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情報センサー2014年6月号 Tax update

国際課税原則の見直し(AOAに基づく帰属主義への変更)前編

EY税理士法人 ファイナンシャルサービスグループ 税理士 西川真由美
国内系銀行、証券会社、信託銀行、リース会社、外資系投資銀行等に対する税務アドバイス業務に従事。主な関与案件は、クロスボーダーファイナンス、信託を利用したストラクチャー、国内外の投資家に対する金融商品の取扱い等に関する税務アドバイス、金融機関等に対する申告書作成業務等。

Ⅰ 総合主義から帰属主義へ

従来、国内に支店を有する外国法人に対する課税は、全ての国内源泉所得に対して課税する、いわゆる総合主義の考え方が採用されてきました。一方で、他国との租税条約においては国内の恒久的施設(PE)に帰属する所得について課税を行う、いわゆる帰属主義が採用され、国内における外国法人に対する課税方式には二つの考え方が混在していました。
2010年に、経済協力開発機構(OECD)の新モデル租税条約第7条において、PEに帰属すべき所得の算定アプローチとしてPEを分離・独立した企業であると仮定して機能・事実関係を分析し、資産、リスク、資本を帰属させ、内部取引を認識する方法(AOA)を採用することが合意されたことを受け、日本においても国際課税原則が見直されました。新しい国際課税原則は16年4月1日以後開始事業年度から適用されます(<図1>参照)。
前編では、今回の見直しが外国法人に与える影響について解説します。

(下の図をクリックすると拡大します)

Ⅱ 外国法人(日本支店)の課税所得計算の見直し

PEを通じて事業を行う外国法人に対して、当該PEが本店とは分離・独立した企業であると擬制した場合に、当該PEに帰属させるべき所得(PE帰属所得)を算定し、これに対して課税を行うこととされました。PE帰属所得の計算に関する主なポイントは次の通りです。

1. 内部取引損益の認識

同一法人内の取引(内部取引)から生じるものであっても損益※1を認識します。なお、内部取引に係る損益の計算については、移転価格税制と同様のアプローチが採用されます。

2. PE帰属資本を超える支払利子に関する損金算入制限

PEについても「資本」を観念し、一定の方法でPEに帰せられるべき資本(PE帰属資本)の額を計算します。その上で、帳簿上の自己資本相当額がPE帰属資本に満たない場合には、PEにおける支払利子総額※2のうち、その満たない部分に対応する金額について損金算入が制限されます。

3. 外国銀行等のTierⅡ資本に対する利子の損金算入

銀行または証券業※3を営む外国法人の規制上の自己資本のうちに負債に該当するもの(TierⅡ資本)がある場合には、TierⅡ資本につき、当該外国法人が支払った利子のうちPE帰属資本の額に応じてPEに配賦した金額は、損金の額に算入されます。

4. 共通費用の配賦(本店配賦経費)

本店等で生じた費用のうち、PEで行う事業に共通する費用を配賦されたもの(本店配賦経費)については、それが合理的な基準により配賦されたものである場合には損金として認められます。ただし、その配賦計算の基礎となる書類の保存がない場合には損金算入が認められないため注意が必要です。

5. 資本等取引の擬制

本店からPEへの支店開設資金の供与やPEから本店への利益送金等については、資本等取引とされます。

6. 外国税額控除

PE帰属所得に本店所在地国以外の第三国で稼得し当該第三国で課税されたものが含まれる場合など、日本における二重課税を排除するために外国税額控除が適用されることとなりました。

7. PE帰属所得の計算に係る文書化

PEを有する外国法人は、次の書類を作成し、税務当局からの求めがあった場合には遅滞なく提示、提出しなければなりません。

  • 内部取引に関する書類
    PEと本店等との間の内部取引に関する注文書、送り状、領収書等の証憑(しょうひょう)類に相当する書類、独立企業間価格の算定に関する移転価格税制と同様の書類など
  • 外部取引に関する書類
    他の者との間で行った取引でPEに帰属するものに係る明細を記載した書類その他の書類

Ⅲ 今後の課題

今回の見直しを受けて、例えば次に掲げる項目について対応が必要となります。適用開始は16年4月以降ですが、特に、本店とのコーディネーションを要する外国法人の日本支店は、直接的な影響を受けることから、事前準備事項も多く、早期の対応が望まれます。

  • 内部取引の整理(該当取引の洗い出し、価格設定の妥当性の検証)と文書化
  • 共通経費の配賦計算に係る明細の整備
  • PEに帰属する資本の計算方法の確認
  • 外国税額控除の検討

次号の後編では、内国法人の課税に関する影響と、政省令に定められた内容も含めた実務対応などについて説明します。


  • ※1資金の借入に係る債務の保証取引等一定のものを除く。
  • ※2第三者への支払利子、PEから本店等への内部支払利子及び本店配賦経費に含まれる利子を含む。
  • ※3第一種金融商品取引業に限る。