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情報センサー2016年8月・9月合併号 IFRS実務講座

新たなリース基準「リースの定義」

IFRSデスク 公認会計士 長瀬充明

Ⅰ はじめに

本誌2016年6月号(Vol.111)では、新たなリース基準であるIFRS第16号「リース」(以下、新基準)の全体像について解説しました。新基準では、リースとサービスを区別するために、使用権の支配の概念が明確にされています。また、取引がリースに該当するかサービスに該当するかどうかにより、オンバランスの有無という会計処理に大きな差異が生じることから、リースの定義に関して詳細なガイダンスが設けられています。そこで今回は、リースの定義に関して、設例を交えて解説を行います。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りします。

Ⅱ リースの定義

新基準では、リースを「資産を使用する権利を一定期間にわたり、対価と交換に移転する契約」と定義しています。契約がリースに該当するためには、「特定された資産」の「使用を支配する権利」を移転する契約でなければなりません。契約の中にはリースと明記されていなくともリースを含む契約があるため、企業は、契約開始時に、当該契約の中にリースが含まれているかどうかを次項以降で示す三つの要素に基づいて判定する必要があります(<図1>参照)。

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1. 特定された資産

契約がリースに該当するためには、契約に明記されているかを問わず、建物の1フロアなど物理的に区分可能な資産が特定されていなければなりません。ただし、資産が特定されている場合であっても、供給者(貸手)が「資産を取り替える実質的な権利」を有している場合には、顧客(借手)は「特定された資産の使用を支配する権利」を有していることにはなりません。当該権利の有無の判定に当たり、供給者が容易に又は合理的に権利行使が可能かどうか、また供給者が権利行使に伴い便益を得られるかどうかについて、契約開始時点の状況に基づいて検討を行う必要があります。

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2. 資産の使用から生じる経済的便益を得る権利

「特定された資産の使用を支配する権利」を有しているかどうかの判定に当たり、顧客が一定期間にわたり資産の使用から生じる経済的便益のほとんど全てを得る権利を有しているかどうかを検討します。リースは、原資産の使用権のみを移転する契約であるため、資産の所有から生じる経済的便益ではなく、資産の使用から直接的又は間接的に生じる便益を考慮する必要があります。当該便益を検討する際には、使用権の範囲にも留意が必要であり、例えば、資産の使用場所や使用量が限定されている場合には、当該権利の範囲内から生じる便益のみを考慮します。

3. 資産の使用を指図する権利

前記1及び2を満たす場合には、顧客が「資産の使用目的及び使用方法を指図する権利」を有しているかどうかの判定を行います。当該権利の有無を判定する際、顧客が資産の使用用途、使用時期、使用場所、使用量などを決定できるかどうか、また当該条件を変更できるかどうかを検討する必要があります。なお、顧客及び供給者のいずれも「資産の使用目的及び使用方法を指図する権利」を有していない場合には、資産の使用目的及び使用方法に関連する事項について、顧客による事前の関与の有無の検討が求められます。

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Ⅲ おわりに

前記で解説したリースの定義に係る三つの判定要素に相当する規定は、現行のIFRIC第4号「契約にリースが含まれているか否かの判断」にも存在しますが、新基準では支配の概念が取り入れられるとともに、より詳細なガイダンスが設けられています。リースとサービスの境界線を明らかにする上で、リースの定義の理解が必要不可欠であり、現行のIFRS又は日本基準から新基準への移行時には、契約の実態を踏まえたリースの定義の検討フローの構築が重要になると考えられます。


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