刊行物
情報センサー2017年2月号 Tax update

新しい不服申立制度について

EY税理士法人 税理士 三浦恵美
大手税理士法人勤務を経て、2012年7月~16年7月まで東京国税不服審判所 国税審判官に任官し、多数の審査請求事件の調査・審理に従事。16年9月よりEY税理士法人に入所。

Ⅰ はじめに

平成26年6月に、公正性の向上と使いやすさ向上の観点から、「行政不服審査法」が改正されました。これに伴い「国税通則法」も改正され、平成28年4月1日以降にされる処分から、改正後の国税通則法が適用されています。従って、今後行われる税務調査の結果に基づいてなされる処分は、新しい不服申立制度が適用されることとなるため留意が必要です。本稿では、新しくなった不服申立制度について、その改正内容を解説します。改正前と改正後の手続きの流れは、<図1>のとおりです。

(下の図をクリックすると拡大します)

Ⅱ 主な改正内容

1. 不服申立期間の延長

(1) 不服申立期間とは

不服申立てを行う場合、その不服申立てをすることができる期間が定められています。これを「不服申立期間」といいます。
原則として、不服申立期間を過ぎて申立てをした場合は、不適法なものとして審理の対象とされず却下されます。

(2) 改正内容

改正前は、不服申立期間は原則として「処分があったことを知った日の翌日から2カ月以内」とされていましたが、「2カ月以内」が「3カ月以内」と改正され、不服申立期間が延長されました(通法77)。

2. 異議申立前置の廃止

(1) 異議申立前置とは

税務署長又は国税局長など(以下、原処分庁)が行った処分については、一定の場合を除き、原則として原処分庁に対する「異議申立て」を経た後でなければ、「審査請求」を行うことができませんでした。これを「異議申立前置」といいます。

(2) 改正内容

改正後は、納税者は選択により「異議申立て」を経ずに、直接、国税不服審判所長に対する「審査請求」を行うことができるようになりました(通法75)。
また、「異議申立て」については、その名称が「再調査の請求」に変更されました。

3. 閲覧請求書類の範囲の拡大と写しの交付

(1) 閲覧請求とは

審査請求人は担当審判官に対し、原処分庁から提出された書類その他の物件の閲覧を求めることができることとされており、この制度を「閲覧請求」といいます。

(2) 改正内容

改正前は、審査請求人は原処分庁から任意に提出された「処分の理由となった事実を証する書類等」のみが閲覧できることとされていました。改正後は、閲覧できる対象者に原処分庁なども含まれ、閲覧できる証拠資料等の範囲が拡大されて、担当審判官が職権により原処分庁に提出を求めた帳簿書類その他の物件も閲覧の対象となりました(通法97の3、通令35の2)。
また、改正前は、審査請求人が閲覧書類の写しの交付を請求することは認められていませんでしたが、改正により、審査請求人は閲覧書類の写しの交付を請求できることになりました。改正後の写しの交付は、用紙1枚につき10円の手数料で、また両面印刷の場合は片面を1枚として手数料を支払うことにより交付されることとなりました。なお、カメラを持参し、撮影することも認められるようになりました。

4. 「口頭意見陳述」における質問権の付与

(1) 口頭意見陳述とは

担当審判官は、審査請求人から申立てがあった場合には、口頭で意見を述べる機会を与えなければならないこととされており、この制度を「口頭意見陳述」といいます。

(2) 改正内容

改正前は、口頭意見陳述は審判所及び審査請求人の二者により実施され、また、その際に原処分庁に対して質問をすることはできませんでした。しかし、改正により、審判所及び審査請求人の他に原処分庁も招集されて三者が同席して実施されることとなり、審査請求人は、口頭意見陳述の際に原処分庁に直接質問をすることができるようになりました(通法95の2)。

Ⅲ おわりに

以上の改正点を踏まえて、納税者である審査請求人は、審査請求を行う際には顧問税理士等と連携し、十分に準備をした上で審査請求手続きを進めることが重要だと考えます。

(注)文中、法令条文等を、以下の通り略して表記している箇所があります。
   通法:国税通則法
   通令:国税通則法施行令


情報センサー 2017年2月号