情報センサー

デジタル監査の実現にむけたIT施策-監査インフラとしてのIT技術の展開-

2018年1月8日 PDF
カテゴリー EY Consulting

情報センサー2018年新年号 EY Advisory

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(株)
Risk Assurance 公認情報システム監査人
システム監査技術者 村尾 健司

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(株)シニアマネージャー。大手ERPベンダーでの勤務経験をもとに、ITツールとデータを活用した監査技法の調査・研究および実践を多数担当。当法人アシュアランス・イノベーション・ラボ メンバー。

Ⅰ デジタル監査実現のための四つのIT施策

現在、EYグローバルおよび新日本有限責任監査法人(以下、当法人)では、デジタル監査の実現、すなわちBig Data、AI、ロボット、ブロックチェーンなどの先端的なIT技術を活用して、企業をスピーディかつ正確に理解し、異常値の検出能力を向上させる監査の高度化の取り組みを進めています。それを実現するためのIT面での施策として①Analytics②Emerging technologies③Robotics④Centralizationに焦点を当てています(<図1>参照)。

図1 デジタル監査実現のための四つのIT施策

まず、①Analyticsでは、主要監査手続ごとに策定されたデータ分析の標準アプローチを実現するための各種の分析ツールを開発、展開しています。
②Emerging technologiesでは、AIなどの最先端技術を用いて監査の高度化を図ります。
①および②の充実を担保するためにはデータの抽出・加工・分析の効率化が求められるため、③と④が必要となります。③RoboticsではRPA(Robotic Process Automation)ツールとVBAなどの自動化技術を組み合わせ、手作業で行っていたデータ加工などの作業を自動化し、効率的かつ正確な作業を実現します。④Centralizationは、①から③の作業の中でデータ加工などの一元処理が可能な領域で、集中的に業務を行う組織および機能を設計して業務処理の一元化を図り、組織全体における効率性向上の実現を目的とします。

Ⅱ 有効性向上と効率性向上の不可分な関係

デジタル監査における最重要の目的が、表現の違いはあれど、「IT技術やデータ分析の活用により監査における理解・評価・判断の能力を高めることにある」とすることには大きな異論はないはずです。言い換えると「監査の有効性向上」が最重要の目的といえます。
前述の四つの施策の中で、「監査の有効性向上」に直結するのは①Analyticsと②Emerging Technologiesです。なぜ③Roboticsと④Centralizationが主要なIT施策として取り上げられているのか、その理由は有効性向上と効率性向上の不可分な関係にあります。
①および②で成果を上げるためには、多種多様で広範囲なデータの存在、さらにはデータ分析するに足りる品質のデータの存在が必要です。例えば①Analyticsでは、単年度ではなく複数年度の仕訳データが、さらに仕訳データに関係する各種マスターデータ、それらの変更履歴、仕訳データの上流となる取引(販売、購買など)データなどが必要となります。
しかし、これらのデータを抽出・加工・分析する作業は現場レベルで大きな負荷となっており、これらの負荷以上の成果を①Analyticsで上げ続けるのは困難です。①Analyticsを継続的に実行し成果を上げるためには、これらの負荷を軽減する施策が必須であり、その代表的な施策として③と④が重要となります(<図2>参照)。

図2 継続可能なAnalyticsの条件

Ⅲ Centralizationの具体的イメージ

①から③の詳細については本稿以外に解説を譲ることとして、ここではあまり語られていない④Centralizationについて解説します。デジタル監査における④Centralizationは大きく三つの具体的な施策に整理することができます。

1. 企業側の窓口の集中化

企業の各種システムから多種かつ大容量のデータを入手するために、企業側におけるデータ抽出業務の統一・集中化が期待されます。同一システムを利用している複数グループ企業のデータを特定部門にて一括で抽出、提供いただくのが典型例となります。
また、企業グループにおけるデータ品質の確保ないしデータの標準化を担当する部署がある場合には、密な協力が期待されます。

2. データ抽出におけるIT専門家の関与

企業側でのデータ抽出業務を支援するために、各種企業システムに関するIT専門家が多くの監査チームを幅広く支援する体制を整備しています。多種多様かつ大容量のデータを特定し、かつ効率よく抽出する作業には、実務上専門的なIT知識が要求されます。IT専門家が関与して企業側のIT担当者と協力することで、効率と品質を両立したデータの入手が可能となります。
当法人では一部の会計システムから効率よく大量データを抽出するツールの導入を支援していますが、これもこの施策の一環となります。

3. データ加工・分析の集中化

入手したデータの加工、例えば形式修正、データ変換、ファイル結合、項目マッピング、網羅性確認などのデータ関連作業を特定部署で一括して処理する体制を構築する施策となります。データ加工には専門のIT知識とITツールの利用が不可欠であり、効率よく正確に処理するためにも、加工の集中化は不可欠です。また、データ分析作業での定型分析の集中化も同様です。
これらは③Roboticsの技術を用いて自動化を図る施策とも重複する領域となります。

Ⅳ 企業とのIT面における協力体制の強化

これまでITに関する企業と監査法人との関係は、主に財務諸表監査に付随するIT評価(IT全般統制およびIT業務処理統制)と、仕訳テストなど一部のデータ分析手続に限定されていました。
しかし、前述のように、デジタル監査の展開のためには監査手続全般におけるデータの利用が必要であり、これまで以上のIT面での協力体制の構築が求められます(<図3>参照)。

図3 IT関連作業領域の拡張

【協力体制強化の例】

  • データ抽出の効率化・自動化
  • データ品質の確保
  • 安全なデータ授受方式の確立などセキュリティーの確保

IT技術の利用が特定領域での付随的な位置付けであったこれまでの監査に対し、デジタル監査におけるIT技術は、必要不可欠な監査インフラとしての側面の色合いを濃くしています。
監査インフラとしてのIT技術の展開に向け、企業側と監査法人側のより密な協力体制が求められます。

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