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情報センサー2018年12月号 Tax update

IoT税制の適用ポイント

EY税理士法人 税理士・公認会計士 矢嶋 学
1998年、太田昭和アーンストアンドヤング(現EY税理士法人)に入所。法人向けコンプライアンス業務のほか、組織再編及び事業承継コンサルティング、大規模法人を対象とした税務リスク・アドバイザリー業務等に従事。EY税理士法人入所以前は国税職員として相続税、法人税の調査経験を有する。

Ⅰ はじめに

生産性の向上を目指してデータの利活用を行う企業に対する税制上の後押しとして、平成30年度の税制改正において「革新的情報産業活用設備を取得した場合の特別償却又は特別控除」(以下、IoT税制)が創設されました。
本稿では、IoT税制の内容と適用に当たっての留意点を解説します。

Ⅱ 生産性向上特別措置法による計画認定

IoT税制の適用を受けるためには、生産性向上特別措置法に定める基準に従った「革新的データ産業活用計画」を作成し、主務大臣の認定を受ける必要があります。
当該革新的データ産業活用計画について要求される事項は次のとおりです。

1. 革新的データ産業活用の方法

革新的データ産業活用の方法が、<図1>の要件を満たしている必要があります。

(下の図をクリックすると拡大します)

2. セキュリティ対策

データの安全管理の措置に関して、革新的データ産業活用に関する指針に基づく対応が取られていることを「情報処理安全確保支援士」が担保していることが明確になっている必要があります

3. 生産性向上目標

革新的データ産業活用計画に基づく生産性向上の目標が、次の(1)及び(2)のいずれにも該当する見込みであると認められる必要があります。

(1) 労働生産性

設備を事業の用に供した年度の翌年度から3年間の労働生産性の伸び率の年平均が2%以上となること。


労働生産性

(2) 投資利益率

設備を事業の用に供した年度の翌年度から3年間の投資利益率の年平均が15%以上となること。


3年間の投資利益率の年平均

Ⅲ 税制上の特例

1. 適用対象法人

青色申告書を提出する法人で、生産性向上特別措置法第29条に規定する「認定革新的データ産業活用事業者」であるものとされています。なお、取得する資産の用途について一定の制限があるため、ソフトウエア業や情報処理サービス業、インターネット付随サービス業を営む法人は実質的に適用できないものと考えられます。

2. 適用期間

生産性向上特別措置法の施行の日(平成30年6月6日)から平成33年3月31日までの間に適用対象資産の取得等をし、これを事業の用に供した場合に本特例の適用があります。

3. 適用対象資産

(1) 対象資産

IoT税制の適用対象となる資産は、主務大臣に認定された革新的データ産業活用計画に記載された次の資産(以下、革新的情報産業活用設備)で、これらの取得価額の合計額が5,000万円以上のものに限られます。


適用対象資産

(2) 留意点

ここでいう特定ソフトウエアとは、例えば、これまで連携したことのない2種類以上の異なるデータを連携し、分析するために継続的かつ一体的に管理しつつ、連携、分析を行うもので、その分析に基づき、企業自身の事業活動に対する指示を継続的に行うソフトウエアとして認定革新的データ産業活用計画に位置付けられているものが該当します。
その他、ソフトウエアに関する留意点は次のとおりです。

  • 機械装置やパソコン等に組み込まれたソフトウエアでも対象となるため、ソフトウエアとして無形固定資産の勘定科目に計上されなければならないというものではありません。
  • ソフトウエアの取得等をするものとされているため、クラウドによる利用は認められないことになります。
  • IoT税制の対象となるソフトウエアから耐用年数省令別表第6の開発研究用減価償却資産に掲げるソフトウエアについては、除くこととされています。

また、機械及び装置、器具及び備品についても耐用年数省令別表第6の開発研究用減価償却資産に掲げるものは除くこととされています。

4. 特別償却

(1) 特別償却限度額

特別償却の適用を受ける場合の限度額は、その革新的情報産業活用設備の取得価額の30%相当額です。

(2) 留意点

  1. 所有権移転外リース取引により取得したものは、特別償却の適用を受けることはできません。ただし、下記5.の税額控除の対象とすることはできます。
  2. 特別償却不足額がある場合には、1年間の繰越しが可能です。
  3. 特別償却準備金の経理処理によって適用することも可能です。

5. 税額控除

(1) 税額控除限度額

① 原則

税額控除の限度額は、その革新的情報産業活用設備の取得価額の3%相当額です(ただし、調整前法人税額の15%相当額が上限)。

② 特例

その事業年度の次の算式で求めた割合が3%以上である場合には、税額控除限度額が5%相当額となります(ただし、調整前法人税額の20%相当額が上限)。


継続雇用者給与等支給額-継続雇用者比較給与等支給額/継続雇用者比較給与等支給額≧3%

(2) 留意点

中小企業者(適用除外事業者を除く)及び農業協同組合等以外のいわゆる大法人については、税額控除を適用しようとする事業年度において、次に掲げる要件のいずれにも該当しないときは、本件税額控除を適用することができません。

  1. 継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額を超えること
  2. 国内設備投資額がその法人の当期償却費総額の10%に相当する金額を超えること
  3. 対象事業年度の所得の金額がその前事業年度の所得の金額以下であること

  • 中小企業者等にあっては「ITコーディネーター」による確認でも適用可能

情報センサー 2018年12月号