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情報センサー2015年11月号 業種別シリーズ

外食産業の事業の特徴と固定資産の減損

外食セクター 公認会計士 佐藤 衛
主に国内事業会社の監査業務に従事。業種は外食、鉄鋼メーカー、商社など。またIPO業務や業務開発活動にも従事している。

Ⅰ はじめに

昨今の外食産業を取り巻く経済環境は、消費税の増税や物価上昇などによる個人消費の低迷、いわゆる「中食」(調理済みの弁当・総菜の販売など)の定着や自炊への意識の高まりなどにより、良好な状況とは言えません。また最近の新聞報道などでは、外食産業が抱える食の安全上の問題や労働上の問題など、さまざまな問題が取り上げられています。
一方、このような状況の下でも、新規株式上場を果たす外食企業も多数あり、堅調に業績を伸ばしている企業と、苦戦を強いられている企業の二極化が進んでいると考えられます。

Ⅱ 外食産業の事業における特徴

外食産業では、参入障壁が低く、消費者ニーズが多様化していることもあり、立て続けに新しい店舗がオープンしています。一方で、顧客ニーズに合わない店舗は閉店を余儀なくされ、業態変更が繰り返され、それでも定着しない場合は退店しているのも現実です。また、コンビニエンスストアなどの異業種との競争も激しく、顧客の「食」に対する安心・安全への関心が高いことから、ひとたび問題が発生すれば大幅に業績が落ち込むというように、非常に浮き沈みの激しい業界と言えます。

Ⅲ 外食産業の会計的な特徴

このように、外食産業では、環境の変化に応じて短期間で閉店の意思決定がなされることも珍しくありません。また、閉店に至らないまでも、業績が悪化し投資額の回収が見込めなくなることもあります。このため、外食産業においては、固定資産の減損損失が毎期計上される企業も多く見受けられます。これは、外食産業における会計的な特徴の一つだと言えます。

Ⅳ 固定資産の減損プロセス

固定資産の減損は、①グルーピングの決定②減損の兆候の有無の判定③減損損失の認識の判定④減損損失の測定という手順に沿って判断することが必要です(「固定資産の減損に係る会計基準」参照)。
減損損失の計上プロセスの主な業務をフローチャートで示すと<図1>の通りです。


図1 減損プロセスのフローチャート

Ⅴ 外食産業における固定資産の減損の留意点

1. グルーピングの決定

外食産業の場合、各店舗を独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位と考えるのが一般的です。一方で、同一のビル内に複数の店舗がテナントとして入っている場合には、その複数の店舗に相互補完性があると考えて複数店舗を一つのグルーピングとする考え方や、地理的に近隣にある店舗群を一つの資産グループと考えてグルーピングする考え方もあります。

2. 減損の兆候の有無の判定

減損の兆候の有無の判定では、資産グループの損益またはキャッシュ・フローが2期連続マイナスの場合、翌期にプラスになることが確実だと見込めるケースを除き、減損の兆候ありとして減損損失の認識の段階に進みます。ここでは、本社費を配賦した後の金額で判断する点に留意が必要です。また、退店の意思決定やリロケーションの意思決定を行った場合も減損の兆候があると判断されます。
外食産業では、頻繁に店舗の業態変更が行われることがあります。業態変更が行われた場合には、減損の兆候とされている「資産または資産グループの使用範囲または方法について回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、あるいは、生ずる見込みである場合」に該当する可能性があるため、留意が必要です。

3. 減損損失の認識の判定および測定におけるキャッシュ・フローの見積り

減損損失の認識の判定および測定における割引前将来キャッシュ・フローの総額の見積りに当たっては、主要な資産の経済的残存使用年数を見積もることになります。外食産業の場合には、対象となる資産は内部造作であるケースが多いため、見積り期間は20年未満となることが多いと考えられます。
将来キャッシュ・フローの見積りは、主要な資産の経済的残存使用年数までの割引前将来キャッシュ・フローだけでなく、見積り期間経過時点における主要な資産の売却によって得られるキャッシュ・イン・フローを含めることに留意が必要です。

Ⅵ おわりに

外食産業では、固定資産の減損の他にも資産除去債務、敷金・保証金の償却といった会計的な論点や、店舗における現金の管理、フランチャイズに関する会計処理など、さまざまな会計上の論点が存在します。これらについても、今後、外食産業の事業の特徴を交えてご紹介する機会があれば幸いです。


情報センサー 2015年11月号