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情報センサー2015年10月号 業種別シリーズ

鉄道業における運賃・料金のしくみについて

旅客運輸セクター 公認会計士 土田 領
2004年に当法人に入所。鉄道業・金融業の監査に従事後、10年より一般事業会社に出向。13年に帰任し、大手鉄道会社の監査業務に従事。

Ⅰ はじめに

2014年3月に消費税率引上げに伴う鉄道事業者の上限運賃・料金の変更が認可されました。鉄道事業は公共交通機関として公共性が高いことから、鉄道事業法においてさまざまな許認可を得る必要があり、運賃・料金についても規制がなされています。本稿では、鉄道事業の運賃・料金のしくみについて解説します。

Ⅱ 運賃・料金の規制

運賃とは、人または物品の運送に対する対価とされ、普通旅客・定期旅客運賃などがあります。また、料金は運送以外の設備の利用や付加サービス、役務の提供に対する対価とされ、特急・入場料金などがあります。
運賃および料金の上限の設定・変更は国土交通大臣の認可を受けますが、上限の範囲内で定める運賃や特急料金(新幹線鉄道に係るものを除く)の設定・変更は事前の届出とされ、また入場料金などについては無規制となっています(<図1>参照)。


図1 旅客鉄道運賃の上限価格制のイメージ

鉄道事業を営むためには多額の設備投資が継続的に必要となります。特定の地域において独占的な事業であることから、無制限にコストを運賃・料金に転嫁できないように、鉄道事業法第16条2項では、国土交通大臣は上限の認可をする場合に、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの(=総括原価)を超えないものであるかどうかを審査して認可をしなければならないという、総括原価方式による上限価格規制がなされています。
運賃の算定は、国土交通省が公表している収入原価算定要領に従い、JR旅客各社、大手民鉄、および地下鉄事業者に適用される要領とそれ以外に分かれます。JR旅客各社、大手民鉄、地下鉄事業者の3グループでは、各事業者の経営効率化のインセンティブ、事業者間の効率化競争を促すために、ヤードスティック方式(基準比較方式)が採用されています。
ヤードスティック方式が採用されているのは、営業費用のうち人件費と経費の査定です(<図2>参照)。人件費と経費を路線費、電路費、車両費、列車運転費、駅務費の五つに分類し、国土交通省より毎年公表される基準コストと実績コストを比較します。実績コストが基準コストを上回ると基準コストが上限となり、基準コストが実績コストを上回ると両者の間が適正コストとされます。


適正コスト


図2 ヤードスティック方式の適用範囲

Ⅲ 運賃・料金の算定方法

運賃・料金は前記の規制がされています。次に運賃・料金の算定方法について、基本的な運賃である普通旅客運賃について紹介します。

1. 対キロ制

対キロ制は、キロ当たりの賃率に乗車区間の営業キロを乗じて運賃額を計算する方法であり、JR旅客各社および一部の中小民鉄事業者において実施されています。

2. 対キロ区間制

対キロ区間制による運賃は、一定の距離を基準として区間を定め、乗車区間に応じた運賃を算出する制度で、乗車距離に応じて階段状に運賃が変化してゆくものです。乗車距離が長くなるにしたがって階段の高さ(加算額)、階段の奥行きの長さ(同一運賃で乗車できる区間長)を変化させることにより遠距離逓減が図られています。この制度は簡明であり、大手民鉄、東京地下鉄、公営地下鉄、中小民鉄の多くがこの運賃制度を実施しています。

3. その他(区間制、均一制)

営業路線をおおむね等距離に区分できる駅を基準として2以上の区間に分割し、区間に応じて運賃を算出する方法(区間制)や、乗車キロに関係なく運賃を均一とする方法(均一制)があります。

Ⅳ おわりに

鉄道事業の料金規制について述べましたが、公共性が高いサービスについては、多くの国や地域においても料金などの規制がなされています。これらの料金規制事業における、将来料金を値上げする権利または値下げする義務に関して、国際会計基準審議会(IASB)においても議論されており、14年9月に料金規制による財務的な影響の報告に関するディスカッション・ペーパーが公表されました。本ディスカッション・ペーパーでは料金規制の一般的な定義の開発に焦点を当て、料金規制について具体的な会計処理に関する提案を作成すべきかどうかを決定する前に、考え得る会計処理アプローチに関するメリット、デメリットについてコメントを求めています。料金規制事業に関する今後の動向に留意が必要です。


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