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情報センサー2018年12月号 Digital Law

EUにおけるプラットフォーマーに対する 急速な規制強化について 
-EUの新規制案のポイント-

EY弁護士法人 弁護士 小木 惇
国内法律事務所を経て、2018年4月EY弁護士法人入所。会社法・M&Aのほか、データ保護規制についての助言も多く手掛ける。コンプライアンス・リスクマネジメントやコーポレートガバナンス、労働法にも造詣が深い。

Ⅰ はじめに

欧州委員会は、2018年4月26日、プラットフォーマーに対する新規則案を公表しました。
プラットフォーマーとは、デジタル広告やオンラインでの商品、サービスの提供など、第三者の事業のためにインターネット上の基盤(プラットフォーム)を提供するIT企業を指します。代表格として、GAFAと称されるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの4社が挙げられます。
欧州委員会によると、欧州連合(EU)における個人消費の約60%はプラットフォームを通じて行われていると推定されています。
欧州委員会の新規則案は、プラットフォーム運用上の透明性の向上、プラットフォーム利用者による意見表明システムの確立を通じて、寡占化が進むインターネット市場における公正な競争を確保することを目的としています。
GAFAに限らず、EU市場に向けてプラットフォームを展開する企業、及びかかるプラットフォームを利用する企業にも関連しますので、そのポイントを以下に紹介します。

Ⅱ 本規則案のポイント11点

プラットフォーマーに課せられる規制のポイントは、以下の11点です。

  1. 規制対象は、EU域内の消費者向けにプラットフォームを提供する企業です。
    本社所在地にかかわらず、EU内に所在する消費者に商品やサービスを提供する事業者にプラットフォームを提供する企業が対象となります。

  1. プラットフォームの利用条件は、曖昧なものではなく明確で、事業者が容易に利用可能なものでなければなりません。
    前記要件を満たさない利用条件は、無効とされます。

  1. プラットフォーマーは、利用条件を変更する場合、事前に事業者に通知しなければなりません。
    この通知は、「少なくとも15日」以上の「合理的かつ相応な期間」より前にしなければなりません。事前通知を怠った場合、変更は無効とされます。利用条件変更の負担が大きくなることから、プラットフォーマーは、本規則案の施行前には利用条件が前記②を満たすよう準備しておくことが重要となります。

  1. プラットフォーマーはプラットフォームの提供を停止・中止する場合、理由を事前に事業者に通知しなければなりません。
    例えば、特定の事業者の商品やサービスを検索対象から除外する場合、プラットフォーマーは除外する旨を決定した後、遅滞なく、書面でその理由を事業者に通知しなければなりません。

  1. プラットフォーマーは、検索ランキングなどで商品やサービスなどの順位付けを行う場合、利用条件にその基準を開示しなければなりません。
    プラットフォーマーが自らに有利な商品やサービスを優遇することを防ぐ趣旨です。

  1. プラットフォーマーがプラットフォームを通じて自身の商品やサービスを提供し、かつ他の商品等と異なる有利な取扱いをする場合、その取扱いの差異を利用条件に明記しなければなりません。

  1. プラットフォーマーは自らのデータ・ポリシーを決定し、明示する必要があります。
    事業者またはその顧客からどのような情報を収集するか、事業者はどの情報にどのような条件でアクセスできるか、事業者はプラットフォーマーが集計した情報にアクセスできるか、できるとすればどのような条件で可能かなどを通知しなければなりません。

  1. 事業者に対し、自らが提供するプラットフォーム以外の方法による商品、サービスの提供条件を制限する場合、制限する理由を示さなければいけません。前記理由は、利用条件に明記するとともに、容易に閲覧可能な状態で公表しなければなりません。

  1. プラットフォームを利用する事業者の苦情を受け付ける社内システムを用意しなければなりません。この受付システムは、事業者が容易に利用できるものでなければなりません。また、プラットフォーマーは、この受付システムの機能や有効性に関する報告書(苦情件数、苦情内容、苦情処理期間などの情報を含む)を毎年作成し、公表しなければなりません。ただし、本規制の対象は50人以上を雇用し、年間売上高が1,000万ユーロ(約13億円)を超える規模のプラットフォーマーに限られます。

  1. プラットフォーマーは事業者との間で紛争が生じた場合、調停に応じなければならず、そのための調停人を利用条件で特定しなければなりません。
    利用しやすく、公平かつ有効な調停を可能にするため、調停人となる者には一定の基準が定められています。

  1. 業界団体単位でプラットフォーマーを提訴できる団体訴訟制度が導入されます。

Ⅲ 今後の見通し

本規則案は、欧州議会と欧州連合理事会の承認を経て成立します。本規則が成立した場合、18年5月に施行された一般データ保護規則(GDPR)と同様、各加盟国の個別の立法を待たず、規則の内容が直接適用されることとなります。欧州委員会によれば、施行日は19年の第3四半期頃を予定しているとのことです。プラットフォーマーは施行日までに前記の規制内容に適用できるよう体制を構築する必要があります。
以上のほか、欧州委員会はプラットフォームを利用した偽ニュースへの法規制の可能性も提言しています。また、著作権の分野では、18年9月12日、欧州議会が、インターネット上の著作権の保護を強化するEU著作権指令の修正指令案を承認しました。同修正案では、例えば、ユーザーによるプラットフォーム上の著作権侵害行為について、プラットフォーマーが責任を負うことが定められています。
このように、EUでは、プラットフォーマーに対する規制の強化が急速に進んでいます。規制の強化は、取引の公正を促進する反面、プラットフォームにかかるコストの増加、最終的には、消費者へのコストの転嫁や利便性の阻害につながる可能性もあることから、欧州委員会及びプラットフォーマーの対応を注意深く見守る必要があります。

(参考文献)
"Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the council on promoting fairness and transparency for business users of online intermediation services"( COM(2018)238)(ec.europa.eu/transparency/regdoc/rep/1/2018/EN/COM-2018-238-F1-EN-MAIN-PART-1.PDF

"A proposed EU regulation for online platform-tobusiness relationships" Kiran S. Desai (August 2018,EY law Alert, EU competition law)