業種別
店頭デリバティブ

非清算店頭デリバティブに係る証拠金規制 シリーズ(2)

2016.10.13

本年4月に掲載しました「非清算店頭デリバティブに係る証拠金規制」において、同規制への対応についてご案内しました。既に2016年9月1日からフェーズ1金融機関(非清算店頭デリバティブ取引想定元本残高が3兆ドル(米国)、420兆円(日本)の金融機関)への適用が開始されていますが、2017年3月1日からは、全ての金融機関に対し、変動証拠金に係る規制の適用が開始されます。

本稿では1. VMビッグバンに向けた留意点、2. 欧州の規制の動向、および 3. 米国当局による同等性評価について取り上げます。

1. VMビッグバンに向けた留意点

2017年3月1日から、主要法域の全ての金融機関に対し、変動証拠金の授受に関する規制の適用が開始され、その影響の大きさから「VMビッグバン」と呼ばれています。

日本では、「金融商品取引業等に関する内閣府令」において、規制対象を、店頭デリバティブ取引想定元本額が単体で3,000億円以上の第一種金融商品取引業者、登録金融機関である銀行、商工組合中央金庫、日本政策投資銀行、信用金庫連合会、農林中央金庫、保険会社と定めています。

一方、証拠金規制に関する国際的な合意を踏まえ、金融庁の監督指針において、3,000億円未満の金融機関についても、金融機関を相手方とする非清算店頭デリバティブ取引について、変動証拠金の適切な管理に係る態勢整備に努めることとされています。
また、信託勘定による取引も、その想定元本に応じて、内閣府令又は監督指針の対象とされています。

それでは、監督指針のみが適用される金融機関は、どのような態勢整備を行う必要があるのでしょうか?
監督指針を踏まえると、以下のような対応が必要であると考えられます。

  • 変動証拠金に係る適切な契約書(例えば、ISDAマスター契約及びCSA契約)の締結
  • 十分な頻度での時価の合計額等の算出及び変動証拠金の授受、アドホックコールに対応した変動証拠金の授受
  • あらかじめ定めた通貨と異なる通貨建ての担保(現金以外)に対するヘアカット
  • 担保資産の適切な分散(例えば、流動性の低い有価証券は一定未満とするなど)
  • 紛争時の対応策の事前策定、適切な対応、紛争内容の記録及び保存
  • 一括清算の約定の法的有効性が確認されていない外国の金融機関等との非清算店頭デリバティブ取引(証拠金の授受が求められていない)に係る適切なリスク管理

なお、取引先の信用力や取引件数・額に関わらず、取引に応じた適切な頻度で変動証拠金の額を計算し、授受を行う必要があると考えられます。

2. 欧州における規制の動向

欧州においては、欧州委員会による規制技術基準(RTS)案のレビューに時間を要したため、規制の適用開始が、日本及び米国等における規制適用開始日である2016年9月1日から遅れることとなりました。同年10月4日に、欧州委員会によりRTSが承認され、今後の施行スケジュールは概ね以下の見通しとなっています。

2016年10月4日 欧州委員会による規制技術基準(RTS)の承認、欧州議会及び閣僚理事会による検討開始
2016年11月末/12月 規制の欧州公報掲載(公報掲載20日後に施行)
2017年1月後半 フェーズ1の金融機関に対する当初証拠金及び変動証拠金規制の適用開始
2017年3月1日 全ての規制対象エンティティに対する変動証拠金規制の適用開始

欧州のスケジュールを踏まえた日米欧の施行スケジュールの改訂版は、図1の通りです。

(下の図をクリックすると拡大します)

(日本の金融機関における留意点)

上記「1. VMビッグバンに向けた留意点」で述べましたように、2017年3月1日から、全ての金融機関に対し、変動証拠金の規制の適用が開始され、規制適用に向けた準備として、カウンターパーティーとのCSA契約の締結や担保管理の態勢整備などを行うことが必要となります。

日本の金融機関では、日系だけではなく、米系や欧州系の金融機関がカウンターパーティーに含まれると考えられますが、CSA契約の交渉においては、各金融機関は限られた期間の中で、非常に多くの金融機関等と契約を締結する必要があり(大手金融機関では数百以上のカウンターパーティーとの契約の締結が必要と言われています)、通常の契約交渉におけるスケジュールとは異なる交渉スケジュールを想定する必要があります。

特に、フェーズ1の欧州系金融機関は、欧州規制の適用開始が想定される1月後半に向け、まずはフェーズ1金融機関間の当初証拠金及び変動証拠金対応に注力することが考えられます。このため、欧州系金融機関とのCSA契約の交渉にあたっては、欧州規制の適用開始の影響を踏まえつつ、迅速に準備を進めていくことが重要と考えられます。

3. 米国当局による同等性評価

クロスボーダーの店頭デリバティブ取引については、各法域の当局が、各規制の同等性評価を行い、同等であると評価される場合、相手国の規制を遵守することにより、自国の規制を遵守するものと見なされることとなります。

2016年9月1日に、日本、米国及びカナダにおいて証拠金規制の適用が開始されましたが、同年9月8日に、CFTC(米国:商品先物取引委員会)は、金融庁からの同等性評価の要請に基づき、日本の規制の同等性に関する決定を行いました。この決定によると、グループ間取引に関する証拠金規制を除き、日本の規制の同等性が認められており、同等性が認められた範囲については、日本の規制の遵守により、CFTCの規制を満たしていると見なされることとなりました。(これを「代替的コンプライアンス」と言います。)

CFTCの規制では、以下の通り、Covered Swap Entity (CSE)とそのカウンターパーティーとの取引において、カウンターパーティーが「非米国人 + 米国人保証なし」に該当する場合、CSEの状況に応じて、一部又は全部の代替的コンプライアンスの適用が認められています。

(下の図をクリックすると拡大します)

今後、他の当局の同等性評価についても、適宜進捗することが想定されます。

【本件に関するお問い合わせ】

新日本有限責任監査法人|金融アドバイザリー部|プリンシパル
和合谷 與志雄 (Yoshio Wagoya)

新日本有限責任監査法人|金融部|パートナー
上野 佐和子 (Sawako Ueno)

新日本有限責任監査法人|金融アドバイザリー部|シニアマネージャー
緒方 兼太郎 (Kentaro Ogata)

新日本有限責任監査法人|金融アドバイザリー部|マネージャー
石川 雄平 (Yuhei Ishikawa)

Email: Fso-Info@jp.ey.com

(※所属・役職等は掲載当時

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