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情報センサー2014年8月・9月合併号 押さえておきたい会計・税務・法律

監査等委員会設置会社の選択可能性
-改正会社法に示された新たな機関設計の選択肢に係る検討課題-

公認会計士 太田達也
当法人のフェローとして、法律・会計・税務などの幅広い分野で助言・指導を行っている。また、豊富な知識・経験および情報力を生かし、各種実務セミナー講師、講演などにおいて活躍している。著書は多数あるが、代表的なものとして『会社法決算書作成ハンドブック』(商事法務)、『「純資産の部」完全解説』『「解散・清算の実務」完全解説』『「固定資産の税務・会計」完全解説』(以上、税務研究会出版局)、『例解 金融商品の会計・税務』(清文社)、『減損会計実務のすべて』(税務経理協会)などがある。

Ⅰ 監査等委員会設置会社制度の創設

1. 監査等委員会設置会社の内容

「会社法の一部を改正する法律案」が平成25年11月29日付で国会に提出され、平成26年4月25日に衆議院を通過し、同年6月20日に参議院で可決、成立しました。その改正会社法の中に「監査等委員会設置会社」という新たな機関設計の選択が可能となる制度の創設が盛り込まれています。
改正会社法で規定されている監査等委員会設置会社とは、取締役3名以上(過半数は社外取締役)で構成する監査等委員会が取締役の業務執行を監査する株式会社をいいます(<図1>参照)。
現在の会社法では、大会社である公開会社(株式の一部でも会社の承認なく自由に譲渡できる会社)は、委員会設置会社(改正後は、指名委員会等設置会社)を除いて、監査役会を設置しなければならないと規定されており(会社法328条1項)、ほとんどの会社が監査役会設置会社※1を選択していることは周知のとおりです。そこに、監査等委員会設置会社という機関設計の選択肢が加わることになります。
監査等委員会設置会社の制度の内容をまとめると、次のとおりです。

(下の図をクリックすると拡大します)


  • 監査等委員会設置会社の主な内容
  1. 監査等委員会設置会社は、取締役会および会計監査人を置かなければならない。一方、監査役を置いてはならない(327条1項3号、4項、5項)。
  2. 監査等委員である取締役は、それ以外の取締役とは区別して、株主総会の決議によって選任する。その報酬等も、それ以外の取締役の報酬等とは区別して、定款または株主総会の決議によって定める(329条2項、361条2項)。
  3. 監査等委員会は、監査等委員3名以上で組織され、監査等委員は、取締役でなければならず、かつ、その過半数は、社外取締役でなければならない。なお、常勤の監査等委員を置くことは義務付けられていない(331条6項)。
  4. 監査等委員である取締役の任期は2年(短縮不可)であるのに対して、それ以外の取締役の任期は1年(定款または株主総会決議により短縮可)である(332条3項、4項)。
  5. 監査等委員会は、監査等委員である取締役の選任に関する議案の提出について同意権を持つ。また、監査等委員である取締役は、監査等委員である取締役の選任等に関して意見を述べることができる。また、監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の選任等について、監査等委員会の意見を述べることができる(342条の2第1項、4項、344条の2第1項、4項)。
  6. 各監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役の報酬等について意見を述べることができる。また、監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の報酬等について、監査等委員会の意見を述べることができる (361条5項、6項)。
  7. 取締役(監査等委員である取締役を除く)との利益相反取引について、監査等委員会が事前に承認した場合には、取締役の任務懈怠(かいたい)の推定規定(会社法423条3項)を適用しない(423条4項)。
  8. 監査等委員会設置会社の業務を執行するのは、代表取締役または業務執行取締役(会社法363条1項各号)であり、執行役は置かれない(399条の13第3項)。
  9. (i)監査等委員会設置会社の取締役会は、会社法362条4項各号に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
    (ii)(i)にかかわらず、監査等委員会設置会社の取締役の過半数が社外取締役である場合には、当該監査等委員会設置会社の取締役会は、その決議によって、重要な業務執行の決定を取締役に委任することができる。
    また、(i)および(ii)にかかわらず、重要な業務執行の全部または一部の決定を取締役に委任することができる旨を定款で定めることができる(399条の13第4項、5項、6項)。

(注)条文番号のみ記載している箇所は、改正会社法の条文番号

任期が異なる点を除いて、監査役と同様の身分保障になっています。そのこととパラレルに、身分保障を担保するための権限も、監査役と同様に付与されています。
自ら業務執行しない社外取締役を複数置くことにより、業務執行と監督の分離を図る狙いがあると考えられます。また、社外取締役が監査を担うとともに、経営者選定・解職等の決定への関与を通じて監督機能を果たすことを意図する制度とみられます。この点、取締役会の監督機能の充実が意図されていると考えられます。

2. 監査等委員会設置会社の特徴

監査等委員会設置会社は、取締役会の一機関として、取締役会のために監査を行うという立て付けにはなっていますが、監査等委員となる取締役の地位は、独立性確保の必要性から、解任について株主総会の特別決議が必要になるなど、現在の監査役と近い取扱いです。
一方、内部統制システムを活用した監査を行うという点では、指名委員会等設置会社(現在の委員会設置会社)の監査委員会に近い取扱いです。
また、監査等委員会が取締役の利益相反取引について事前承認すれば、取締役の任務懈怠の推定を排除するという特典が与えられます。この特典は、監査等委員会設置会社が、より多くの会社に採用される誘因となることを期待してのものと思われます。
さらに、監査役の任期は4年であるのに対し、監査等委員である取締役の任期は2年であるため、改選について比較的柔軟に対応できます。

3. 「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明

改正会社法では、一定の要件を満たす株式会社において社外取締役を置いていない場合は、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を株主総会において説明することを義務付けるものとしています。現在でも、証券取引所のルールで、独立役員である取締役を選任することに努めることが要求されていますが、今後は前記の理由の説明も必要になります(Ⅱで詳述)。

(参考)平成25年9月末時点における、東証一部上場会社の社外取締役を選任している割合は62.3%、全上場会社の割合は54.2%(東京証券取引所調べ)

4. 監査等委員会設置会社への移行可能性について

現在の監査役会設置会社の場合、最低2名の社外監査役が必要ですが、別途、社外取締役を最低1名選任しないと、今後は「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明が再三求められます。つまり、監査役会設置会社を継続する場合は、社外役員を最低3名以上置くことを検討しなければならないわけです。
一方、監査等委員会設置会社に移行した場合は、社外取締役を最低2名以上選任することになりますが、監査役を置くことはできません。会社全体で、社外役員を最低2名以上置くことになります。
次の点は、移行する誘因になり得ると思われます。

  • 役員が1名少なくて済む。
  • 「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明や開示が不要となる。
  • 監査役の任期は4年であるのに対し、監査等委員である取締役の任期は2年であるため、改選について柔軟に対応できる。
  • 監査等委員会が取締役の利益相反取引について事前承認することにより、取締役の任務懈怠の推定が排除される。

また、いっそうグローバル化・複雑化する経営環境の中で、現在の監査役の監査手法が、(実査などの)直接的な監査から、内部監査部門、コンプライアンス部門、監査法人等との連携を重視した間接的な監査に比重が移ってきています。その点は、指名委員会等設置会社(現在の委員会設置会社)における監査委員会の監査手法に近接してきていることを表しています。
監査等委員会設置会社における監査等委員会の監査も、内部統制システムを活用した間接的な監査手法を前提にしている制度設計なので、そのような状況になじむ面はあるかと考えられます※2
経営者は、新制度も考慮に入れつつ、自社にとって適切なガバナンス体制の在り方について、今後十分に検討するべきだと思われます。

Ⅱ 「社外取締役を置くことが相当でない理由」の開示

1. 開示の義務化

社外取締役の設置の義務化が見送られた一方、間接的に社外取締役の選任の促進を図る観点から、次の規律が置かれることになります。

  1. 事業年度の末日において社外取締役を置いていない監査役会設置会社(公開大会社に限る)、かつ、有価証券報告書提出会社は、当該事業年度に関する定時株主総会において「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明しなければならない。
  2. 社外取締役を置いていない監査役会設置会社(公開大会社に限る)、かつ、有価証券報告書提出会社は、事業報告に「社外取締役を置くことが相当でない理由」を記載しなければならない。
  3. 社外取締役を置いていない監査役会設置会社(公開大会社に限る)、かつ、有価証券報告書提出会社が、株主総会に、社外取締役候補者が含まれていない取締役選任議案を提出する場合、株主総会参考書類に「社外取締役を置くことが相当でない理由」を記載しなければならない。

(注)②および③については、改正会社法成立後に会社法施行規則で規定される見込み

対象となる会社が、事業年度の末日において社外取締役を置いていない場合は、社外取締役を含む取締役の選任議案を、その事業年度に係る定時株主総会に提出したとしても、一律に「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明が必要となる点に留意する必要があります。
なお、証券取引所の有価証券上場規程(445条の4)が「上場内国株券の発行者は、取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保するよう努めなければならない」と改められ、すでに平成26年2月10日に施行されています。

2. 「社外取締役を置くことが相当でない理由」

自民党法務部会の審議において、社外監査役2名がいるといっただけでは理由を説明(記載)したことにならないこと、会社ごとの当該時点での理由を記載する必要があることを、会社法施行規則に定めるという方針が確認されています。
一般的に、社外取締役が必要とされる理由としては、不祥事についての経営監視、株主資本コストを強く認識した経営を行っているかについての経営監視などが考えられます。そのような一般的な必要性を考慮しても、なお自社にとって社外取締役を置くことが相当でないと判断される理由を説明しなければなりません。
独立した社外監査役が2名いることで十分であるとの説明は、社外取締役を置く必要がない理由にはなり得ますが、置くことが相当でない理由にはならないと考えられます。社外監査役で十分機能するガバナンス体制が構築されており、さらに社外取締役を置くことは迅速な経営判断を行う上で支障になる、コスト等の点で非効率と考えられる、すなわち社外取締役を置くメリットよりもデメリットが上回るということであれば、置くことが相当でない理由になり得ると考えられます。
自社の現状の業務、コーポレートガバナンス体制に照らして、業務の運営上において迅速な意思決定に支障が生じ得る、コーポレートガバナンス機能の向上という点で障害となり得る点など、企業の状況を踏まえて説明することも考えられます。ただし、理由の開示は各社各様であり、会社ごとに判断・検討する必要があると思われます。

Ⅲ 会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定

現在では、取締役会が、会計監査人の選任・解任に関する議案の内容を決定する権限を持っています。監査を受ける取締役会が議案の内容を決定できるため、会計監査人が取締役から一定の影響を受け、経営陣の意向を配慮する監査を行う傾向があるという指摘が見られました。
改正会社法では、取締役の会計監査人に対する影響力を排除し、会計監査人の独立性を高めるために、議案の内容の決定権を、監査される側の取締役会ではなく、監査する側の監査役や監査役会に付与するものとされます。


  • ※1監査役会設置会社では、監査役3名以上(過半数は社外監査役)で構成する監査役会が、取締役の職務執行を監査します。
  • ※2内部統制部門を活用した監査を行っていく上で、内部統制部門との連携および会計監査人との連携も、より重要となります。監査等委員会設置会社を選択する場合は、具体的な連携の方法(定期的会合の設定等)を詰めることが必要になると考えられます。