益率を試算すると、2025年3月期では6割を超える地域銀行がマイナスになる結果となったとしており、今後、人口減少等により貸出需要の減少が予想される中、従来のように、担保・保証等で保全された先や信用力で問題のない大企業等を中心に貸出残高を積み上げることにより収益を拡大することは、更に困難となるおそれがあるとしている。

② 貸出業務の収益性の差異

市場金利の低下による貸出業務への影響については、銀行間で比較可能な形で収益分析を行った結果、貸出金利の低下幅が比較的緩やかな地域銀行については、「地元の中小企業等の顧客基盤を中心に小口分散化した融資サービスを提供」し、「地元顧客を良く理解することで、経営状況が悪化した企業に対して有効な経営支援を行い取引先企業の突発破綻も未然に防ぐこと」により、「貸出利回りの低下を抑えつつ、相応の収益を確保する。」といった特徴を持つ地域銀行の方が、市場金利低下の影響を相対的に受けにくく、より安定的な経営を実現している姿が窺えるとしている。また、このようなビジネスモデルを追及している銀行の取組みには、企業のニーズや課題に沿ったサービスの提供を組織的・継続的に実施しているという共通する特徴が認められたとしている。

③ 顧客企業からの評価等
(地域金融機関の顧客企業約3,200社を対象とするヒアリング及びアンケート結果)

メインバンクに求めるものとして、多くの顧客企業は、「融資の金利条件」以上に、「自社や自社の事業への理解」、「長年の付き合いによる信頼関係」等、企業に寄り添う姿勢を重視する傾向にあるとしている。また、企業が求める情報と実際に提供される情報については、企業は「自社及び取引先の業界動向」等、自社の事業に直結する情報を求めているが、金融機関は「経済・金融・国際情勢」等の一般的な情報や、「金融商品に関する情報」等供給側の事情を優先させた情報を提供する傾向があり、ギャップが存在しているとしている。さらに、ヒアリング等の結果では企業の運転資金の調達形態として、証書貸付による長期資金で調達している企業が多く、債務者区分が下位になるほど、また、小規模ほどその比率が高まる傾向にあるとしている。信用保証協会の利用状況については、債務者区分が下位になるほど、金融機関の勧めにより利用している企業の比率が高まる傾向があるとしている。

金融機関が、取引先企業の資金繰り計画に合わせた資金提供から、信用保証付きの制度融資等を利用した分割弁済付きの長期運転資金提供へと融資方針を転換した結果、顧客企業との接触頻度が減少し、顧客の課題解決への対応が遅れることも懸念されるとしている。

金融庁においては、上記ヒアリング等調査のほか、条件変更先等調査を実施している。金融円滑化法以降、貸付条件の変更期間が長期化するとともに、抜本的な事業再生を含む経営改善は進んでおらず、長期にわたり条件変更が繰り返されている先については、信用保証等による保全割合が高いことによる金融支援のインセンティブの低下や、安易な長期借入や条件変更による企業の経営改善のインセンティブの低下に伴い、キャッシュフロー等の実態に即した金融機関による抜本的な支援として十分なものが提供されていないといった特徴が窺われるとしている。

④ 金融仲介の質を高めるベンチマークの活用

金融機関が、金融仲介の質を一層高めていくためには、取組みの進捗状況や課題等について客観的に自己評価することが重要であるとの考え方の下、「金融仲介の改善に向けた検討会議」での議論等も踏まえ、金融機関における金融仲介機能の発揮状況を客観的に評価できる多様な指標(「金融仲介機能のベンチマーク」)が策定され、「金融レポート」とあわせて公表されている。

ベンチマークの具体的項目は、全ての金融機関が金融仲介の取組みの進捗状況や課題等を客観的に評価するために活用可能な「共通ベンチマーク(5項目)」と、各金融機関が自身の事業戦略やビジネスモデル等を踏まえて選択できる「選択ベンチマーク(50項目)」が提示されている。

金融機関は、当該ベンチマークを活用して、金融仲介機能発揮への取組みについての「自己点検・評価」、「積極的かつ具体的な開示」及び「当局との建設的対話」が求められており、金融仲介機能の改善に向けて、企業の価値向上等に資する金融仲介の取組みの実績を着実に上げていくことが期待されている。

(3) 保険会社

平成27事務年度は、保険会社の伝統的なビジネスモデルを巡る環境変化が進んでいるところから、ビジネスモデルに係る経営課題や大手生損保会社のM&Aにおけるガバナンスについてモニタリングを実施したほか、保険会社のORSAレポートも活用してERM評価を行ったとしている。

① 保険会社の収益構造や事業戦略の持続可能性

多くの保険会社において、中長期的な経営戦略における海外事業の位置づけや経済価値ベースのリスク管理をどのように取り入れるか等、環境の変化に対応していくための共通の課題が窺われたとしている。金融庁は、国民経済発展のための保険業のあり方や今後予想される経営環境の中で、保険会社はどのような付加価値を生み出すことができるか等、保険会社のビジネスモデルに関し、幅広く検証をしていくほか、動的な視点で、将来にわたって健全性を確保していくためのガバナンスの構造や、それを支えるリスク管理のあり方について、関係者を含めて議論していくとしている。

② 大手生損保のグローバル展開に関する経営管理

現在、大手生損保各社では、それぞれの課題認識の下、M&Aに関するガバナンスやリスク管理の各種態勢の向上に向けた取組みを行っているところであり、金融庁は、引き続き、取締役会の実質的な機能発揮状況について実態を把握していくとしている。

③ ERMの促進

保険会社のERMの評価に当たっては、リスク文化とリスクガバナンス、リスクコントロールと自己資本の十分性、リスクプロファイルとリスク測定及び経営への活用といった項目を検証し、ERMに関する態勢が整備されているか、ERMの考え方が保険会社内に浸透しているかといった観点から確認を行っている。

この結果、ERMを経営全体に活かすガバナンスを備えた社は未だ一部であり、このため、引き続き各社にERMの高度化を促すほか、ERMヒアリング及びORSAレポートを通じ、現時点の静的な健全性評価に留まらず、将来の動的な健全性を幅広く分析することで、より実態に即した監督を行っていくとしている。なお、本レポートと同日付で、ORSAレポート等をもとに実施されたERM評価の結果概要が公表されている。

(4) 証券会社等

① 証券会社の現況

平成27事務年度は、発行体の財務状況等について、実態と異なる説明を行い、債券を顧客に勧誘・販売していた事案が発覚したが、特に収益環境の厳しい証券会社ほど、新たな収益源を求めて、投資者保護上の懸念が生じるおそれのあるビジネスに傾斜するリスクが高まることにも留意が必要であるとしている。金融庁は、各証券会社の規模・特性や課題等に留意しつつ、将来に向けた経営方針・戦略や投資者保護のための態勢整備の取組みについて、積極的に議論していくとしており、投資者保護上の課題が認められた場合には、従来同様、個々の証券会社に対し、経営陣自らが問題意識を持って、内部管理体制も含めて抜本的な改正に取り組むよう促していくとしている。

② FX業者の為替リスク管理

平成27年度は、金融先物取引業協会が中心となり、①未カバーポジションに対するリスク、②差入証拠金(未収金)の発生リスク、③カバー取引先の破綻リスクについて、共通のストレスシナリオを策定し、各FX業者がストレステストを実施、今後は、ストレステストの結果分析を進め、リスクの高い業者にリスク削減を求めるとともに、継続的なストレステストを通じた為替リスク管理の向上を図っていくとしている。

2. 活力ある資本市場と安定的な資産形成の実現、市場の公正性・透明性の確保

(1) 国民の安定的な資産形成の促進:「貯蓄から資産形成へ」

① 現状分析及び国民の安定的な資産形成に向けた課題等

我が国の家計金融資産の構成は、米英に比べ現預金比率が高く、株式・投信等の比率が低く、これが我が国の家計金融資産の伸びが緩やかに留まっている一因と考えられるとしている。安定的な資産形成やリターンの安定した投資を行うためには、投資対象の分散、投資時期の分散、長期的な保有の3つを組み合わせて活用することが有効であるが、我が国では必ずしも広く一般に認識されているわけではないとしている。

金融庁が実施したアンケート調査では、投資教育を受けたことがないものが7割を占め、そのうちの約3分の2が、「金融や投資の知識を身に付けたいとは思わない」としていることから、外部的な環境整備(職場積立NISAや確定拠出年金等)の推進や学校の場での金融商品の適切な利用選択に必要な知識行動についての着眼点等を習得すること等も重要であるとしている。

安定的な資産形成の実現に向け、2014年から開始されたNISAは、順調に推移しているが、家計の「貯蓄から資産形成へ」という流れを政策的に後押しし、安定的な資産形成を推進する観点からは、更なる投資の裾野拡大の推進を含め、NISAの改善・普及が課題であるとしている。

② 金融機関の顧客本位の業務運営を巡る課題と今後の対応策

平成27事務年度は、日米の投資信託の比較分析や、販売会社における販売姿勢、更には、販売額が伸びている貯蓄性保険商品やファンドラップについて検証を行ったとしている。

(ア)日米の投資信託販売状況の比較
我が国では、規模の小さな投資信託が多く、スケールメリットが働かないため管理コストや信託報酬等の手数料も割高で、安定的な資産形成に適した商品が提供されていないとしている。

(イ)販売会社における投資信託の販売姿勢
銀行における投資信託の販売状況をみると、投資信託販売額や収益は増加しているが、投資信託残高や投資信託の保有顧客数は、僅かな増加にとどまっており、回転売買が相当程度行われていることが推測されるとしている。
また、営業現場における販売姿勢を見ると、中長期の資産形成を目的とした顧客に対しても、収益分配頻度の高い商品を提案する場合が多く、必ずしも顧客ニーズに沿った対応が行われていないとしており、顧客本位の取組みには、総じて改善の余地が大きいとしている。

(ウ)貯蓄性保険商品やファンドラップの提供・販売
貯蓄性保険商品(一時払い外貨建保険)については、外貨建の死亡保険や外国債券・投資信託を組み合わせた複雑なパッケージ型の商品であるが、販売に当たり、この商品を構成する個別の商品を別々に購入した場合との経済効果や顧客の支払いコストについて、説明を行っている金融機関は見られないとしており、そうした情報提供を行わないまま高い手数料を徴収する行為は、顧客本位とは言えないとの見方を示している。また、多くの保険会社が実施している販売サポートは、顧客の支払保険料を上昇させる要因の一つとなっているとしている。
ファンドラップについては、他の投資商品の比較等により、その手数料が、提供されるサービスや運用の成果の対価として適正であるか確認することが重要であるとしている。また、運用対象の投資信託選定プロセスの透明化に向けた取組みはいまだ途上の段階にあるとしている。

(エ)今後の課題と対応策
国民の安定的な資産形成を促進していく観点からは、顧客のニーズや利益に真に適うサービスや良質な商品の提供等、顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティ)が行われることが重要であり、このことが、顧客満足度の向上や金融機関自身の安定的な収益基盤の構築につながるとしている。 金融庁では、金融審議会において、フィデューシャリー・デューティに関する議論が行われており、顧客本位の業務運営のあり方について検討が進められるものと思われる。

(2) ガバナンス改革による企業価値の向上(ガバナンス改革の進捗状況及び改革の深化に向けた対応策)

2015年6月に適用が開始されたコーポレートガバナンス・コードの下、上場企業における独立社外取締役の選任は大きく増加し、指名・報酬に係る任意の諮問委員会の設置等機関設計を見直す企業が増加するなどガバナンス改革に進捗が見られるとしている。

一方で、コーポレートガバナンス・コードに対応した取締役会の実効性評価については2016年3月末の時点で6割以上の企業が未実施であるほか、2016年2月に「フォローアップ会議」が取りまとめた取締役会のあり方についての意見書においては、CEOの適時適切な選解任のプロセス・仕組みが必要であり、また、経営課題への適格な対応の視点から、独立した客観的な取締役会の構成、戦略性を重視した取締役会の運営等が重要であるとしており、今後、ガバナンス改革を「形式」から「実質」へと深化させることが最優先課題であるとしている。

(3) 市場の公正性・透明性の確保に向けた取組の強化

証券取引等監視委員会は、従来型の問題企業の摘発に加え、大規模上場会社における開示の適切性等の監視が課題であるとしている。大規模上場会社における開示の適切性等の監視の強化のため、上場企業の経営環境の変化等に伴う開示規制違反の潜在的リスクに着目した情報収集・分析等を強化しており、個別取引や企業等に着目した市場監視に加え、内外のマクロ経済動向等の変化が不公正取引につながるリスクを念頭に置きつつ、時代の先を見ながら内外のリスクに着目した市場監視を行っていく必要があるとしている。

一方で、会計監査については、最近の不正会計事案等を契機として、改めてその信頼性が問われており、会計監査の信頼確保に向けた取組として、「有効なガバナンスとマネジメントの下で高品質な会計監査を提供する監査法人が、企業や株主から適切に評価され、さらに高品質な会計監査の提供を目指すという好循環を確立し、会計監査の品質の持続的な向上・信頼性確保を図る必要。(「会計監査の在り方に関する懇談会」提言:2016年3月)」を踏まえ、「取り組むべき施策」として、監査法人のマネジメント強化のためのガバナンス・コードの策定等が検討されている。

3. 顧客の信頼・安心感の確保

平成27事務年度の主な取り組みとして、「障がい者の利便性向上」、「金融ADR制度の運用」、「多重債務問題への取組み」、「インターネット等を利用した非対面取引の安全対策・不正送金への対応」、「振り込め詐欺等への対応」、「偽造・盗難キャッシュカード、盗難通帳への対応」、「保険会社による保険金等支払管理態勢」及び「金融商品取引業者等への対応」の8項目が記載されており、金融機関が適正な業務運営を行うことは、金融機関に対する顧客の信頼・安心感の確保、ひいては円滑な金融仲介機能の発揮につながるため、こうした観点から、金融機関は、顧客の信頼を損ねることがないよう、利用者保護・法令等遵守を徹底することが重要であるとしている。

4. IT技術の進展による金融業・市場の変革への戦略的な対応

昨事務年度の金融行政方針において具体的重点施策として掲げられた「FinTechへの対応」等について、これまで講じられてきた措置など主な取り組みが記載されている。

「FinTechへの対応」については、「FinTechサポートデスク(2015年12月設置)」を通じて、事業者の実態把握や支援を進めるとともに、制度面の対応として、ITの急速な進展等を踏まえた制度面の手当てを行うため銀行法を改正(2016年6月)したほか、利用者保護や不正の防止等の制度面の課題について、金融審議会において、引き続き検討するとしている。

「サイバーセキュリティの強化」については、平成27年度は、地域銀行、証券会社、生損保等(143先)を対象にサイバーセキュリティ対策の実態把握を実施している。

実態把握の結果、経営陣の取組として「サイバーセキュリティへの対応を中期経営計画に組み込むとともに、ロードマップを作成」、「サイバー攻撃等について、実害の有無にかかわらず、定期的に経営会議等への報告」、「他社事例等の分析を行った上で、自社に必要な態勢整備等について積極的な議論」等の良好事例が認められた一方、「従来目線でのリスク評価のみに留まり、サイバーセキュリティに着眼したリスク評価が未実施」、「サイバー攻撃検知のためのログ分析が不十分」及び「実効性あるコンティンジェンシープランが未整備」といった事例も認められており、態勢整備が遅れている根本的要因は、経営陣の対応が受動的であるといったことが共通してあげられるとしている。

また、金融庁は、サイバー攻撃への対応能力向上に当たっては、演習の実施を通じ、PDCAサイクルを機能させることが重要であることから、平成28事務年度には、金融庁主催の金融業界横断的なサイバーセキュリティ演習を実施するとしている。

「アルゴリズム取引等への対応」については、金融審議会において、アルゴリズムを用いた高速取引の影響力の増大が市場の公正性、透明性、安定性等に及ぼす影響について議論を進めるとともに、欧米における規制等の動向も踏まえながら、我が国における対応について検討を進めるとしている。

5. 国際的課題への対応

(1) 国際的な金融規制改革への対応

国際的な金融規制改革は、金融システムの強靭性を高めるうえで一定の成果があったと考えられるが、「安定と成長の両立」、「規制の副作用の検証」、「次の危機への対応」、「規制と監督の役割分担」等について、規制当局者同士の場のみならず、国際会議での講演や海外メディアへの寄稿等を通じて繰り返し問題提起を行ってきたとしている。

また、平成27事務年度は、我が国金融システムの課題と国際的な課題の共通する要素(例えば銀行勘定の金利リスクに係る問題等)について、国内規制・監督担当者と国際交渉担当者が一体的なチームを編成し、内外一体のアプローチを推進したとしており、今後とも、金融モニタリングの基本的な考え方の整理をはじめ、内外一体の検討を進めていくとしている。

(2) 国際的なネットワーク・金融協力の強化

金融機関活動等のグローバル化に対応するため、金融規制当局間の国際的な連携強化の観点から、金融庁は様々な形で国際的なネットワークや金融協力を行ってきたとしており、監査監督機関国際フォーラム(IFIAR)の常設事務局の東京設置のほか、ミャンマーにおける証券取引法令整備及びヤンゴン証券取引所設立支援の実施、「アジア金融連携センター(AFPAC)」を「グローバル金融連携センター(GLOPAC)」に改組し、中東及びアフリカからも研究員を受け入れたとしている。

6. その他の重点施策

その他の重点施策として、「(1)自然災害による被災者支援に関するガイドライン」、「(2)平成28年熊本地震への対応」、「(3)マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の防止」、「(4)反社会的勢力への対応」及び「(5)金融指標の信頼性・透明性の維持・向上」の5項目が記載されている。

特に「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の防止」については、平成28年10月から「犯罪による収益の移転防止に関する法律」等が施行され、各金融機関は新たな顧客管理の措置や、自らの取引がマネロン等に利用されるリスクについて、適切に調査・分析した上で、書面等を作成し、そのリスク評価に基づいた対応が必要になる。金融庁は、今後、改正犯収法に則した適切な対応がなされているかを監督指針に基づきモニタリングするとしている。

以上が、「金融レポート」の第Ⅱ章(金融行政の重点施策に関する進捗・評価)を中心とした概要及び主なポイントである。

なお、「第Ⅰ章 我が国の金融システムの現状」においては、「現在、我が国の金融システムは、総体として健全であり、安定している」としたうえで、人口の減少・高齢化社会の下で期待成長率が低下しており、「今後、金利低下が継続する中、短期で調達し、より中・長期の貸出や有価証券運用を行う単に長短の金利差を利用しただけのビジネスモデルの持続可能性について検証が必要である。」としていることや、業種別貸出において「不動産向け貸出が、特に地域銀行で拡大しており、今後の動向について注視が必要である。」としていることには留意が必要であろう。 

また、「第Ⅲ章 金融庁の改革」中「2.金融行政のあり方」においては、金融機関の「目指すべき金融の姿(顧客との「共通価値の創造」に根ざしたビジネスモデルの確立)」とそれを実現するための「検査・監督の見直しの3つの柱(①形式から実質へ、②過去から将来へ、③部分から全体へ)」が示されており、平成28年8月に設置された「金融モニタリング有識者会議」において、こうした新しいモニタリングの基本的な考え方や手法等について、外部の有識者を交えて議論、整理するとしている。今後、当該会議から「金融検査マニュアル」の取り扱いを含め、具体的な提案が示されるものと思われる。

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