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情報センサー2017年2月号 業種別シリーズ

世界に広がる多様なREIT

不動産セクター 米国公認会計士 四釡宏吏
不動産セクターの海外担当として海外不動産投資および国内外のREITに係る調査・上場支援業務を提供。世界のREIT制度・市場に関する講演、寄稿・執筆など多数あり。

Ⅰ はじめに

不動産投資市場におけるプラットホームとしてREIT市場・制度が世界中に広がっています。本稿では、REIT市場・制度の普及状況、その市場規模、セクターの多様化と新たなアセットタイプへの投資動向などについて解説します。なお、本稿の意見にわたる部分は、筆者の私見であることをお断りします。

Ⅱ REITとは

REITはReal Estate Investment Trusts(不動産投資信託)の略でリートと呼ばれています。REITは、①主に不動産に対する長期投資から所得を稼得し、②毎年ほとんどの所得を分配、③配当した不動産に関連する所得に対し所得税が課税されず、④多数の投資家により所有される法人、信託、契約などの仕組みです※1。つまりREITは、①の資産要件・所得要件、②の配当要件、④の分散所有・事業体要件など一定の要件(導管性要件)を満たすことにより、③の投資家とREITで二重課税されない不動産投資商品といえます。ただし、共通の枠組みは確立しているものの、各国での導管性要件※2に違いがあるため留意が必要です。

Ⅲ REIT市場・制度の普及状況

REITは1960年に初めて米国で制度化されましたが、90年代末時点ではREIT市場は7カ国にすぎませんでした。2000年以降、不動産市場のグローバル化を背景に、日本を含むアジアや欧州で、次々にREIT市場が創設されました。リーマンショック以降は新興国にも拡大し、近年は中東・アフリカのイスラム諸国で市場が開設しています(14年アラブ首長国連邦のドバイ、15年パキスタン、ケニア、16年サウジアラビア)。16年11月末現在、上場REIT市場は31カ国・地域で開設され、REIT制度がある国・地域を加えると42カ国・地域となります。さらに、REITに類似する上場ファンドが存在する国・地域と導入を検討している国・地域を全て合わせると、57に達します(<表1>参照)。

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Ⅳ REIT市場の規模

世界の上場REIT市場の株式時価総額は、円換算ベースで約168兆円、銘柄数は878社です(16年10月末現在)。最大の米国が約105兆円(世界全体の約63%)、日本が2位(11.5兆円)、そしてオーストラリア(10.1兆円)、フランス(7.7兆円)、英国(7.2兆円)、シンガポール(5.4兆円)と続いています。さらに9位南アフリカ共和国(2.8兆円)、10位メキシコ(1.5兆円)、11位タイ(1.3兆円)、14位マレーシア(1.1兆円)など、新興国でも1兆円を超える市場が出現しており、市場の厚みが増しています※3

Ⅴ セクターの多様化と新たなアセットタイプの登場

REITはセクター別に、①オフィス系②産業系③商業系④住宅系⑤ホテル系⑥へルスケア系⑦特殊系・その他に分類できます。複数のセクターに投資する場合は分散型(総合型)となります。従来は①から④の伝統的アセットによる「コアセクター」が主流を占めていましたが、リーマンショック以降は⑤から⑦の「ノンコアセクター」に対する投資が増えました。さらに、<表2>のとおり、日本ではまだ普及の進んでいない「新たなアセットタイプ」の特化型REITが、米国を中心に上場しています。

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なお、米国ではノンコア特化型(⑤~⑦)が時価総額ベースで全体の44%を占めると同時に、時価総額1兆円を超える上位27社中13社がノンコア特化型となっています。近年日本でもセクターの多様化が徐々に進む傍ら、へルスケア施設および旅館・温泉特化型J-REITなどが誕生しています。

Ⅵ おわりに

新たなアセットタイプREITでは、運営を伴うオペレーショナルアセットが投資対象となるため、オペレーター(運営事業者)が重要な役割を果たします。このことは不動産を保有する不動産会社などだけでなく、事業用オペレーショナルアセットを保有する一般事業会社にREITを組成する機会を広げることになります。さらに、海外不動産市場の成長を取り込むべく、海外REITへの投資、運用会社との提携・資本参加なども、今後増えることが想定されます。
日系企業が新たなアセットタイプへの投資または海外REITへの投資を検討する際、海外におけるさまざまな先行事例(各国REIT市場・制度の特徴、各ビジネス・収益モデル、リース契約形態など)を調査・研究することは、大変有用であると考えます。


  • ※1経済協力開発機構(OECD), Tax Treaty Issues Related to REITs Public discussion draft, October 30, 2007
  • ※2運用形態、法的主体、上場の要否、対象不動産の範囲、海外不動産の取得、開発活動、負債比率、所得税・譲渡益非課税課税の仕組みなど。
  • ※3各証券取引所およびブルームバーグのデータに基づき、筆者が数値を集計

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