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IFRS第16号「リース」適用による会計処理

2019年9月30日 PDF
カテゴリー IFRS実務講座

情報センサー2019年10月号 IFRS実務講座

IFRSデスク 公認会計士 竹下 泰俊

当法人入所後、主として医薬品、化学品等の製造業、サービス業などの会計監査に携わる。2017年よりIFRSデスクに所属し、製造業などのIFRS導入支援業務、研修業務、執筆活動などに従事している。主な著書(共著)に『国際会計の実務 International GAAP 2019』(第一法規)がある。

「国際会計の実務 International GAAP」シリーズが4年ぶりにリニューアルされ、『国際会計の実務 International GAAP 2019(上巻・中巻・下巻)』と『国際金融・保険会計の実務International GAAP 2019』が刊行されました。そこで、4回にわたって、2015年版からアップデートされている論点の一部を紹介します。
第4回となる今号では、借手のリースの会計処理について取り上げます。3月決算企業では第1四半期から新基準を適用し、期首において使用権資産とリース負債のオンバランス金額が確定されています。しかし、オンバランス金額は固定されるわけではなく、また、通常とは異なる事象によっても変動します。使用権資産の事後変動は減損が考えられ、リース負債については、リース負債の見直しや条件変更といった負債の再測定が考えられます。本稿では、リース負債の再測定について設例を用いながら解説します。

Ⅰ はじめに

IFRS第16号「リース」(以下、IFRS16号)が2019年1月1日以降開始する事業年度から適用されています。従来オペレーティング・リースとしてオフバランスされていたリースについても、IFRS16号適用によって使用権資産、リース負債がオンバランスされることになりました。当初認識・測定フェーズでは、リースに該当するか否か、リース期間及びリース負債の測定に使用する割引率が重要な検討ポイントでした。本稿では、借手の事後の会計処理の中でリース負債に焦点を当てて解説します。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りします。

Ⅱ リース負債にかかる事後の会計処理

リースの開始日後において、リース負債に係る利息費用を反映するように帳簿価額を増額し、支払われたリース料を反映するように帳簿価額を減額します。リース料やリース期間は常に不変ではなく、また、リースの条件が変更されることは実務ではよくあるケースですので、以下ではリース負債の見直しとリースの条件変更について記載します。リース負債の見直しとリースの条件変更はいずれも当初のリース負債を再測定することにつながりますが、前者はリースの契約条件は変更しない見積り等の変更から生じ、後者はリースの契約条件の変更から生じます。

1. リース負債の見直し

借手は、リースの開始日後において、リース料の変更を反映するようにリース負債を再測定し、リース負債の再測定に係る金額を使用権資産に対して修正します。ただし、使用権資産の帳簿価額がゼロまで減額されており、さらにリース負債の測定における減額部分がある場合には、借手は再測定の残額を純損益で認識します。
リース負債金額が変わるような事象の例として以下が考えられます。

  • 既存のリース契約のリース料が変更(例えば指数又はレートの変動による)されたことによる総支払リース料の変動
  • 延長オプションの行使や解約オプションの不行使にかかる評価を見直したことによってリース期間を変更したことによる総支払リース料の変動
  • 合理的に確実な場合にリース負債に含まれる購入オプションの行使にかかる評価を見直したことによる総支払リース料の変動

なお、IFRS16号20項によると、オプション評価の見直しについては重大な事象又は状況の重大な変化が発生した時のみに行われるとされていますが、この定めは企業のコスト負担を懸念したためであり、実務上この見直しのタイミングをどのように捉えるかは、各社の実情に合わせて検討する必要があります。

2. リースの条件変更

リースの条件変更とは、リースの当初の契約条件の一部ではなかったリースの範囲又はリースの対価の変更(例えば、一つもしくは複数の原資産を使用する権利の追加もしくは解約、又は契約上のリース期間の延長又は短縮)をいいます。
下記の両方を満たす場合には、リースの条件変更を独立したリースとして会計処理します。

  • その条件変更が、一つ又は複数の原資産を使用する権利を追加することによって、リースの範囲を増大させている。
  • 当該リースの対価が、範囲の増大分に対する独立価格及びその特定の契約の状況を反映するための当該独立価格の適切な修正に見合った金額だけ増加している。

リースの条件変更のうち独立したリースとして会計処理されないものについては、リースの条件変更の発効日(新規契約の発効日ではなく、両当事者がリースの条件変更に合意した日)において、借手は次のことを行います。

(a) 条件変更後の契約における対価を配分する。
(b) 条件変更後のリースのリース期間を決定する。
(c) 改訂後のリース料を改訂後の割引率で割り引くことによって、リース負債を再測定する。

(<設例>参照)

設例:リースの条件変更にかかる会計処理

Ⅲ おわりに

各リース契約にかかる負債を算定した後、その負債がどのように変動するかを理解した上で、事象が発生した時に適切に会計処理することが求められます。特に通常の変動(リース料の支払いと金利の認識)や、契約の相手方が関連する契約変更と異なり、前述Ⅱ1.のリース負債の見直しについては、会社の見積り変更に該当するため、適時適切に事象をキャッチアップするためのプロセスを構築することも必要になります。

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