刊行物
情報センサー2019年8月・9月合併号 EY Advisory

EYが描くポストCASE時代の"Future of Mobility"

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(株)
Strategic Impact Unit
Augmented Intelligence & Innovation リーダー 園田展人
大手メーカー、シンクタンクを経て、現職。大手企業に対して、「デジタル戦略策定」「新規事業テーマ創造・開発」「技術戦略・イノベーション」「AI/IoT導入」「CVC設立・運営」などの支援を手掛ける。技術革新と社会課題から生まれる産業構造の変化を見据え、新規事業を創出・開発することに一貫して関心を持つ。また、政府機関に対して科学技術政策・産業政策の提言を行っている。主な著書に『モビリティーの未来2019-2028』『人工知能の未来2019-2023』『人工知能 世界のテクノロジー企業2019』(いずれも日経BP)などがある。EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(株) アソシエートパートナー。

Ⅰ モビリティーの未来像

自動車業界は今、変革期の真っ只中にあります。この変化の牽(けん)引役と目される中核技術はCASE、すなわち「コネクテッド(Connected)」「自動運転(Automated)」「シェア&サービス(Share & Service)」「電動化(Electric)」です。今後提出されるモビリティーのコンセプトがどんなものであれ、CASEに基づいて展開されるのは間違いないでしょう。また、各国の人口変動の見通しも外れにくく、未来予測をする上で、重要な指標です。
EYは、これら指標と合わせ、社会的、経済的、政治的トレンド、先端技術の開発状況を幅広く調査し、シーズとニーズの両面から、モビリティーの未来像について自主的な研究を続けてきました。その研究成果でもある書籍『モビリティーの未来2019-2028』では、ポストCASE時代にどんなモビリティーが登場するのか、それぞれがどんな社会を形作るのかを具体的に描いています。
同書で紹介している20種類のモビリティーの未来像は、大きく五つのカテゴリーに分けることができます(<表1>参照)。

(下の図をクリックすると拡大します)

1. 非常時への対応

自動運転モードの車内で、ユーザーは正面を向いて座っていなかったり、立っていたりする可能性すらあります。従って、現在のクルマ以上に将来のモビリティーは緊急回避性能に優れ、車内でユーザーがどんな姿勢を取っていても安全が確保されるとともに、一定の故障を自己修復できる性能が求められます。「①自己修復できるモビリティー」「⑤どんな姿勢でいても安全なモビリティー」「⑫飛び出し時に緊急回避できるモビリティー」は、このカテゴリーに属します。

2. 車内で過ごす時間を充実させる

自動運転によりモビリティーのサービス化が進むと、車内で映像やゲームを楽しむユーザーの増加が見込まれます。そうしたユーザーのために必須なのが、乗り物酔いの防止技術、ユーザーの嗜好(しこう)や心情を理解して各個人に適したコンテンツをリコメンドする機能、車内の壁や天井の全面をディスプレイ化する技術などです。「②乗り物酔いしないモビリティー」「⑨人の嗜好や心情を理解するモビリティー」「⑩周囲の風景を自在に表示できるモビリティー」「 ⑲パーソナル空間生成モビリティー」は、このカテゴリーに入ります。

3. パーソナル化

ユーザーそれぞれの身体的状況、健康状態に合わせたモビリティーのカテゴリーです。「⑥自律走行パーソナルモビリティー」や「⑦脳波で制御するパーソナルモビリティー」「⑮パーソナライズドマルチモーダル連携モビリティー」「⑱乗員ごとに最適化された気温コントロール自在モビリティー」が、このカテゴリーに分類されます。

4. フレキシブル化

目的に応じて車両や車内が変化し、一つの車体でさまざまな要求に応えるモビリティーのカテゴリーです。「④伸縮可能なモビリティー」「⑬車室空間が変形可能なモビリティー」「⑭着せ替え可能なモビリティー」が、このカテゴリーに含まれます。

5. モビリティー概念の拡張

人々が共有して持っている「クルマ」のイメージの枠を越えるモビリティーのカテゴリーです。「③地域電力を担うモビリティー」は地域のエネルギー供給、「⑧陸海空を自在に移動できるモビリティー」は陸上に限定されない移動、「⑪廃棄物系バイオマスで動くモビリティー」は廃棄物処理、「⑯交通インフラ自動修復モビリティー」はインフラの維持・修復、「⑰コミュニティーを形成するモビリティー」は新たな人間関係の構築、そして「⑳ラストワンマイル配送モビリティー」は従来人間が担当していた個別配送を担うという点で、従来の「クルマ」の概念の外側に位置付けられます。

Ⅱ おわりに

近年、国際的な展示会に新車やコンセプトカーを出品する企業の顔ぶれが大幅に多様化しつつあります。完成車メーカーのみならず、自動車部品メーカー、電機メーカー、スタートアップなど、自動車業界に参入するプレーヤーは増える一方です。それとともに、モビリティーそのものの種類も多様化しつつあります。その先にどんなビジネスの可能性が広がっているのでしょうか。新たなモビリティービジネスの構築に『モビリティーの未来2019-2028』が役立つに違いありません。


情報センサー 2019年8月・9月合併号