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情報センサー2014年10月号 業種別シリーズ

物流業におけるトラックドライバー不足に関する経営課題について

物流倉庫業研究会 公認会計士 三木練太郎
2002年10月、当法人へ入所。物流業、商社、小売業、不動産業、建設業、食品製造業等と多くの業界各社の監査業務に従事するほか、現在は物流倉庫業研究会に所属し、日々、専門性の向上に取り組んでいる。著書に『業種別会計シリーズ 物流倉庫業』(第一法規)がある。

Ⅰ はじめに

近年、物流業では深刻なトラックドライバー不足が経営問題として取り上げられています。全国物流ネットワーク協会や国土交通省自動車局においても、ドライバー不足対策に関するプロジェクトが始動しています。
一方、日本の人口構造としても、少子高齢化に伴い労働力の減少が想定されると同時に、女性、高齢者、外国人労働者の活躍が多いに期待されています。
しかし、物流業では、とりわけ免許制度等の問題もあり、ドライバー不足は将来的にも大きな課題になると考えられています。
本稿では、将来の経営環境の変化に備え、物流業が直面している課題について概説します。

Ⅱ 深刻な人手不足の原因

1. 過酷な労働環境

物流業における作業は昼夜を問わず行われ、勤務時間も変則的になりがちです。また、運送のみでなく、倉庫への搬入や、トラックへの積み込みのために荷さばき業務を実施するなど、拘束時間は長く、労働環境は過酷になりやすいといわれています。

2. 賃金の仕組み

物流業は労働集約型であり、賃金の上昇は企業の業績に大きく影響するため、容易に賃金を変動させることは困難です。賃金体系は歩合給の要素が高く、給与の増加率は他の産業よりも低いという特徴があります(<図1>参照)。


図1 各産業の年齢別平均月額賃金の格差

3. 免許制度の弊害

従来の普通免許では車両総重量8トン未満の車両が扱えましたが、車両事故の抑制のため、平成19年に運転免許制度の改正が行われ、5トン未満の車両しか運転できなくなりました(<表1>参照)。車両に冷凍ユニット等を設置すると、総重量が5トンを超えるため、新免許制度では2トン車すら運転できない可能性もあります。また、中型又は大型車両を運転するには、普通免許取得後、一定の経験年数が必要なことも、ドライバー不足の原因の一つです。

(下の図をクリックすると拡大します)

Ⅲ 今後の業界を取り巻く環境変化

1. Eコマース市場の発達による物流再編

Eコマース市場は、インターネットやスマートフォンの普及とともに拡大しており、また、世帯構造の変化により、単独世帯等の割合が増加していることから、今後ますます拡大するともいわれています。このような中、大規模物流施設の建設の動きが活発化しており、従来の倉庫-小売店というルートから、大規模施設-直接個人消費者というルートが増加するとも考えられます。

2. ドライバーの拘束時間および荷主勧告制度

平成26年4月1日より、安全を考慮し、原則月間293時間を限度とする労働条件となり、違反となっている要因が荷主の責任である場合には、荷主勧告が発動され、荷主名および事案の概要が公表されることとされました。荷主としても、コンプライアンスの観点から、品質および安全面に取り組む物流会社との取引を優先すると考えられます。

Ⅳ ドライバー不足解消のための具体的経営課題

1. 運送効率の改善によるコスト削減

物流業では、荷主とのシステムを構築して運送効率改善に日々努力しています。そのため、すでにコスト削減策は十分対応されており、改善効果は大きくないといわれています。特に、燃料費等は相場変動により予測困難な費用であるため、管理も困難なのが実情です。

2. 荷主との運賃交渉

コスト削減に主眼を置くのではなく、本来は適正な運賃を荷主から収受することが重要です。ドライバーの賃金水準を向上させるためにも、適切な原価計算制度に基づく根拠を示し、荷主と交渉することが必要不可欠と考えられます。

3. コンプライアンス遵守(じゅんしゅ)

長時間労働による体調不良、交通事故、交通違反等を削減し、安全管理を徹底するためのコンプライアンス教育が強く求められます。

4. 福利厚生の充実

免許を保持していない新卒者を採用し、免許取得に必要な費用を物流会社が負担するなど、自社でドライバーを育成する施策の検討が必要とも考えられます。

5. 業務の切り分け

ドライバーの業務には、運送業務のみでなく荷さばき業務も含まれるのが実態です。両業務を切り分け、ドライバーは運送業務に特化し、労働環境の改善を図ることも考えられます。

Ⅴ おわりに

物流業は参入障壁が低く、多くの会社が存在するため、荷主が強い立場にあり、物流会社は荷主の意向を受け入れざるを得ない環境といわれていました。しかし、前述のように、近年は大きな転換点を迎えているのではないかと考えられます。日本経済を活性化させるためにも、物流機能は必要不可欠な要素です。経済を下支えする根幹機能を発揮すべく、物流業の課題に関する支援をすることも、われわれの課題の一つだと感じています。