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情報センサー2014年6月号 Trend watcher

M&A後の統合計画策定(シナジー領域)におけるポイント

EYトランザクション・アドバイザリー・サービス(株)
オペレーショナル トランザクション サービス チーム 竹鼻 陽
国内のM&Aトランザクションを中心に、ビジネスデューデリジェンスや統合計画の策定プロジェクト、組織再編プロジェクト等に従事。関与した業界は、電力・ガス業界、金融業界、鉄・非鉄金属業界、電機業界など多岐にわたる。

Ⅰ はじめに

事業や企業の買収・統合を行う場合において、売上もしくはコスト面で十分なシナジーを創出できるかは、当該案件の成否を左右する重要な要素となります。これは、シナジーが買収・統合の当事者それぞれの事業活動のみではなく、両者が協力・連携することによって初めて実現可能となる相乗効果のことを指し、多くの案件においてシナジーの創出が目的に掲げられていることに起因します。
シナジーの重要性が広く認識されていることもあり、検討の方法論やフレームワークは、さまざまな書籍や記事で詳しく紹介されるのに対し、シナジーの検討を本格的に開始するまでに、どんな準備が必要であるかについては、解説が省略されることが多くなっています。さらに、事前の準備が不十分であることにより、せっかくの方法論やフレームワークを活用しきれていないケースも多く見受けられることから、本稿ではチーム体制の構築や情報の収集といった事前の準備に係るタスクを中心にポイントを説明します(<図1> 参照)。

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Ⅱ チーム体制の構築

案件規模の大小により、その重要性は変動するものの、基本的にシナジーは専任もしくは統合計画策定を担うチームによって集中的に検討されることが望ましいといえます。
そしてチーム構築のタスクは、チームプロファイルの設定と、要件にのっとったメンバーのアサインに大別され、前者におけるチームの成果物の詳細な定義と適切な人員規模の設定が、以降のシナジー検討の成否を左右する重要なポイントとなります。
検討が進むにつれ、関与者が増加していくことが多い買収・統合案件においては、成果物が抽象的な表現で定義されることによって複数の解釈がなされることで、組織としての計画や行動に一貫性が保たれず、案件の成功を妨げることがあります。これを回避するため、成果物の定義段階で個人レベルの認識に差異が生じないレベルまで成果物を詳細化することが必要です。
また、チームの規模は、当該案件の戦略的な目的や買収・統合の意思決定に至る検討の全体像を理解する人員による小規模な体制とすることが重要です。これは、対象となる事業や企業に係る知識や経験を重視するあまりにメンバーが過剰となり、意見集約が困難になることによるスケジュールの遅延や各論の増加による重要論点に係る検討の希薄化の発生を回避するためのポイントといえます。(<図2>参照)

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Ⅲ 情報の収集

通常、シナジーの検討においては、買収・統合の合意がなされ、検討チーム発足後に当事者間で必要情報の依頼・収集を開始することが多くなっています。
一方で、Day1(買収や会社分割といったM&Aトランザクションの法的効力発生日)までにシナジーを含めた統合に係る各種施策の検討を完了し、Day100(3カ月後)をめどに短期間での施策効果が現出していることが、あるべき姿ともいわれており、買収・統合の合意後から情報収集を開始していては検討が間に合わなくなる恐れもあります。
これを回避する手段として、買収・統合の合意前に実施されるビジネスデューデリジェンス(BDD)の活用が挙げられます。BDDは多くの場合、経営計画の検証や業績変動要素の把握といった、事業や企業単体の将来性やリスクを把握するために行われますが、シナジー創出機会の特定や組織・制度の統合方針等を見据えたインタビュー設計や資料依頼を行うことにより、合意後の検討を効率的に進められます。

Ⅳ おわりに

本稿では、M&A後の統合計画における重要性の高いシナジー領域について、計画策定の準備として考慮すべきポイントを2点挙げました。
前述した通り、シナジー検討の方法論やフレームワークが広く知られることとなった現在では、方法論やフレームワークを効果的かつ効率的に活用するための準備や枠組みの内容が差別化要因となっており、それらに係る知見やノウハウを蓄積させることの重要性は今後も増していくと考えられます。


情報センサー 2014年6月号