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M&A最新動向と日本企業への示唆 グローバルリーダーインタビュー 

第1回 M&A最新動向:新たな戦略的アライアンス-Industrial Mash-ups

2016.05.25

グローバルのテクノロジーセクターのトランザクションアドバイザリーリーダーのJeff Liu氏と日本エリアリーダーのJoseph Steger氏が2016年5月に来日しました。

日本のテクノロジーセクターのトランザクションアドバイザリーリーダーである岩本昌悟がファシリテーターとなって、世界各国のテクノロジー企業の経営幹部とM&Aや投資について、日々検討議論を重ねている両リーダーにお話を伺いました。

Jeff Liu
Jeff Liu
Transaction Advisory Services
Global Sector Leader, Technology
Joseph Steger
Joseph Steger
Transaction Advisory Services Partner, Americas Japan Inbound Transaction Advisory Services Leader
岩本 昌悟
岩本 昌悟
マネージング ディレクター
テクノロジー
トランザクションアドバイザリーリーダー

岩本
テクノロジー業界を取り巻く環境についてどのようにお考えですか。
Jeff Liu
最も注目すべきテクノロジー業界の動向として「第3の波」(注)と呼ばれる技術シフトがあげられます。第3の波とは、クラウド、スマートデバイス、ビッグデータ分析へのシフトを意味しています。今まで25年間テクノロジー業界で仕事をして来た私にとっても、この第3の波は今まで見て来た中でも最も大きな変化と言えます。
注:テクノロジー業界における第一の波は1960年以降のメインフレームを中心としたコンピュータ利用の拡大、第二の波は1980年代後半からのパーソナルコンピュータ(PC)の登場によるビジネスの変化です。そして2010年以降のモバイル端末の普及に端を発するするクラウド、スマートデバイス、ビッグデータ分析の普及による第三の波となります。
テクノロジー企業の発展と言う観点からは、既存の企業だけではなく、新規参入する企業に対し、第3の波は革新的、かつインパクトの大きいソリューションを提供する大きな機会を与えています。
良い例として、Uberを挙げることができます。Uberは、新しいサービスを提供できただけではなく、いち早く市場を拡大し、500億ドルの企業価値を達成しています。この成功は、第3の波によるテクノロジーの変化が無ければ不可能だったと考えています。
このように新規参入企業に市場機会を提供すると同時に、第3の波は、IBMやHPと言った既存の企業に大きなプレッシャーを与えています。伝統的なデバイス提供で市場シェアを占めていた企業は、第3の波による技術を利用し成長して来たUberのような新規参入企業から多大なプレッシャーを受けているのです。
岩本
第3の波がM&Aにどのような影響を与えているのでしょうか。
Jeff Liu
第3の波が業界のM&Aに大きな影響を与えています。ここ2年間、業界内のM&Aが歴史的に見てもディールの数・ディールの大きさ共に最高レベルに達しています。テクノロジー業界では多くの企業がM&Aを通して成長してきたため、M&Aはテクノロジー業界では新しいことではないのですが、ここにも第3の波の影響を見ることができます。
M&Aに関しては、大きく分けて3つの傾向があります。
  • ディールは年々クロスボーダー化されています。Uberの例を取ると、スイス・イスラエル・中国など、様々な国でビジネスを行っています。
  • 買い手企業は買収を短期間で決める必要があります。時間をかけていると、ディールの機会を失うからです。
  • ディールが事業投資家の経営戦略に基づく判断で行われるだけではなく、金融投資家であるプライベートエクイティーを通したLBOタイプのディールが増加しています。 プライベートエクイティーが新規参入企業の買収を行っているのです。
岩本
M&Aの未来予測についてどのようにお考えですか。また、テクノロジー企業はどのように対応するのがよいでしょうか。
Jeff Liu
今後の予測に関しては、短期的には2015年がM&Aのピークで、今後しばらくは少しずつ停滞してくるのではないかと考えています。HPの分割などのような大きなトランザクションは、当面は少なくなっていくと考えているのです。
また今後、テクノロジー企業がIoTに関連した新しいイノベーションの恩恵を受けるためには、Industrial mash-upsと呼ばれる新しい戦略的アライアンスが必要になるでしょう。Industrial mash-upsとは、他業種との提携によりビジネスに革新をもたらす、強力で新しい方法です。他業種の企業とパートナーシップを組み、サービスを統合することで、迅速に新しいビジネスバリューを作り上げることを可能にするでしょう。
Industrial mash-ups は、FacebookがSocial mash-upsと呼ばれるところから、付けられた名前です。Facebookは、所在地の特定機能、コミュニケーション機能、広告機能、e-commerce機能、などを併せ持っており、それらを結合させてユーザーに新しいコミュニケーション経験を提供しているのです。
Industrial mash-upsも同じで、例を挙げると、GE・EY・Intel・Cisco・AT&Tが事業提携を行い、IoTソリューションを開発する事例があります。グローバルの先進企業はすでに対応を始めているのです。今後、第3の波に乗り、真のグローバル化を進めるために日本でもIndustrial mash-ups を活用したアライアンス方法は一般的になるでしょう。

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