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情報センサー2019年新年号 会計情報レポート

税効果会計に係る会計基準の一部改正による注記事項の解説

会計監理部 公認会計士 松下 洋
品質管理本部 会計監理部において、会計処理および開示に関して相談を受ける業務、ならびに研修・セミナー講師を含む会計に関する当法人内外への情報提供などの業務に従事するとともに、国内事業会社の監査業務に従事。主な著書(共著)に『会社法決算書の読み方・作り方(第12版)』(中央経済社)がある。

Ⅰ はじめに

平成30年2月16日に、企業会計基準委員会(以下、ASBJ)から、企業会計基準第28号「『税効果会計に関する会計基準』の一部改正」(以下、税効果会計基準一部改正)及び企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下、税効果適用指針)等(以下、合わせて税効果会計基準一部改正等)が公表されました。税効果会計基準一部改正等の詳細については、本誌 平成30年3月号(Vol.130)をご参照ください。
税効果会計基準一部改正等は平成30年4月1日以降開始する事業年度の期首から原則適用されていますが、本改正により追加される注記事項について原則適用を選択した場合に初めて開示対象となるのは平成31年3月期の年度末からであるため、本稿では、注記事項について詳しく解説します。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りします。

Ⅱ 税効果会計基準一部改正で追加される注記事項

1. 評価性引当額の内訳に関する情報(税効果会計基準一部改正第4項)

(1) 評価性引当額の内訳に係る数値情報

繰延税金資産の発生原因別の主な内訳(以下、発生原因別の注記)として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるときは、これまで発生原因別の注記に示されていた評価性引当額の合計額を以下に区分して記載することとされました。

  • 税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額
  • 将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額

なお、将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額の区分には、繰越外国税額控除や繰越可能な租税特別措置法上の法人税額の特別控除等を含めることとされています。また、子会社に対する投資に係る連結財務諸表固有の将来減算一時差異について税効果適用指針第22項(1)を満たさないことにより繰延税金資産を計上していない場合や、組織再編に伴い受け取った子会社株式又は関連会社株式に係る将来減算一時差異のうち、当該株式の受取時に生じていたものについて税効果適用指針第8項(1)ただし書きにより繰延税金資産を計上していない場合には、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産が存在しないため、評価性引当額も存在しないと考えられ、これらについては評価性引当額の注記の対象となる範囲には含まれないものと考えられます(税効果会計基準一部改正第32項)。

(2) 評価性引当額の内訳に関する定性的情報

評価性引当額に重要な変動が生じている場合には、当該変動の主な内容を記載することとされました。なお、当該変動の主な内容にどのような事項を記載するかについては特段定められていませんが、主として税負担率の分析に資する情報であるとの考え方を参考にして、企業の状況に応じて適切に判断することが考えられます(税効果会計基準一部改正第34項、第35項)。(<図1>参照)

(下の図をクリックすると拡大します)


2. 税務上の繰越欠損金に関する情報(税効果会計基準一部改正第5項)

(1) 税務上の繰越欠損金に関する繰越期限別の数値情報

発生原因別の主な内訳として税務上の繰越欠損金を記載している場合で、当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるときは、繰越期限別に以下の事項を記載するものとされています。

  • 税務上の繰越欠損金の額に納税主体ごとの法定実効税率を乗じた額
  • 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)
  • 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の額

税務上の繰越欠損金に関する数値情報を繰越期限別に記載する場合の年度の区切り方については、株価予想を行う財務諸表利用者の観点を踏まえ、5年以内に繰越期限が到来する場合には比較的短い年度に区切ることが考えられます。一方で、企業によって税務上の繰越欠損金の発生状況はさまざまであり、在外子会社の税制に応じて繰越期間の年数や有無もさまざまであると考えられることから、企業が有している税務上の繰越欠損金の状況に応じて適切に設定することが考えられるため、特段定められていません(税効果会計基準一部改正第42項)。

(2) 税務上の繰越欠損金に関する定性的な情報

税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している場合、当該繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由の記載が求められます。回収可能と判断した主な理由については、例示されていませんが、財務諸表利用者による税務上の繰越欠損金の回収可能性に関する不確実性の評価に資するように、企業の状況に応じて適切に判断することが考えられます(税効果会計基準一部改正第44項、46項)。 (<表1>参照)

(下の図をクリックすると拡大します)


3. 適用初年度の比較情報に関する経過措置

注記事項の追加は、表示方法の変更となりますが、経過措置として、評価性引当額の合計額を除き、適用初年度の比較情報を記載しないことができるとされています(税効果会計基準一部改正第7項)。

4. 留意事項

連結財務諸表を作成している場合には、個別財務諸表においては前記のうち、1. (1)のみを追加することとされていますが、本改正において追加される注記事項を作成するためには在外子会社も含めた子会社からの情報収集体制の構築も含めた対応が必要となると考えられます。また、会社計算規則では、前記の注記事項の追加は求められていませんが、遅くとも有価証券報告書の作成段階までに上記の情報収集を完了しておく必要がある点に留意が必要です。


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