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情報センサー2017年12月号 Trend watcher

水道事業へのコンセッション方式導入に関する論点

EYトランザクション・アドバイザリー・サービス(株)
インフラストラクチャー・アドバイザリー 渡邉知宏
総合建設会社を経て、2016年にEYに参画。企業財務、海外子会社管理業務などを経て、現在は再生可能エネルギー事業のプロジェクトファイナンス組成業務、国内コンセッションのアドバイザリー業務およびデューデリジェンス業務などに従事。

Ⅰ はじめに

日本におけるコンセッション方式の導入は、道路、空港など交通インフラを中心に拡大傾向にあります。本稿では、コンセッション方式導入の次期注力分野の一つとされる水道事業について、導入の背景、事業の特徴を中心に解説します。

Ⅱ 水道事業の現状と課題

日本における水道設備への投資は、<図1>の通り1990年代をピークに減少の一途をたどっています。近年、施設の老朽化、人口減少による水道料金収入の減少など、水道事業は事業構造上の課題を抱えており、国は民間のノウハウおよび資金力を活用できるコンセッション方式の水道事業への導入を推進しています。「PPP/PFI推進アクションプラン(平成28年5月18日民間資金等活用事業推進会議決定、平成29年6月9日改訂版決定)」では、水道事業分野におけるコンセッション事業の具体化について、上水道について18年度末までに6件、下水道について17年度末までに6件とする目標を設定しています。


図1 水道設備投資額の推移

Ⅲ 水道事業の特徴

水道事業は上水道(いわゆる「水道」)事業と下水道事業に大別されます。

1. 上水道事業

上水道事業は、①厚生労働省が所管②水道法に準拠③独立採算制という特徴があります。水道法上、水道事業を営む事業主体は厚生労働大臣の認可を受けた市町村に限定されますが、給水しようとする区域をその区域に含む市町村の同意を得た場合に限り、民間事業者など市町村以外が事業主体となることが可能です。

2. 下水道事業

下水道事業は、①国土交通省が所管②下水道法に準拠③施設整備に係る国庫および都道府県補助金対象という特徴があります。下水道法上、下水道事業を営む事業主体は市町村または都道府県(二つ以上の市町村が受益し、かつ、関係市町村のみでは設置することが困難であると認められる場合)に限定されていることから、民間事業者は下水道事業を運営する市町村など公共自治体と協力し、下水道事業の一部(事業の経営・運営など)を受託する方式を採用しています。

Ⅳ 上下水道事業コンセッションの特徴

1. 上水道事業

上水道事業におけるコンセッション方式のイメージは<図2>のとおりです。水道法上、民間事業者が事業主体となることが可能であり、地方公共団体による運営を完全に廃止し、料金・供給条件などを定める供給規程の設定を含む主体的な運営が可能となります。ただし、供給規程に定められた料金などの供給条件の変更に際しては厚生労働大臣の認可が必要です。また、上水道事業という生活に直結する公共サービスを民間委託することによるリスク管理の観点から、地方公共団体に認可を残し、引き続き事業主体としつつコンセッション方式の導入を可能とする改正水道法の審議が進んでいる点には、留意が必要です。


図2 上水道事業コンセッションのイメージ

2. 下水道事業

下水道事業におけるコンセッション方式のイメージは<図3>のとおりです。上水道事業と異なり、下水道法上、事業主体はあくまでも地方公共団体です。コンセッション方式を採用する場合、下水道法上定められる公共下水道の設置、改築、修繕、維持その他管理などの業務については民間事業者に委託することはできませんが、当該業務以外の一部または全部については委託が可能です。一方で、地方公共団体と民間事業者が共同して事業運営を行うため、両者の間で事業範囲、収益性などの合意形成に時間を要する可能性がある点に留意が必要です。


図3 下水道事業コンセッションのイメージ

Ⅴ 先行事案-浜松市公共下水道終末処理場(西遠処理区)運営事業-

静岡県浜松市が実施した下水道事業に係るコンセッション方式の導入については、17年3月にヴェオリア・ジャパン株式会社を代表企業とするコンソーシアムが優先交渉権者に選定され、18年4月からの事業開始に向けて、実施契約の締結作業が行われています。当該案件の特徴としては、①コンソーシアムが収受する料金は、下水道料金のうち管理者の定める一定割合とされていること②施設整備に国庫補助金が充当されることが挙げられます。上水道事業と異なり、下水道事業のコンセッション方式では公共自治体側の関与が大きくなる結果となっています。

Ⅵ 潜在案件

宮城県村田町では上水道、公共下水道、工業水道、農業集落排水の計4事業へのコンセッション方式などの導入可能性調査が、17年2月に開始されています。また、下水道事業では、神奈川県三浦市、山口県宇部市などでコンセッション方式の導入可能性調査が行われており、今後、前述の案件の実現が期待されます。

Ⅶ おわりに

水道事業のコンセッション方式の導入は黎明(れいめい)期であり、先行事例は「運営」部分に特化した民間委託という側面があります。将来的には運営部分のみならず、より包括的なコンセッション方式の導入が期待されますが、①管路の維持管理・修繕②料金体系の改訂に係るルールの制定③地方公共団体によるモニタリングなど関与の方法④法律改正によるコンセッション方式類型の多様化など、導入に向けての検討課題の解決が望まれます。


情報センサー 2017年12月号