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最近公表された会計基準の公開草案の解説

2017年1月31日 PDF
カテゴリー 会計情報レポート

情報センサー2017年2月号 会計情報レポート

会計監理部
公認会計士 武澤玲子
公認会計士 西野恵子

品質管理本部 会計監理部において、会計処理および開示に関して相談を受ける業務、ならびに研修・セミナー講師を含む会計に関する当法人内外への情報提供などの業務に従事。主な著書(共著)に『減損会計の実務詳解Q&A』『連結財務諸表の会計実務(第2版)』(いずれも中央経済社)などがある。

Ⅰ  はじめに

平成28年12月22日に企業会計基準委員会(以下、ASBJ)から「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い(案)」等と「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」が公表されました。本稿では、これらの公開草案の概要を解説します。
なお、本稿における意見に係る部分は筆者らの私見であることをあらかじめ申し添えます。

Ⅱ 「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い(案)」等

「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い(案)」及び「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い(案)」(以下、18号改正公開草案)により、連結財務諸表作成における国内子会社又は国内関連会社(以下、国内子会社等)の会計処理についての追加の取扱いを提案しています。

1. 国内子会社等が指定国際会計基準又は修正国際基準を適用している場合の連結財務諸表作成における取扱い

国内子会社等が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合に、実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」(以下、実務対応報告第18号)及び実務対応報告第24号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」の対象範囲に含めることが提案されています。
平成18年の実務対応報告第18号の公表時には想定されていなかった前記の場合について見直しをしたものであり、当該国内子会社等が作成した連結財務諸表を、一定の修正項目を除き親会社の連結決算手続上利用できるものとすることが提案されています。

2. 適用時期

平成29年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用することを提案しています。ただし、本実務対応報告の公表日以後、適用できるとされています。
なお、適用初年度の前から国内子会社等が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合において、当該適用初年度に「連結決算手続における在外子会社等の会計処理の統一」又は「持分法適用関連会社の会計処理の統一」の当面の取扱いを適用するときは、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うことが提案されています。

3. 修正項目に関する検討

平成18年の実務対応報告第18号の公表から18号改正公開草案の検討時点までの間に、新規に公表又は改正された国際財務報告基準(IFRS)及び米国会計基準を対象に、修正項目として追加する項目の有無についてASBJにおいて検討が進められています。主な検討項目は、<表1>のとおりです。

表1 修正項目として追加の有無が検討されている主な項目

18号改正公開草案の最終基準化後、修正項目とする場合の実務対応の可否等の検討も踏まえて、早期の対応が図られる予定です。

Ⅲ 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)

「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」(以下、PFI取扱い案)は、平成23年に改正された民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号)(以下、PFI法)に基づき導入された公共施設等運営権制度を前提に、公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等を示したものです。

1. 公共施設等運営制度の概要

公共施設等運営権制度とは、道路、空港、水道等の公共施設、庁舎等の公用施設、教育文化施設等の公的施設など、利用料金の徴収を行う公共施設等の所有権を公共主体が有したままで、公共施設等運営権を民間事業者に設定する制度をいいます(<図1>参照)。

図1 公共施設等運営権利制度のイメージ

2. 公共施設等運営権に関する会計処理

公共施設等運営権に関する会計処理の主要な定めは、<表2>のとおりです。

表2 公共施設等運営権に関する会計処理

3. 更新投資に関する会計処理

運営権者が行う更新投資の会計処理は以下の要件を満たすか否かで異なります。

  • 更新投資の実施内容の大半が、管理者等が運営権者に課す義務に基づいていること
  • 公共施設等運営権取得時に、更新投資のうち資本的支出に該当する部分に関し、運営権設定期間にわたる支出の総額及び支出時期を合理的に見積ることができること

これらの要件をいずれも満たす場合には、当該更新投資の義務性を貸借対照表に表すために、公共施設等運営権取得時に、更新投資のうち資本的支出に該当する部分に関し、支出が見込まれる額の総額の現在価値を負債として計上し、同額を資産として計上することとされています。計上された資産の減価償却期間は、公共施設等運営権の運営権設定期間になります。
一方、上記要件のいずれか又は両方を満たさない場合には、更新投資を実施した時に、当該更新投資のうち資本的支出に該当する部分に関する支出額を資産として計上し、計上された資産は当該更新投資の経済的耐用年数(残存する運営権設定期間以下とする)で減価償却することが提案されています。

4. その他

実施契約において、運営権対価とは別に、各期事業年度の収益があらかじめ定められた基準値を上回ったときに運営権者から管理者等に一定の金銭を支払うプロフィットシェアリング条項が設けられる場合は、当該条項に基づき各期に算定された支出額を、当該期に費用として処理することが提案されています。

5. 適用時期

PFI取扱いは、公表日以後適用すること、PFI取扱い案を過去の期間の全てに遡及(そきゅう)適用することが提案されています。

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