業種別

産業構造に変革をもたらすIoT・ブロックチェーン
グローバルリーダーインタビュー

2016.06.27

グローバルのテクノロジーセクターの事業戦略リーダーのPaul Brody氏が2016年5月に来日しました。

日本のテクノロジーセクターのトランザクションアドバイザリーリーダーである岩本昌悟が、世界各国のテクノロジー企業の経営幹部と事業戦略について、日々検討議論を重ねているPaul氏にインタビューを行いました。

Paul Brody
Paul Brody
Principal, Americas Strategy Leader,
Technology Sector
岩本 昌悟
岩本 昌悟
マネージング ディレクター
テクノロジー
トランザクションアドバイザリーリーダー

産業構造に変革をもたらすIoT・ブロックチェーン<br />グローバルリーダーインタビュー
(写真右から) Paul Brody氏、岩本昌悟氏

岩本
特に米国では、「デジタル」というキーワードでビジネス変革がもたらされるということが盛んに喧伝されているように思います。「デジタル」によって、どのような変化が予想されるのでしょうか。
Paul Brody
「デジタル」は一般的に新しいものとして議論されていますが、私にとっては50年前に始まったもので新しいトレンドではありません。ただ現在の「デジタル」と従来の「デジタル」を比較した際に、根本的に異なる点を3つ挙げることができます。
① いつでもどこでもつながるということ(Universal connectivity)
ここ数年でスマートフォンの保有は飽和状態に達しつつありますが、多くの人がスマートフォンを所有し、いつでもどこでもインターネットに接続していることが当たり前の状況になっています
② ソーシャルネットワークにつながっているということ(Social network connectivity)
そうしたスマートフォンを持って、いつでもどこでもインターネットに接続できる人の殆どがFacebookやTwitter、LinkedInなどのソーシャルネットワーキングシステム(SNS)のアカウントを持っています
③ スマートデバイスをもっていること
スマートフォンに加えて、タブレット端末の普及も急速に進んでおり、PCにとって代わって多くの作業がスマートデバイスによって扱えるようになりつつあります
この3点によって「デジタル技術によって極めて効率的なコミュニケーション」が行われています。
これらが重要な理由は、デジタル技術が産業活動の基本的なインフラになることによって、所謂「テクノロジー」企業ではない企業も、テクノロジー企業と同等のレベルで、デジタル技術に対応していることを市場から求められるようになっていることです。他方、テクノロジー企業の事業環境は厳しくなります。テクノロジー企業の方が他の企業より厳しい条件下でビジネスを求められるのです。
歴史的に、多くの製品やサービスの市場は大手及び準大手企業により寡占化する傾向にあります。自動車業界を例に取ると、市場は10社ぐらいの大手企業で寡占化されています。航空機業界にしても4~5社で市場が占められています。しかし、デジタル技術を基礎に置く最近のテクノロジー業界はこれらとは違い、市場の大半が最大手の1社に支配されている傾向があります。もし同じ市場に競合他社がいたとしても、その市場シェアと収益性は相対的に低くなる傾向があるのです。
例として挙げてみると、
  • スマートフォン市場のApple(世界市場の30%を占め、利益率のほぼ100%を占めています)
  • ソーシャルネットワーク市場のFacebook
  • 検索市場のGoogle
  • PCチップ市場のIntel
  • ネットワーキング機器市場のCisco
  • オークション市場のeBay
  • e-commerce市場のAmazon
こういった傾向から読み解くと、デジタルエコノミーの大きな特徴は、「Winner take all(勝者が全てを取る)」なのです。今、このデジタルエコノミーの特色がテクノロジー業界のみならず他の全ての産業にも派生しようとしていると言えます。
EYでは、グローバルでデジタル事業戦略をご支援するサポート体制(※)を整えています。世界各国の最新の事例や傾向を鑑みながら、最適なご支援をいたします。ぜひ、ご相談ください。

岩本
産業構造を変えるテクノロジーの1つとして「ブロックチェーン」が注目されています。ブロックチェーンはどのように産業構造を変えていくのでしょうか。
Paul Brody
ビットコインなどの仮想通貨の技術的な基礎になっている「ブロックチェーン」は、過去50年間におけるソフトウェア業界の最大の進歩だと言えます。その特色は、安全な接続を提供するだけではなく、お互いを完全には信用していない多岐に渡る関係者間の情報交換を可能にすることです。金融分野だけでなく、IoTのようにモノとモノとを直接ネットワーク上で結び付け情報を交換することを考えた際、この特色は非常に重要です。ブロックチェーンは、大きな情報交換を安全かつ正確に行うことを可能にします。
ブロックチェーンは新たな金融工学の技術に留まるものではなく、非常に安全な共同データベースとして捉えられるべきです。そう考えた際、サプライチェーンやエンタープライズアプリケーションにも多大なる恩恵を与えます。サプライチェーンへの影響はこれのとても良い例です。
50~60年前、製造業のサプライチェーンで管理される範囲は、その企業内に限られていました。今日、製造会社のサプライチェーンには様々な外部の会社が関わっています。今日のサプライチェーンは、中国の田舎にある小企業のサプライヤーから、フロリダやメキシコにある小売店まで、従来のものに比べ複雑かつ長いものになっています。部品の製造から、ロジスティック、流通会社など、様々な外部企業が携わっています。
ブロックチェーンとIoTはサプライチェーンにおける各工程や機能を1つのデジタルインフラストラクチャーに統合させる機能を担っています。ブロックチェーンは全ての情報が安全かつ的確に保管されることを目的として、安全な接続と安全なデータ保管を提供します。IoTは素材や部品、製品がどこにあり、どのような状態であるのか、サプライチェーンのどこに位置しているのかなどの情報を提供しています。これらの技術を活用すると、どこに部品があり、出荷はいつで、どこに最終商品があるのかなどを可視化することが可能になり、製品が出荷されるまでどうなっているかわからないと心配する必要がなくなります。
過去のいわゆる「産業革命」は「工場内」での大きな革新的な生産性の向上、効率性の改善をもたらしました。1つ目は、織物の製造に関するものでした。英国の製造業は産業革命を通して、蒸気機関を導入することで、織物製造にかかる労働力の90%の削減に成功しました。その次の「産業革命」は、組立産業における分業による大量生産方法の導入でした。ヘンリーフォードが自動車の製造にかかる時間を90%削減しました。これらの産業革命は、大きな産業の成長をもたらしたのです。
しかし、今ここで強調したいことは、アメリカ・欧州・日本のような成熟した市場において80%の経済活動は、「工場の中」で行われているものではなく、サービス業など「工場の外」で行われているのです。サービス経済に大きなインパクトを与える「工場の外」での産業構造の変革がIoTやブロックチェーンによって実現される、と考えているのです。
岩本
IoTやブロックチェーンで実現する産業構造の変革について具体的にお聞かせいただけますか。
Paul Brody
その例として、トヨタの「かんばん方式」がわかりやすいでしょう。トヨタのカンバン方式で管理されている工場内では人材、プロセス、部品や仕掛品、製品の在庫は、いわゆる「カンバン」等によって完全に管理することができます。これが、IoTやブロックチェーンによるサプライチェーン管理の原型と言えるでしょう。
一方、ある建物内の配管メンテナンスを考えてみると、人材、ツール、プロセスの全てにおいて何も管理されていません。問題が起こってから、問題となった個所を発見します。そして、問題が起きた場所に行って初めて、何が問題なのかを把握し、修理方法などを検討し部品等を発注しなければなりません。事前に正しい部品を持って来ることは不可能なのです。
IoTやブロックチェーンで実現される産業構造の変革が起こると、サービス業の将来は今とは全く違うものになると考えています。まず、デバイスが壊れそうなタイミングでアラートを出し、どうやって修理すべきかをシステムが教えてくれるようになります。これは一般的によく言われているシナリオです。
更には修理に必要な予備部品がどこにあるのか、また、修理に必要なスキルを持った人材や企業がどこにいるのかもシステムが教えてくれるようにもなります。ただ、その為にはスマートデバイス、それに接続している人材、これらの全ての情報を管理できるソフトウェアデバイスが必要になります。それが実現できれば、論理上は工場内で実現できた生産性を、工場外でも実現できることになります。つまり、IoT、ブロックチェーン、スマートデバイスを通して、この生産性が実現されることになるのです。
EYでは、このようなビジネス革命について日々世界各国のお客様と検討を重ねています。最新の動向を入手したい方は、ぜひEY TASチーム(innovation@jp.ey.com)までご連絡ください。