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金融庁

銀行法等の内閣府令案等の公表について(金融グループの経営管理関連)

2017.01.20
小石原 英勝 (こいしはら ひでかつ)
小石原 英勝 (こいしはら ひでかつ)
新日本有限責任監査法人
金融アドバイザリー部 エグゼクティブディレクター
2011年7月検査局検査監理官を最後に金融庁を退職。在職中は、幅広く金融検査・監督行政に携わり、入所後は、セミナー活動やトップマネジメント・インタビューなどに従事。

金融庁は、平成28年12月28日、1年以内の施行が予定されている「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」に係る銀行法等の内閣府令案等を公表した。

改正案は、①金融グループにおける経営管理の充実(金融グループの経営管理における銀行持株会社等が果たすべき機能の明確化)、②共通・重複業務の集約等を通じた金融仲介機能の強化(金融グループ内の共通・重複業務の集約等の容易化)、③ITの進展に伴う技術革新への対応(金融関連IT 企業への出資の柔軟化)、④仮想通貨への対応などが盛り込まれている。本稿においては、主として金融グループの経営管理の留意点について記載する。

1. 金融グループにおける経営管理の充実(銀行持株会社の機能の明確化)

これまでの銀行持株会社(或いは傘下に子会社を有する銀行グループの銀行)は、子銀行等の経営管理を行うこと及びこれに付随する業務を行うこと以外の業務を営むことはできないとされていた。

先般の法改正により、①グループの経営の基本方針等の策定及びその適正な実施の確保、②グループに属する会社相互の利益相反の調整、③グループの法令遵守体制の整備が銀行法上明確化されたほか、今般の内閣府令の改正により、グループの業務の健全かつ適切な運営の確保に資するものが具体的に定められるなど、以下のような銀行持株会社等の機能の明確化・充実が図られている。

(1) グループの経営の基本方針等の策定等

銀行グループの経営の基本方針その他これに準ずる方針として「銀行グループの収支、資本の分配及び自己資本の充実に係る方針その他のリスク管理に係る方針」及び「災害その他の事象が発生した場合における銀行グループの危機管理に係る体制の整備に係る方針」の策定が定められている。

(2) グループの法令遵守体制の整備

銀行グループの業務の執行が法令に適合することを確保するために「銀行グループに属する会社の取締役、執行役、業務を執行する社員等及び使用人の職務の執行が法令に適合することを確保するための体制整備」が定められている。

(3) グループの業務の健全かつ適切な運営の確保

銀行グループの業務の健全かつ適切な運営の確保に資するものとして「再建計画の策定が必要なものとして金融庁長官が指定した銀行グループについて、再建計画を策定し、その適正な実施を確保すること」が定められている。

2. 共通・重複業務の集約を通じた金融仲介機能の強化(金融グループ内の共通・重複業務の集約等の容易化)

(1) 持株会社による共通・重複業務の執行

先般の法改正により、銀行持株会社グループに属する複数の会社に共通する業務(銀行を含む場合に限る。)で、その業務を銀行持株会社が行うことが、グループの業務の一体的かつ効率的な運営に資する一定の業務を、銀行持株会社自身が実施することを可能とするなど、銀行持株会社の業務範囲の拡大が行われている。今般の内閣府令の改正により、銀行持株会社が行うことができる(当該銀行持株会社グループに属する会社のための)業務が、以下のように具体的に定められている。

なお、銀行持株会社への業務の集約には、あらかじめ、内閣総理大臣の認可が必要とされている。

  • 資産の運用に係る業務
  • 事業の譲渡若しくは譲受け、合併、会社分割等又は株式等の譲渡等に関する交渉を行う業務
  • 信用供与の判断の前提となる審査を行う業務
  • システムの設計、運用若しくは保守又はプログラムの設計、作成、販売(プログラムの販売に伴い必要となる附属機器の販売を含む。)若しくは保守を行う業務
  • 不動産(原則として、事業用不動産に限る。)の賃貸又は当該会社が所有する不動産若しくはそれに付随する設備の保守、点検その他の管理を行う業務
  • 役職員のための福利厚生に関する事務を行う業務
  • 事務の用に供する物品の購入又は管理を行う業務
  • 機械類その他の物件を使用させる業務
  • 業務に関する広告又は宣伝を行う業務
  • 業務に関し必要となる調査又は情報の提供を行う業務(信用供与に係る債権の担保の目的となる財産に関し必要となる業務を除く。)
  • 金融商品(保険商品を除く。)の開発を行う業務
  • 事務に係る計算を行う業務
  • 事務に係る文書、証票その他の書類の作成、整理、保管、発送又は配送を行う業務
  • 顧客との間の事務の取次ぎを行う業務
  • 役職員に対する教育又は研修を行う業務
  • 上記掲げる業務に附帯する業務

(2) 子会社への業務集約の容易化

先般の法改正により、銀行持株会社グループに属する複数の会社が、共通する業務(銀行を含む場合に限る。)を、そのグループに属する他の会社(業務委託先)に委託する場合、委託元の各子銀行に課される委託先管理義務(業務の的確な遂行を確保するための措置を講じる義務)を、銀行持株会社に一元化することを可能とする業務委託先管理義務の見直しが行われている。今般の内閣府令の改正により、銀行持株会社が委託業務の的確な遂行を確保するための措置として、以下に掲げる内容の当該持株会社における経営管理に係る方針の策定及びその実施を確保するための措置を講じなければならないと定められている。

  • 当該業務を的確、公正かつ効率的に遂行することができる能力を有する者に当該業務を委託すること
  • 当該業務の受託者における当該業務の実施状況を、定期的に又は必要に応じて確認することにより、受託者が当該業務を的確に遂行しているかを検証し、必要に応じ改善させることその他の受託者に対する必要かつ適切な監督を行うこと
  • 受託者が行う当該業務に係る顧客からの苦情を適切かつ迅速に処理すること
  • 受託者が当該業務を適切に行うことができない事態が生じた場合には、他の適切な第三者に当該業務を速やかに委託するなど顧客の保護に支障が生じることを防止するための措置を求めること
  • 当該業務を委託した会社の業務の健全かつ適切な運営を確保し、当該業務に係る顧客の保護を図るため必要がある場合には、当該会社に対し、当該業務の委託に係る契約の変更又は解除をするなど必要な措置を求めること

(3) グループ内の資金融通の容易化(アームズ・レングス・ルールの適用の柔軟化)

先般の法改正により、銀行持株会社の子銀行同士で取引等を行う場合、銀行の経営の健全性を損なうおそれがないこと等の要件(内閣府令で規定)を満たすものとして内閣総理大臣の承認を受けたときは、「特定関係者との間の取引等の規制」を適用しないこととされ、いわゆる「アームズ・レングス・ルール」の緩和が行われている。今般の内閣府令の改正により、「銀行持株会社の子会社との間で行う取引又は行為で、その条件が当該銀行の取引の通常の条件に照らして当該銀行に不利益を与えるもの(特定取引等)」に関し、次の要件全てに該当することが定められている。

  • 特定取引等を行うことが当該銀行の経営の健全性を損なうおそれがないこと
  • 当該銀行が特定取引等の条件を明確に定めていること

これにより、例えば、アームズ・レングス・ルールに基づく利率(市場レートなどグループ外の「同一の信用力を持つ者」との間で取引を行う場合)とは異なるレートで、グループ内の子銀行同士の資金融通が可能となる。

3. ITの進展に伴う技術革新への対応

(1) 金融関連IT企業等への出資の容易化

先般の法改正により、銀行又は銀行持株会社は、金融関連IT企業等(情報通信技術その他の技術を活用した銀行業の高度化若しくは利用者の利便の向上に資する業務又はこれに資すると見込まれる業務を営む会社)の議決権について、基準議決権数(銀行:5%、銀行持株会社:15%)を超える議決権を取得・保有することができることとされ、いわゆる「5%ルール」の緩和が行われており、いわゆるFinTech関連企業への出資が容易となる。

今般の内閣府令の改正では、金融関連IT企業等の基準議決権数を超える議決権の取得等における内閣総理大臣の認可の際の「審査基準」について「銀行業高度化等会社に対する出資が全額毀損した場合であっても、申請銀行等の財産及び損益の状況が良好であることが見込まれること」などが定められている。

(2) その他(従属業務の収入依存度規制の緩和)

先般の法改正により、銀行及び銀行持株会社が子会社とすることができる「従属業務」を営む会社(主として銀行等・銀行持株会社等の営む業務のためにその業務を営む会社)について、「従属業務」を営んでいるかどうかの基準に係る規程が見直されている。今般、告示「従属業務を営む会社が主として銀行若しくは銀行持株会社又はそれらの子会社その他これらに類する者のために従属業務を営んでいるかどうかの基準を定める件(平成十四年三月金融庁告示第三十四号)」が改定され、「従属業務」を営む会社に求められる収入依存度規制(現行、親銀行グループからの収入が50%以上であること等が必要)が緩和されている。これにより、グループ外からのシステム管理などの業務の受託が容易にできることとなる。

以上が、先般の法改正に伴う内閣府令の改正のポイントである。なお、施行は、平成29年4月を予定している。今般の一連の改正により、金融審議会(「金融グループを巡る制度のあり方に関するW・G」)で議論された「銀行持株会社の業務規制の明確化」、「5%ルールの緩和」、「アームズ・レングス・ルールの緩和」等が行われ、金融グループ及び金融機関は一層の業務の効率化等が実施できるようになると考える。金融グループ及び金融機関においては、今般の改正を踏まえ、将来にわたり質の高いサービスを提供出来るよう、持続可能なビジネスモデルの構築に向けた取組みを進めていくことが重要である。

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