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情報センサー2014年12月号 EY Advisory

マイナンバー制度 -民間企業への影響と求められる対応

アドバイザリー事業部 公認会計士 梅澤 泉
公認情報システム監査人、公認不正検査士。金融機関、製造業、小売業、サービス業などの会計監査を経て、個人情報保護をはじめとする情報セキュリティー監査や、データセンター事業者・クラウドサービス事業者の顧客向けサービスに係る内部統制の保証業務に従事。

Ⅰ マイナンバー制度とは

2013年5月、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下、番号法)が制定され、16年1月から個人番号(以下、マイナンバー)の利用が開始されます。このマイナンバー制度は、社会保障、税および災害対策の各分野における行政運営の効率化を図り、国民にとって生活の利便性を高めることを目的として導入されます。
番号法が施行されると、民間企業は主に「個人番号関係事務実施者」(番号法2条13項)として、マイナンバーを記載した書面の作成・提出等が必要になる各種業務の範囲内でマイナンバーを取り扱うことになります。

Ⅱ 民間企業の実務に与える影響

1. 民間企業とマイナンバー制度の関係

マイナンバー制度は、行政機関や地方自治体等が、番号法で定められている事務で、効率的な情報の管理・利用や、迅速な情報の授受を実現する仕組みです。これらの事務に関しては、マイナンバーの収集や利用等の活動が、民間企業で処理された上で行政機関等に流れていくという手続が存在するため、民間企業もマイナンバー制度の影響を少なからず受けることになります。

2. どのような業務が影響を受けるか

具体的に民間企業が影響を受ける主な業務としては、次のものが挙げられます(<図1>参照)。

(下の図をクリックすると拡大します)


  • 人事・給与業務
    従業員等からマイナンバーの提供を受け、給与所得の源泉徴収票、給与支払報告書、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届等の必要な書類に記入し、税務署や市区町村、年金事務所といった関係機関に提出する業務
  • 個人相手の取引に対する支払業務
    外部の専門家(顧問弁護士、税理士、社会保険労務士等)に対する報酬、個人家主に対する賃料、外部講師に対する講演料、非上場会社の個人株主に対する配当金の支払い等のために、マイナンバーの提供を受けて支払調書に記載し、税務署に提出する業務
  • 金融機関における顧客との取引業務
    金融機関の場合、顧客からマイナンバーの提供を受け、顧客への配当金や保険金等の支払調書に記載し、税務署に提出する業務

Ⅲ 民間企業に求められる対応

1. 制度対応に向けた留意事項

民間企業がマイナンバー制度に対応するに当たり、認識しておくべき留意点として次の事項が挙げられます。

  • (1)組織横断的な対応が必要

Ⅱ.2で説明したように、民間企業がマイナンバー制度の影響を受ける業務は多岐にわたります。このため、多くの場合、マイナンバーは特定の一部門だけではなく、複数の部門にまたがって取り扱われることになり、人事部をはじめ経理部、情報システム部や支店、営業所、工場等も交えた、全社的なプロジェクト体制の下で対応を検討する必要があります。

  • (2)限られた準備期間での対応が必要

15年10月以降、市区町村から本人の元にマイナンバーが通知カードという形で郵送され、16年1月にはマイナンバー制度そのものが開始されます。民間企業は、残された1年ばかりの短い期間で、マイナンバーの収集から利用、保管、廃棄までのルールと運用体制を整えなければならず、早期の準備対応が求められます。

  • (3)厳しい罰則が適用される

個人情報保護法に比べ、番号法では罰則が厳しく規定されています。不正な利益を図る目的でマイナンバーを提供・盗用した場合、詐欺・不正アクセス等によりマイナンバーを取得した場合等には、その行為者のみならず、行為者が所属する組織(民間企業等)に対しても、行政指導を経ることなく直接、懲役または罰金が科せられます(直罰規定)。

2. 民間企業が対応すべき事項

民間企業がマイナンバーを適正に取り扱うためには、事前の準備と、マイナンバーの収集から廃棄に至るまでの、段階に沿った対応の検討が必要です。対応すべき事項を組織、業務プロセス、システム、情報管理という四つの視点から整理すると<図2>のとおりです。
特に、マイナンバーを取り扱う各段階を意識した上で、対応すべき事項を検討する際のポイントとして、次の事項について、あらかじめ的確に取り決めておくことが挙げられます。


図2 民間企業が対応すべき事項

  • マイナンバーの収集時に実施する本人確認の方法、および利用目的を漏れなく明示するための手順
  • 利用・保管時におけるマイナンバーの漏えい、滅失や毀損(きそん)を防止するための安全管理の措置
  • 廃棄時におけるマイナンバーの確実かつ速やかな廃棄・削除のための管理方法

今後、民間企業は自社のどの業務、どのシステムがマイナンバーの対象となるかを正しく見極め、16年1月の制度開始までに、必要となる対応について早期に検討、着手することが望まれます。


情報センサー 2014年12月号