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情報センサー2015年3月号 業種別シリーズ

ユニフォームシステムの改訂(第11版)とホテル経理実務に与える影響

不動産セクター 公認会計士 田中耕太郎
2001年10月、当法人に入所。不動産業やホテル業の監査、IFRS導入支援、証券取引所への出向経験を生かした上場支援などに従事。主な著書(共著)に『事例でわかる 旅館・ホテル・ゴルフ場の再生実務』(中央経済社)や『業種別会計シリーズ 不動産業』(第一法規)などがある。

Ⅰ ユニフォームシステムとは

ユニフォームシステム(Uniform System of Accounts for the Lodging Industry:USALI)とは、ニューヨーク市ホテル協会、アメリカホテル協会、ホスピタリティ・ファイナンシャル&テクノロジー・プロフェッショナルズ(HFTP)などで形成された委員会の下で策定された、ホテルの統一会計報告様式のことをいいます。
その特徴は、ホテルの収益性を把握するために、ホテルの客室部門や料飲部門などの部門別損益計算書(要約営業報告書)および部門別の明細表を作成することです。ユニフォームシステムは、ホテル部門別管理会計のグローバルスタンダードになっており、ホテル間の相対評価をすることやホテルを投資対象とする際の尺度としても有用です。
日本でも、近年活発になっているホテル売買の際や、外資系ホテルに運営委託をしている場合、当該ホテルの収益性を把握するため、ユニフォームシステムへの準拠を求められることが多く、重要性は増しています。
ユニフォームシステムは、初版が1926年に出版されてから幾度も改訂されており、2014年6月に第11版が出版されています。06年12月の第10版からは、約8年ぶりの改訂となりました。なお、第11版の効力発生日は15年1月1日からとなっています。
本稿では、第11版の改訂内容と当該改訂がホテル経理実務に与える影響について解説します。

Ⅱ 第11版の主な改訂内容

今回の改訂は、積極的なIT投資による合理化、販売形態の多様化またはグローバル化など、ホテル業を取り巻く環境変化への対応、あるいは国際会計基準(IFRS)や米国会計基準(USGAAP)の改訂への対応などが背景となっています。第11版の主な改訂点は次の通りです。

1. ホテル運営会社用とホテル所有者用の二つの要約営業報告書を用意

要約営業報告書は、一定期間の営業成果に関して管理者に情報を提供し、他のホテル間での営業成果の比較を可能にするものです。ホテルのビジネスモデルとして、海外ではホテルの所有者(オーナー)とホテルの運営者が分離した形態が一般的であり、日本でも外資系を中心に所有と経営の分離が進んでいます。
第11版では、多様なビジネスモデルを背景に、ホテル運営会社用の要約営業報告書のみならず、新たにホテル所有者用の要約営業報告書の様式も用意しており、どちらかの様式を選択して作成することができます。

2. 要約営業報告書の科目変更

第11版では、<図1>のような要約営業報告書の科目変更等が行われています。配賦不能営業費用にITシステム部門が新設されたほか、営業純利益がEBITDA※1に科目変更するなど重要な改訂が行われています。

(下の図をクリックすると拡大します)

3. 売上の総額表示vs純額表示

売上を総額、純額のいずれかで報告することについては、総売上をベースにマネジメント料やフランチャイズ料、およびその他の手数料の計算をするときに重要な影響を及ぼします。
第10版では、ランドリーおよびドライクリーニング、室内TV、ガレージ・駐車場について、売上を総額で報告するか純額で報告するかのガイダンスを設けていましたが、第11版では新たに、視聴覚サービス、ホテル内の小売店舗、テニスコート運営などのレクリエーション、さらにはサーチャージ、サービス料ならびにチップについてのガイダンスを追加しています。

Ⅲ 経理実務に与える影響

今回の改訂は、要約営業報告書の科目変更などが主な内容ですので、ホテル経理実務に与える影響はそれほど大きくないのかもしれません。しかし、配賦不能営業費用にITシステム部門が新設されたことで、全てのITに関連する費用※2を一つに統合する必要があります。
また多くのホテルでは、ピークや需給に合わせて契約社員やアウトソーシングを有効活用するなど、人件費をコントロールする取り組みがなされています。第11版では、部門別の明細表における給料および賃金の内訳として、マネジメントと非マネジメントに分けているほか、サービス料の分配金や契約社員・派遣社員またはアウトソーシング社員の人件費が新設されていますので、細分化に対応するための仕組みづくりも必要です。

  • ※1Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization(減価償却費支払利息控除前税引前利益)
  • ※2会計ハードウエアやソフトウエアライセンス、防犯システムライセンス、携帯電話や管理上の通話料、インターネットサービス、宿泊客に提供する無料通話やインターネットサービスなど