業種別
公益法人制度

非営利組織のマネジメントに役立つ会計

2016.06.16
非営利デスク
公認会計士 シニアマネージャー
松前江里子

非営利デスクでは、非営利組織の在り方というテーマでセミナ-を開催し、そのなかで、「非営利組織のマネジメントに役立つ会計」として、弊法人の松前が、非営利組織の各制度や制度下における会計の考え方について公益法人を中心に、ご紹介いたしました。

概要は以下のような内容です。

1. 非営利組織の活動を表現するための会計とは

(1)非営利組織の役割

非営利組織と考えられる組織は、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人、特定非営利活動法人、社会福祉法人、医療法人、学校法人、消費生活協同組合など、それぞれ、設立の根拠法が異なる法人として様々な法人形態が存在しています。

非営利組織とは、「組織の活動を通じて公益又は共益に資することを目的として資源提供者に対して経済的利益を提供することを目的としない組織である」(非営利組織会計検討会による報告「非営利組織の財務報告の在り方に関する論点整理」より引用)と日本公認会計士協会から、定義が公表されております。非営利組織は、上記の法人形態のほか、宗教法人約18万法人を含めると、約38万法人が存在しています。

日本における非営利組織は、様々な法人形態で多数の小規模法人で構成されております。国際的な動向をみると、米国、英国、仏国、独国では、このような多種の法人形態での運用はされていないため、会計についても同じものを使う仕組みになっています。対して、日本では、法人形態毎に行政庁が異なり、それぞれ会計基準が設定されています。

また、非営利組織の置かれている環境は、福祉、医療といった日本の根幹をなす公共的なサービスに関して、政府セクターに代わり、非営利組織が中心的な役割を果たすように、一つ一つの非営利組織に対する需要が拡大してきています。

このような環境の中では、非営利組織の活動が注目されますが、どのような活動をしているか、資金提供者をはじめ利害関係者に必要な情報を提供することが、一義的には、組織活動のための財源を確保することに繋がり、非営利組織が役割を果たすことが可能となると思われます。

(2)非営利組織におけるあるべき会計とは

一般的に資金提供者(寄付者、債権者、行政など)が、非営利組織の会計に関する情報を必要としていると思われますが、寄付者が寄付を行う場合には、寄付先の選定などを考えると、同種事業を行っている法人であれば、同じ目線で、比較できる財務報告などが必要になるものと考えられます。その場合、財務報告の作成のための基準となる会計基準は、現在のように法人形態毎に設定されるものではなく、非営利組織内で共有できるような統一した会計基準の下に比較可能な財務報告が作成されることがあるべき会計と考えます。

次に、財務報告の目的ですが、現行制度のように行政目的だけでなく、一般目的、すなわち、①意思決定有用性、②スチュワードシップに基づく説明責任に関する情報ニーズを満たすことが求められています。

具体的には、①②の情報ニーズとして継続的活動能力(貸借対照表やキャッシュフロー計算書)、組織活動(活動計算書)、資源提供目的(貸借対照表、活動計算書)について、それぞれの示した財務報告書類で必要な情報を公表することになります。

また、活動の成果や努力をすべて表すには、上記の財務報告書類に加え、事業報告書など非財務情報を示した書類も有用な書類であり、併せて、非営利組織の活動を表現することができるものと考えられます。

2. 会計を非営利組織マネジメントにどのように役立てるか

(1)現行の制度下での会計基準(公益法人制度の場合)

上述のようなあるべき会計とは、現行制度は異なるため、他法人との比較可能性という観点からは、現行では難しいこととなりますが、制度において必要とされている情報を用いて、マネジメントに役立てることが、今の置かれている環境下では最適であると考えます。

特に公益法人制度を考えますと、公益認定の基準では、経理的基礎や、収支相償、公益目的事業比率、遊休財産規制などが必要な情報であり、これらは、制度において求められている区分経理を前提として、各事業の数値を測定し、これらの基準を満たしているかを確認しています。これらは、公益法人のマネジメントにも同時に役立つ情報を提供しております。

例えば、区分経理に基づく正味財産増減計算書内訳表においては、事業区分別の損益を表すことができるため、運営上、非常に有効な情報になると思います。また、貸借対照表も、純資産(正味財産)の情報が、法人の継続性を示すための役立つ情報になります。

さらに事業比率は、活動量を金額換算して示したものであることから、活動量を管理する情報になります。収支相償については、収益が費用を上回り、剰余金が発生している場合には、公益活動を拡大する機会であると考えられ、マネジメントにおいては、計画的に剰余を公益活動に投下することを考えていくことになります。また、遊休財産規制がありますが、あくまでも資金保有の制約ではなく、資金の使途を計画して目的を明らかにすることで、法人において必要な資金が何であるかを示すことが要請されるところであり、資金の使途を計画することが制度に合わせたマネジメントとして有効であると考えます。

(2)今後の発展に関して(公益法人の場合)

公益法人が、今後更に発展するためには、第一義的に、財源の確保が必要となります。社団法人であれば、会員を増やすこと、財団法人では、財産を増やすことがマネジメントの役割です。社団法人では、会員が興味を示すような事業を増やすことが大事になりますが、公益目的事業では、会員ニーズには合わないことも考えられます。その場合、公益目的事業を51%は行うことを維持しながら、会員のための事業(共益事業)を増やしていくことも一方法であります。事業比率は、毎事業年度一定であることは求められていないため、必要に応じて、変動することも方法として考えられます。また、財団法人であれば、やはり寄付金を増やすことが必要なことであり、寄付者にとって、寄付を行いやすい環境、例えば、税制優遇を受けられる法人(税額控除法人として申請)であること、寄付者等の資金提供者が、自己の行った寄付がどのように利用されているかを開示情報によって示し、スチュワードシップに基づく説明責任を果たすような情報を適切に開示することにより寄付を促進することが一方法と考えられます。

開示情報として、今後は、非営利組織においても民間営利法人が活用している連結情報を開示情報として取り入れることも方向性として「非営利組織の財務報告の在り方に関する論点整理」に挙がっていますので、さらに会計の数値を組み合わせることで法人の発展を支えることと考えます。




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