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情報センサー2019年3月号 JBS

米国企業の取締役会における役員構成のトレンド

シアトル駐在員 公認会計士・米国ワシントン州会計士 鈴木拓也
日本でIPO関連業務や、IT企業および不動産業等の幅広い業種の監査業務に従事した後、2015年7月より米国EYシアトル事務所にシニアマネージャーとして駐在。主に製造業を中心とした日系企業および現地企業の監査業務に従事している。

Ⅰ はじめに

日本においても、取締役会のガバナンス構造に関する議論が高まってきています。本稿では、米国企業の取締役会における役員構成(<図1>参照)の変遷について紹介します。


図1 取締役会の構成と筆頭取締役の位置付け

Ⅱ 2000年以降の独立取締役の増加

過去20年間で、米国企業の取締役会における役員構成は劇的に進化しました。2000年には筆頭取締役(Lead Director)※1あるいは他の独立取締役が取締役会議長を務めるS&P1500登録企業はわずか10%でしたが、現在では89%に上昇しています。この変化は、取締役会議長と代表取締役との分断傾向だけでなく、独立取締役の増加傾向とも一致しています。
現在、S&P1500登録企業の60%が代表取締役と異なる取締役会議長を任命しており、これは2000年時点での27%から倍以上に増加しています。われわれがS&P1500登録企業を調査した結果、独立取締役を含む取締役会のさまざまな役員構成がある中で、独立取締役会議長を有する形態が2000年以降最も急速に増えていることが判明しました(<図2>参照)。


図2 取締役会議長の変化(S&P1500登録企業)

Ⅲ 独立取締役会議長のトレンド

企業のディスクロージャー資料によれば、どのような人物が独立取締役会議長として最も適切かというベストプラクティスは企業によって異なり、なぜその役員構成がその企業にとってより効果的に機能するかも企業ごとに異なります。また、ベストプラクティスは企業固有の状況および取締役会のダイナミズムに合わせて変化するものです。同時に、投資家からの視点も変化します。筆頭取締役ではない独立取締役会議長を代替できる機関構造は存在しないという意見の投資家もいる一方、その責任が明確に定義されており強固なものであれば、筆頭取締役が議長を兼ねることで十分だという意見の投資家も存在します。
このような投資家により異なる考え方は、変化し続ける独立取締役会議長の機関構造に反映されています。全体として大型株、中型株、小型株で構成されるS&P1500登録企業が独立取締役会議長を選任するケースは増加傾向にありますが、大型株のみで構成されるS&P500登録企業は、引き続き筆頭取締役を取締役会議長として選任しているケースが圧倒的に多い状況です(<図3>参照)。


図3 独立取締役会リーダーシップ構造

取締役会は、年次での自己評価プロセスや役員の交代のタイミングを、企業特有の環境を踏まえた適切な取締役会の役員構成となっているかどうかを再検討する機会として活用すべきです。

Ⅳ 独立取締役会議長の増加と独立取締役の増加との類似性

独立取締役会議長の増加は、同時に、独立取締役の著しい増加というもう一つのガバナンス構造の変化と相まって生じています。2000年においては、S&P1500登録企業の65%の取締役が独立取締役と考えられたのに対し、18年時点では83%に上昇しています。
今日のS&P1500登録企業の取締役会では、社内取締役はわずか1名か2名であり、取締役会の過半数が独立取締役であることを求める上場基準を上回る水準となっています。これは取締役会の過半数が独立取締役であることが要求されない子会社等の被支配企業においても同様で、大体がこの基準を満たしているかあるいはそれを上回る状態です。

Ⅴ おわりに

企業にとってベストなガバナンス構造は千差万別です。また、米国と日本では事業環境、文化なども大きく異なります。特に、グローバル化がさらに進み、環境の変化が著しい今日の環境においては、そのベストプラクティスも変遷していくものと考えます。米国での近年での実例を参考にしながら、ガバナンス構造について再考する一つのきっかけになれば幸いです。

(注)本稿はEY Center for Board Mattersに掲載された「Today's independent board leadership landscape」※2を基に作成しています。



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