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金融庁

「金融モニタリング有識者会議報告書」の公表について

2017.04.10

金融庁は、平成29年3月17日「金融モニタリング有識者会議報告書―検査・監督改革の方向と課題―」(以下「本報告書」という。)を公表しました。

同会議は、これまでの金融行政のアプローチの効果と副作用や、環境や優先課題の変化を踏まえた上で、今後の検査・監督のあり方について、昨年8月以降、6回にわたり議論してきました。本報告書は、新しい検査・監督の目指すべき方向について提言するとともに、そうした方向を実現するための課題について取りまとめています。

主な提言事項と対応すべき課題の概要は、以下のとおりです。

  • 目指すべき方向

検査・監督の重点領域のシフト

1990年代から2000年代前半のように、金融システムの安定や利用者保護に深刻な懸念が生じている状況においては、「最低基準の充足状況の確認」を通じて最低限の健全性や法令遵守等を実施することが最優先であった。しかし、最低基準の充足が概ね実現する一方、環境の変化に伴い近年では新たな課題の優先度が高くなっている。「最低基準の充足状況の確認」にとどまらず、金融機関がより高い水準を目指した努力を行うよう促す「ベスト・プラクティスの追求に向けた対話」や、金融機関が持続的に健全性を確保し、環境が変化する中でも経済を支え続けられるようにするための「持続的な健全性を確保するための動的な監督」に検査・監督の重点を拡大することが重要になっている。

  • 対応すべき課題

1. 検査・監督手法の見直し

(1) 「ベスト・プラクティスの追求に向けた対話」のための手法

金融機関との間で「最低基準の充足状況の確認」とは別プロセスであるとの共通認識を築いた上で、的確な質問や情報提供を通じて金融機関自身の自主的な対応を促すことや、利用者による合理的な選択がなされる環境を整備することを通じて、金融機関の側における横並び意識や内向き意識を解消していくアプローチを採っていくことが考えられる。

これまで開発を試みてきた、①他行の状況や顧客の認識に関する知見を当局が把握・蓄積し、それを金融機関に対して還元する手法(水平的レビュー等)や、②良い取り組みを行う金融機関が顧客に選択されていくよう、顧客から金融機関の行動や取組みが見えるようにする手法(自主的な開示の促進等)等について、試行の結果も踏まえた上で、今後も開発・改良を継続していくべきである。

(2) 「持続的な健全性を確保するための動的な監督」のための手法

従来のリスクと自己資本のバランスの評価に加え、金融機関の収益やビジネスモデルについても分析の重点としていくべきである。また、一時的なショックのシナリオではなく、低金利の持続や人口減少などの中期的に蓋然性の高いシナリオでのシミュレーションを活用することが考えられる。さらに、こうした分析を通じて、将来的に最低基準に抵触する一定の蓋然性が確認された場合には、機械的な基準に基づく画一的な対応を行うのではなく、金融機関の固有の状況や課題に即した解決を促す柔軟性をもった対応を行っていくべきである。

2. 組織・人材・情報インフラの整備

新しい手法が実際に機能するためには、例えば、以下のような、それに適した組織の整備、人材の育成・確保、情報インフラの整備等が必要である。

  • 金融行政の総合指令塔機能を強化する観点や、オン・オフ一体の継続的なモニタリングを効果的に実現する観点からの、金融庁の内部組織の見直し
  • 「ベスト・プラクティスに向けた対話」等を行うための、質問力や政策意図の説得力等を有する人材の育成・確保
  • 「持続的な健全性を確保するための動的な監督」を行うための、専門性のある人材の育成・確保、情報の収集と分析のためのインフラ・体制の強化 等

3. 検査マニュアル・監督指針等の抜本的見直し

検査・監督の見直しの基本的方向性や手法の進化を踏まえて、以下のような点に留意して抜本的な見直しを図ることが適当である。

  • ルールとプリンシプルの適切なバランスの確保、事例などを用いた基本的な考え方や趣旨を重視した記述
  • 金融機関の多様で主体的な取組みを尊重した対話の進め方の提示
  • 検査マニュアル・監督指針等の統合 等

金融庁は本報告書を踏まえ、今春には金融庁としての考え方を取りまとめ、その後、オン・オフが一体となった検査・監督を本格的に実施するため、金融検査マニュアル・監督指針の見直し、金融庁の組織の見直しや、専門人材の育成等に取り組んでいくとしています。

新しい手法は、従来の検査・監督手法に比べ難度が高く、実際に機能していくためには、それらを担う人材の確保・育成や検査マニュアル等の見直しが、特に重要な課題と考えられます。また、本報告書で打ち出された「ベスト・プラクティスの追求に向けた対話」や「持続的な健全性を確保するための動的な監督」により、金融機関においては、顧客目線に立った質の高いサービスの追求と持続的な健全性の確保に向けた対応がより重要になっています。

金融庁との間で双方向かつ建設的な対話ができるよう、問題意識を持って自らのビジネスモデルについて検証し、自主的な創意工夫の下、持続可能なビジネスモデルの構築に向けた具体的かつ有効な取組みを行っていくことが必要であると考えます。

【筆者プロフィール】

小林 謙太郎 (こばやし けんたろう)
新日本有限責任監査法人
金融アドバイザリー部 エグゼクティブディレクター 
2015年7月検査局検査監理官を最後に金融庁を退職。在職中は、幅広く金融検査・監督行政に携わり、入所後は、セミナー活動やトップマネジメント・インタビューなどに従事。

※所属・役職等は掲載当時

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