業種別
店頭デリバティブ

MiFID II :本邦金融機関にとってのコミッション・アンバンドリング

2017.05.24

前回の記事におきましては、グローバルにビジネスを展開している日本の金融機関が考慮すべきMiFID IIの域外適用の可能性を指摘しました。その中で、域外適用の可能性があるケースとして「日本企業が、EU顧客に対し、無料のリサーチサービスを提供する場合」を挙げました。

MiFID IIでは、リサーチ等に関し、以下のように定めています。

投資会社は、独立した投資助言を提供することを顧客に表明する場合及びポートフォリオ運用サービスを顧客に提供する場合、顧客へのサービス提供に関連して第3者等から金銭又は非金銭的ベネフィット等を受領してはならない。但し、顧客へ提供するサービスの質を高める等一定の要件を満たす場合、重要でない非金銭的ベネフィットは除外される。 (Directive 第24条7号(b)、8号)


顧客にポートフォリオ運用サービス等を提供する投資会社に対する、第3者によるリサーチの提供は、以下のいずれかと引き換えであれば、誘因(Inducements)とは見なされない。
1)投資会社による自社の資金からの直接の支払い
2)投資会社が管理するリサーチ支払勘定からの支払い
  但し、以下の要件を満たすことが必要

①リサーチ支払勘定は個別の顧客に対する特別なチャージに基づき設定
②投資会社はリサーチ予算を策定し、これを定期的に見直す
③投資会社がリサーチ支払勘定について責任を有する
④投資会社は定期的に受領したリサーチの品質を検証


(Commission Delegated Directive 第13条1項)

MiFID IIは基本的に域内の企業を対象としていますが、欧州証券市場監督機構(ESMA)が公表したQ&Aにより、域内の投資会社が域外のリサーチ提供者からリサーチを受領する場合も、上記のルールが、域内の企業に対し適用されることが明確化されています。

このため、域外の企業が域内の投資会社にリサーチを提供する場合、これまでの一括提供型のサービス(バンドルされたサービス)としてではなく、リサーチについて別途対価を徴収する必要があります(コミッション・アンバンドリング)。

また、本Q&Aでは、第3者による、投資会社と発行体とのミーティングの設定についても、ガイダンスを示しています。

本Q&Aでは、フィールドトリップやカンファレンス、個別ミーティング等のコーポレートアクセスサービスについては、第3者が域内の投資会社に対して提供等する場合、サービスを受領する投資会社において、重要なベネフィットに該当するか又は重要でない非金銭的ベネフィットと見なされるかを慎重に検証することが求められています。

また、本Q&Aでは、以下の具体例を示しています。

  • 第3者が提供するコーポレートアクセスサービスのうち、投資会社のために特別に設定する企業との個別ミーティングやフィールドトリップ等は、投資会社にとって重要なベネフィットであり、その投資行動に影響を与える可能性がある。
  • 企業のIR部門がロードショーを開催し、そのロードショーが公開のもので、投資会社等のアナリストが無料で出席できる場合、重要でない非金銭的ベネフィットと見なされる可能性がある。

本Q&Aを踏まえると、コーポレートアクセスサービスについては、第3者が一般的なコンシェルジュサービスとして発行体と投資家が一同に会するミーティングを開催することは、重要ではない非金銭的ベネフィットと見なされうる一方、ミーティング後に、第3者が一定の取引意思の表示等を含む議事概要等を顧客に提供する場合等は、顧客から対価を徴収する必要が生じる可能性があるものと解釈されます。

MiFID IIにつきましては、このように日本の金融機関に影響のある事項について、今後も当局からQ&Aが発出される可能性があります。私どもではロンドンオフィスとの協力のもと継続的に情報収集を行っておりますので、何かご懸念、ご質問等がありましたらお寄せいただければと思います。

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