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情報センサー2014年7月号 業種別シリーズ

自動車産業における収益認識

自動車産業研究会 公認会計士 松本雄一
2007年7月、当法人に入所。自動車産業をはじめとする大手製造業、物流業、人材サービス業の監査業務、内部統制導入支援業務、上場準備業務等に従事。法人内の自動車産業研究会に所属し、研修講師、執筆などに携わる。主な著書(共著)に『業種別会計シリーズ 自動車産業』(第一法規)がある。

Ⅰ はじめに

自動車は、完成車メーカーが自動車を製造し、ディーラーを通じて検査・登録が実施され、顧客に納車されます。完成車メーカーとは自動車を開発して組み立てる事業体をいい、ディーラーとは新車や中古車を顧客に小売りする販売店をいいます。
本稿では、完成車メーカーから顧客までの売上取引の流れを追いつつ、自動車産業に特徴的な検査・登録制度の概要と会計処理上の留意点を解説します。

Ⅱ 完成車メーカーの販売

国内市場向けの主な販売先は、グループ会社または地場の独立資本のディーラーです。これらディーラーが顧客に自動車を販売します。ただし、レンタカー会社や広域物流会社などの大口法人顧客に対しては、完成車メーカーが直接販売(フリートセールス)を行うこともあります。
海外市場向けでは、完成車メーカーは国・地域別などで定めたディストリビューター(卸売業者または販売代理店)または日本の商社を介し、完成車またはノックダウンを輸出します。

Ⅲ ディーラーの販売

1. 国内ディーラーの販売

日本では、道路運送車両に関し、所有権の公証や安全性確保などを目的として、道路運送車両法(以下、車両法)が定められています。これに基づき、自動車の販売取引の際は、検査と登録が必要です。

  • (1)乗用車の登録制度

日本では、自動車(軽自動車等を除く)について、次のように定められています(車両法第4、5、58条)。

  • 国土交通大臣の行う検査により有効な自動車検査証の交付を受けるとともに、自動車登録ファイルに登録を受けなければ運行してはならないこと
  • 登録しなければ所有権を第三者に対抗できないこと

なお、同法では「道路運送車両」とは「自動車、原動機付自転車及び軽車両をいう」(第2条1項)とし、 「自動車」を「原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具」(第2条2項)と定義しています。
自動車の登録は、業務の複雑さから、ディーラーが顧客の代理人となって行う場合がほとんどです。ディーラーは、車両登録に必要な書類をそろえ、国土交通省運輸支局で登録を代行します。登録が完了すると自動車検査証、登録完了通知書、ナンバープレートが交付されます。交付されたナンバープレートが販売店で取り付けられた後、顧客に納車されます。

  • (2)軽自動車

昨今、販売台数を顕著に伸ばしている軽自動車は、 車両法第4条に「自動車(軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除く)」と記載されているため、同法の登録対象にはなっていません。
一方で、軽自動車を運行する要件は登録対象自動車と同様に、専門検査場での検査と有効な自動車検査証の交付、自動車検査証と自動車損害賠償責任保険証明書の備え付け、検査標章(ステッカー)の表示、とされています(車両法第59条)。ただし、軽自動車の場合は、軽自動車検査協会の専門検査場で検査することになります。

2. 海外の検査・登録制度

米国でもナンバープレートを発行するための自動車 の登録制度があり、ディーラーでも手続きを代行してもらえます。ただし、ディーラーで自動車を購入すると、ナンバープレートが発行されるまでの一定期間、仮ナンバーで運転可能な点などは、日本に比べて緩やかといえます。なお、米国では50州のうち42州で検査が行われています(<表1>参照)。
中国も、現在では公安部の管轄で検査・登録制度が存在しています。中国の道路交通安全法では、マイカーなどは車両登録から2年ごとに1回など、頻度の高い検査を義務付けています。しかし、近年、中国の多くの地方で検査の際に不当な費用徴収や不正取引が行われているという報道も見られます。
主な国々では、登録制度の有無にかかわらず、自動車の安全・環境面についての検査制度が存在し、同時に所有者が保守管理責任を負っているようです。

(下の図をクリックすると拡大します)

Ⅳ 会計上の留意事項

完成車メーカーの収益認識時点は、国内向けでは、工場の検査工程の合格判定時、ディーラー等の販売先への納入時など、さまざまなケースが考えられます。会計上、各社の契約形態に応じた適切なタイミングでの売上計上が継続的に行われていることが肝要です。なお、輸出取引の収益認識は、取引条件がFOBの場合は、自動車運搬船への船積み時点が一般的のようです。
次に、国内ディーラーの収益認識時点は、新車販売の場合、車両法の登録対象自動車は登録基準、登録対象外自動車は客先への納品基準であるケースが多いようです。
登録基準が多い理由は、次の通りです。

  • 登録により所有権が移転すること
  • 登録車の販売台数情報は客観性を担保するために登録の事実をベースに公表されていること

2014年4月1日からの消費増税に際し、自動車の売上取引に対する消費税率が混在するケースが見受けられました。これは、登録基準で売上を計上している乗用車と、納品基準で売上を計上している軽自動車等が存在することが理由です。このような事例は、日本固有のものかもしれません。


  • 現地で組み立てるために車両の構成部品を梱包したもの

情報センサー 2014年7月号