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情報センサー2015年12月号 新興国トピックス

ベトナム法人税の概要と留意点

新興国コンサルティング室 緑川 直
総合商社にてベトナム、タイを中心に東南アジアにおける合弁事業、販売会社企画・設立による海外事業開発で豊富な経験を有する。会社法、収益評価・検証を基にリスク分析を踏まえた顧客海外進出支援および事業化多数。現在は、当法人の新興国コンサルティング室ベトナムデスクリーダーとして、日系企業のベトナム進出、アドバイザリー、税務でのサポート業務に従事している。

Ⅰ はじめに

ベトナム経済は堅調に推移しています。直近数年間の実質経済成長率をならしてみると約6%の水準で、一人当たりのGDPは2014年に2,000米ドルを超えています(<図1>参照)。また、国際通貨基金は、20年までの経済成長率を6%程度で推移すると予測しています。このような環境を背景に、日系企業の進出は増加傾向にありますが、企業経営において法人税には留意点があります。本稿では、そのポイントをまとめました。


図1 経済成長率及び一人当たりGDP

Ⅱ ベトナムの法人税

1. 納税義務者

納税義務者は、企業法、投資法、金融機関法、保険業法、証券法、商法およびその他のベトナム国内法により設立された内国法人と、ベトナム国内に恒久的施設を有し外国法に基づいて設立された外国法人とに大きく分けられます。内国法人の主な形態は、有限責任会社、株式会社、パートナーシップ、法律事務所、私企業、事業協力契約の当事者、石油・ガス事業合弁企業などです。なお、恒久的施設を有していない外国法人であっても、ベトナム国内を源泉とする所得がある場合は課税対象とされることがありますので、租税条約の適用等を含め慎重な判断が必要です。

2. 会計期間

会計期間は、原則として暦年です。異なる会計期間を設定することは可能ですが、管轄当局に届け出の上で、3月、6月、9月のいずれかを事業年度末に選択する必要があります。企業は、その会計期間と同じ課税期間を採用しますが、最終課税年度が3カ月以内、例えば新規設立に伴う初年度の課税期間、企業形態の変更、株主の交代、および合併、企業分割、解散、破産等の場合は、次年度または前年度に当該期間を加えることができます。ただし、一課税年度は15カ月を超えることができません。

3. 税率

法人税の標準税率は14年1月1日から原則22%です。また、16年1月1日からは20%に引き下げられる予定です。

4. 申告および納税

ベトナムにおける法人税の申告および納税は、<表1>のとおりとなっています。


表1 ベトナム法人税の申告および納税

納税期限までに納付しない場合は、原則として未納額に対して1日当たり0.05%が延滞税として課せられます。申告に対する不正は、罰金が課せられる場合があります。

5. 課税所得の計算

(1) 基本構造

外資系企業には法定監査が求められ、日本と同様に監査済み財務諸表の税引前利益に加算減算調整を行い、繰越欠損金を控除した課税所得に税率を乗じて計算します。
法人税率の変更(16年1月)に伴い期中で税率が変更される場合は、期中の課税所得を平均的に発生したものと見なして法人税を計算します(<設例>参照)。


設例

(2) 主な項目

費用についての留意点は次のとおりです。

① 損金算入費用の原則

原則として損金算入するためには、次の条件を全て満たす必要があります。

  • 製造・販売活動に直接的に関係して発生した費用
  • 法律上の要件を満たしたインボイスおよび関係書類が添付された費用
  • 20百万VND以上(VAT込)の取引に関わる場合は、銀行送金を証明する証憑(しょうひょう)の添付

② 減価償却

減価償却を行う前には、管轄税務署に対して適用する減価償却の方法を通知しなければなりません。
減価償却の方法は、原則的に定額法です。ただし、一定の条件を満たす場合は定率法や生産高比例法を適用することができます。耐用年数は最長期間と最短期間が法令で定められており、その期間内であれば任意に決定することができます。
製品の生産やサービス提供のための機械設備等の固定資産は、実際に使用されていることを前提として、損金算入することができます。また、通常の営業活動で使用されるパソコン等の固定資産も同様の扱いになります。

③ 原材料等

原材料、供給物、燃料、電力および製品に関する費用で、合理的な消耗水準内の場合は損金として認められます。ただし、合理的な消耗水準を超える場合は損金不算入となります。ここでいう合理的な消耗水準とは製品を製造する場合に通常想定される消費量と考えられています。
なお、これまで求められていた消耗水準の登録は廃止されました。

④ 賃金・給与・賞与

次の場合は、損金算入が認められませんので、留意 が必要です。

  • 従業員に対する給与、賃金等について支払いが行われていないまたは法が定める証憑書類を有していない費用
  • 従業員の給与、賞与について、付与条件および割合が労働契約書、労働協約等の規定で特定されていない費用
  • 従業員に支払うべき給与、賃金、手当で、年次税務確定申告書類の提出期限満了時に実際に支払われていない費用
  • 退職給付引当金(失業保険の加入対象外の企業は除く)、所得水準を超える社会保険料、健康保険料、労働組合費への拠出金

⑤ その他

広告宣伝費および販売促進費に関する法人税の計算において、損金算入可能費用の総額の15%を超える部分は損金算入が認められませんでしたが、14年11月26日付の国民議会の承認を経て、上限枠が撤廃されました。

Ⅲ おわりに

ベトナムは損金算入の条件が厳しく規定されている反面、法令では不明確な表現が多く存在します。
また、改正が頻繁に行われることから、実務上判断に困ることが多々あります。従って、関連証憑を適切に保管、管理することとともに、会計事務所等を有効に活用することが肝要です。


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