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情報センサー2019年2月号 会計情報レポート

税効果会計の実務ポイント解説シリーズ
第2回 資産除去債務に関する税効果の実務論点

会計監理部 公認会計士 横井貴徳
品質管理本部 会計監理部において、会計処理および開示に関して相談を受ける業務、ならびに研修・セミナー講師を含む会計に関する当法人内外への情報提供などの業務に従事。主な著書(共著)に『連結手続における未実現利益・取引消去の実務』(中央経済社)がある。

Ⅰ はじめに

第2回の本稿では、資産除去債務に関する税効果の実務論点を取り上げます。負債に計上される「資産除去債務」及び資産に計上される「資産除去債務に対応する除去費用」に関して、それぞれの税効果会計適用上の取扱いや、繰延税金資産の回収可能性が重要な論点となります。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りします。

Ⅱ 資産除去債務に関する税効果の実務論点

1. 資産除去債務に係る税効果会計の取扱い

負債に計上される資産除去債務は将来減算一時差異に該当し、資産に計上される資産除去債務に対応する除去費用は将来加算一時差異に該当します。それぞれが税効果会計の対象となり、このうち将来加算一時差異については、原則として繰延税金負債を計上することとなります。一方、将来減算一時差異については、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下、回収可能性適用指針)に従い、繰延税金資産の回収可能性を検討し、回収可能と認められる部分についてのみ、繰延税金資産を計上することとなります(企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下、税効果適用指針)第8項(1))。

2. 資産除去債務に関連して計上された繰延税金資産の回収可能性

(1) 「将来解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異」の取扱いの可否

資産除去債務(負債)に係る将来減算一時差異の解消年度は将来の除去費用の支出時となりますが、「将来解消年度が長期にわたるものの、企業が継続する限り、長期にわたるが将来解消され、将来の税金負担額を軽減する効果を有するもの」として、回収可能性適用指針第35項における「解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱い」の定めを用いることができるかどうかが論点となります。
この点に関して、資産除去債務に係る将来減算一時差異は除去費用の支出時に一時に解消されるものです。回収可能性適用指針第35項における退職給付引当金や建物の減価償却超過額のように長期にわたり解消される将来減算一時差異とは解消のパターンが異なるものであるため、回収可能性適用指針第35項の定めを用いることはできないと考えることが適当であり、税効果適用指針及び回収可能性適用指針の原則に従い、企業の分類ごとの取扱いは以下(2)のようになると考えられます。

(2) 各分類における繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い

① (分類2)の会社の場合

回収可能性適用指針の企業の分類が(分類2)の会社の場合には、当該一時差異がスケジューリング可能と判断されるか否かが重要な論点となります。資産除去債務(将来減算一時差異)に対応する繰延税金資産について、処分に係る決議等が行われていない場合でも、支出時期(除去時期)を合理的に見積ることにより金額が算定されているため、回収可能性適用指針第3項(5)②に定められる将来の一定の行為の実施に係る「実施計画」があると判断されるものと考えられます。従って、当該将来減算一時差異はスケジューリング可能と考えることができ、回収可能性適用指針の企業の分類が(分類2)の会社の場合には、当該一時差異に関する繰延税金資産に回収可能性があると判断されます。

② (分類3)以下の会社の場合

A 収益力に基づく課税所得

企業の分類が(分類3)以下の会社については、資産除去債務見合いの将来減算一時差異に関して、将来の課税所得によって回収されると判断されれば、繰延税金資産が計上されます。将来の課税所得の見積額による回収可能性を判断する場合、(分類3)の場合にはおおむね5年を限度とし、(分類4)の場合には翌年1年間の課税所得のみを見積ることになります。なお、(分類5)の会社について、収益力に基づく将来の課税所得の見積りにより回収可能性を判断することができない点は、他の将来減算一時差異の回収可能性の判断の際と同様です。

B スケジューリングされた将来加算一時差異との相殺の取扱い

資産除去債務に対応する除去費用(将来加算一時差異)は、減価償却により解消されていくため、回収可能性適用指針第11項の手続の中で、それぞれの解消見込年度において対応する将来減算一時差異のスケジューリング額(将来減算一時差異の解消見込年度及び税務上の欠損金の繰越期間での解消予定額)がある場合には、当該対応する将来減算一時差異に関して、繰延税金資産が計上されることになります。また、回収可能性適用指針第11項の相殺の手続においては、回収可能性適用指針で定められる企業の分類の影響がないと考えられます。すなわち、将来減算一時差異と将来加算一時差異の相殺を見込む期間は、企業分類による課税所得の見積期間と整合させる必要はなく、例えば、(分類5)の企業であったとしても、スケジューリングされた将来加算一時差異と相殺させることで、将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性があると判断されます。

各分類における繰延税金資産の回収可能性に関する取扱いを示すと<表1>のようになります。

(下の図をクリックすると拡大します)