内閣府公益認定等委員会から公表された公益法人の会計に関する研究会「26年度報告」は、公益法人を運営する際に必要な事項が記載されています。わかりやすく、全8回に分けて読解していきます。
1. 控除対象財産と財務諸表
控除対象財産とは、目的の定められた財産で、遊休財産の範囲から除かれる財産であって認定規則第22条第3項1号~6号に列挙された財産です。報告書では、控除対象財産と貸借対照表の勘定科目との関係がわかりにくいため整理をしたと記載されています。定期提出書類作成の際には、両者の整合性を確認する必要があります。
(1) 控除対象財産
控除対象財産として定められた財産には、以下のものがあり、貸借対照表科目との関係は、以下の通りとなります。
① 公益目的保有財産
継続して公益目的事業の用に供するために保有する財産です(認定法ガイドラインⅠ.8(1)①)。特に金融資産が該当する場合には、貸借対照表上は、基本財産又は特定資産として計上することが必要となります。不可欠特定財産(※1)も含まれます。
② 公益目的事業を行うために必要な収益事業等その他の業務又は活動の用に供する財産(同②)
公益目的事業の財源確保のため又は公益目的事業に付随して行う収益事業等の用に供する固定資産、公益目的事業や当該収益事業等の管理業務の用に供する固定資産です。金融資産で保有する場合には、①と同様に貸借対照表上は、基本財産又は特定資産での表示が必要になります。
③ 資産取得資金(同③)
① ②の特定の財産の取得又は改良に充てるために保有する資金です。貸借対照表上は、特定資産として表示されることとなります。
④ 特定費用準備資金(同④)
将来の特定の活動の実施のために特別に支出する費用に係る支出に充てるために保有する資金です。貸借対照表上は、特定資産として表示されることとなります。
⑤ 寄付者等による使途に指定のある財産(同⑤)
寄付等によって受け入れた財産で、財産を交付した者の定めた使途に従って使用又は保有されているものです。貸借対照表上は、基本財産又は特定資産として表示されることとなり、同貸方は、指定正味財産として区分されるものに限られます。
⑥ 寄付者等による使途に指定のある資金(同⑥)
寄付等によって受け入れた財産で、財産を交付した者の定めた使途に充てるため保有している資金です。貸借対照表上は、基本財産又は特定資産として表示されることとなり、同貸方は、指定正味財産として区分されるものに限られます。
以上をまとめると(表1)になります。
(下の図をクリックすると拡大します)
2. 実施事業資産と財務諸表
公益目的支出計画を実施中の一般法人、すなわち移行法人は、実施事業に係る資産(=実施事業資産)を貸借対照表上で、区分して明らかにすることが求められています(整備法規則第42条第1項)。表示の方法として2つの方法が報告書で示されました。
(1) 貸借対照表内訳表の作成を選択した場合
実施事業会計に区分された固定資産が実施事業資産に該当するものと考えられています。
(2) 財務諸表に対する注記を選択した場合
報告書において、その記載例を以下の通り示しています。
(記載例)
財務諸表(貸借対照表)に対する注記
XX.実施事業資産は以下の通りである。
基本財産 | 投資有価証券 | 500 |
その他固定資産 | 土地 | 200 |
建物 | 100 |
3. 財産目録の表示
財産目録は、公益法人が作成することを義務付けられている書類であり、法人の財産をどの公益目的事業の用に供するかを明らかにすることが目的の書類です(認定法第21条第3項)。財産目録の記載例は、認定法ガイドラインⅠ.8(1)④に記載されており、公益目的保有財産を保有している場合の記載の方法が示されています。
報告書では、財産目録の使用目的等欄の表示の必要性について、法人の負担軽減の観点から検討されました。検討の結果、財産目録の使用目的等欄は、公益目的事業の用にどのような財産が投下されているかを明示することが役割であり、現状では、その役割は必要であるため、引き続き開示を行うとの結論になっています。