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情報センサー2014年3月号 業種別シリーズ

第2回グローバル天然ガスセミナー
-地域別に見た天然ガス事業のリスクと機会-

石油業セクター 米国イリノイ州公認会計士 柘 直孝
EYシカゴ事務所での6年間の監査業務を経て、2001年に当法人に入所。現在は、主に、大手石油探鉱開発会社を含む、大手国際企業の監査業務およびアドバイザリー業務に従事。

Ⅰ はじめに

昨年11月、EY Japanでは、第2回グローバル天然ガスセミナー「地域別に見た天然ガス事業のリスクと機会」を開催しました。
今回は、欧州・アフリカ、アジア・オセアニア、独立国家共同体(CIS)、南北アメリカの各地域からEYの専門家を招き、各地域における「リスク」と「機会」について説明しました。
またセミナーの後半では、日本の天然ガス市場の現状と今後の展望について説明がありました。さらに、日本企業の投資形態として最も一般的であるノンオペレーターとしての投資リスクと機会についても説明がありました。
本稿では、各講演の概要をお伝えします。

Ⅱ 地域別に見た天然ガス事業のリスクと機会

  • 1. 欧州・アフリカ地域
    EY 石油ガスセクター 欧州・中東・アフリカエリア トランザクションリーダー ジョン・クラーク

欧州地域は、基本的に天然ガスの純輸入国が多く、アフリカ地域は、その逆で純輸出国が多く見られます。ただし、サハラ砂漠以南の国々では、埋蔵量は確認されつつも生産量は限定的となっています。
当該地域における投資機会としては、北海エリアにおける探鉱・開発、欧州のインフラ事業、欧州下流事業の構造的変化に絡んだもの、アフリカの資源開発(特に、モザンビーク、タンザニア)等が挙げられます。
リスクとしては、例えば北海エリアは、英国、オランダ、ドイツ、デンマーク、ノルウェーの五つの国の領海にまたがるため、各国の規制の違いを考慮する必要があります。

  • 2. アジア・オセアニア地域
    EY 石油ガスセクター アジア・パシフィックエリア リーダー サンジーブ・グプタ

アジアにおける探鉱・開発関連投資が依然として大きいのは、中国を中心に、今後アジアでの経済成長機会が見込まれるからでしょう。ただし、さまざまな機関による中国の需要予想には、大きな隔たりがあり、将来見込みにはリスクがあります。
実際に、最近の中国におけるLNGプロジェクトで、最終投資決定(FID)の遅延が見受けられますが、これは将来のグローバルLNG需要が、現在の開発プロジェクトの生産キャパシティーに満たないかもしれないという予測に起因していると考えられます。

  • 3. CIS地域
    EY 石油ガスセクター グローバル税務リーダー アレクセイ・コンドラショフ

ロシアは、もともと西シベリアで天然ガスを生産し、西欧を主な市場としていました。それが、北極圏、東シベリア、またヤマル半島以南における非在来型資源の発見に伴い、今後の主要な市場としてアジアを想定しつつあります。
また、非在来型資源の開発には、巨額な資金と最新の技術が必要なため、これまでロシアでは国営企業のガスプロムの寡占状態でしたが、最近では民間企業の活躍も目立ってきています。さらに、海外企業の関与を促すべく、北極圏等を対象に、税率を著しく緩和する政策も打ち出されています。
ロシア以外での、顕著な動きとしては、トルクメニスタンやアゼルバイジャンの生産が伸びていることです。ただし、これらの国々は、中央アジアに位置するため、市場までの輸送インフラ整備に多額の投資が必要です。

  • 4. 南北アメリカ地域
    EY 石油ガスセクター グローバルリーダー デール・ニジョカ

全世界の確認埋蔵量のうち、南北アメリカ合計でのシェアは、石油で約33%、天然ガスで約10%です。アメリカ大陸は、北米のカナダから南米のアルゼンチンまで、石油、ガス資源が豊富に存在します。
最近では、シェールガス革命により、北米が勢力を伸ばしつつあるとも言われています。しかし、テキサス州およびルイジアナ州のメキシコ湾周辺に、数多くのガス輸出ターミナルが集中していますが、政府からの認可取得も含め、多くの不確定要素により、全てのプロジェクトが順調に進むとは考えにくいと思われます。カナダも同様に、アジア太平洋向けという点では、メキシコ湾からの輸送よりコスト面において優位性はあるものの、現在進行しているプロジェクトが全て順調に進む可能性は高くないと思われます。
また、ブラジルのプレソルトにも大きな事業機会があると考えられます。現在、ブラジルの国営会社であるペトロブラスが中心となって開発を進めています。

  • 5. 日本の天然ガス市場
    EY 総合研究所(株) 伊藤敏憲

今後数年で見ると、原子力発電所の再稼働による影響で、日本における天然ガス需要は減少する方向です。なお、これまで主なLNGの輸入元であったインドネシアの割合が減り、豪州、カタール、ロシアからの輸入が増えていますが、これに加え、2017年頃からは、米国とカナダからの輸入が増えると推測されます。
また、シェール革命で、日本のLNG調達価格が、将来的に大幅に下がると期待する方は多いようですが、実際は、調達元での生ガス価格にLNG化コスト、輸入コスト、事業者のマージンが加算されることを考えると、日本のLNG調達価格が大きく下がるとは考えにくいです。

  • 6. ジョイントベンチャー
    EYトランザクション・アドバイザリー・サービス(株) 谷山邦彦

日本企業にとって、大規模投資プロジェクトの増加、リスク分散化、政治的影響など、さまざまな観点からジョイントベンチャーが、ますます一般的になっています。
ジョイントベンチャーには、「計画」「設立」「運営」および「解散」と4フェーズのライフサイクルがあります。各フェーズにおいて潜在的リスクの特定化や、権利、義務の明確化を通じ、株主価値の毀損(きそん)を阻止することが可能です。

Ⅲ おわりに

各地域のEYの専門家の知見が、産業界の方々に少なからず参考になったのではないかと思います。また、EY Japanでは、今後も日本の産業界に役立つ最新の情報を発信してまいります。