刊行物
情報センサー2019年12月号 会計情報レポート

税効果会計の実務ポイント解説シリーズ
第6回 連結納税・グループ法人税制

公認会計士 西野恵子
品質管理本部 会計監理部において、会計処理および開示に関して相談を受ける業務、ならびに研修・セミナー講師を含む会計に関する当法人内外への情報提供などの業務に従事後、監査事業部において、製造業の上場企業を中心に監査業務に従事。主な著書(共著)に『こんなときどうする? 減損会計の実務詳解Q&A』『連結財務諸表の会計実務<第2版>』(いずれも中央経済社)などがある。

Ⅰ はじめに

税効果会計の実務ポイントについて、6回にわたり解説してきましたが、最終回となる本稿では、連結納税制度及びグループ法人税制を適用した場合の税効果会計上の取扱いにおける実務上の論点を解説します。
なお、本稿における意見に係る部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添えます。

Ⅱ 子会社の個別の分類が連結の分類を上回る場合の取扱い

連結納税制度を適用している会社において、連結納税主体に係る「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下、適用指針)の企業の分類(以下、分類)と連結納税会社の個別財務諸表上の分類が異なっている場合があります。
例えば、連結納税主体に係る分類が(分類4)である一方、一部の連結納税会社の個別財務諸表上の分類が(分類3)となっており、当該連結納税会社の個別財務諸表において複数年度の将来課税所得より回収可能と見込まれる部分に繰延税金資産を計上しているケースが考えられます。
この一部の連結納税会社の個別財務諸表において計上された繰延税金資産に関して、連結納税主体の分類が(分類4)であることをもって、連結財務諸表上で修正が必要となるのかについて説明します。

1. 将来減算一時差異に係る繰延税金資産の取扱い

将来減算一時差異に係る繰延税金資産の取扱いをまとめると<表1>のようになります。

(下の図をクリックすると拡大します)


(1) 連結納税会社の個別財務諸表における将来減算一時差異に係る繰延税金資産(法人税部分)の回収可能性の判断

連結納税主体の分類が連結納税会社の分類よりも上位にあるときは、連結納税主体の分類に応じた判断を行います。一方、連結納税会社の分類が上位にあるときには、まず自己の個別所得見積額に基づいて判断することになるため、当該連結納税会社の分類に応じて判断します(「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」(以下、連結納税取扱いその2)Q3)。

(2) 連結納税主体を含む連結財務諸表における法人税に係る繰延税金資産の回収可能性の判断

連結納税取扱いその2 Q4では、制度の趣旨に鑑み、単一主体概念に基づくものとされています。そのため、個別財務諸表における計上額を単に合計するのではなく、連結納税主体としての回収可能額が個別財務諸表の回収可能合計額を下回る場合には、その差額を連結調整として減額する必要があります。この場合において、分類の相違による差額につき、特に調整処理を行わないとする定めはなく、連結納税取扱いその2Q4に定められている原則どおり、一定の取崩し処理が必要と考えられます。

2. 連結財務諸表上で修正の要否

Ⅱ 1. で説明の通り、将来減算一時差異に係る繰延税金資産(法人税部分)について、連結納税主体と連結納税会社の分類の違いにより、各連結納税会社の個別財務諸表上、連結納税主体における回収可能見込額を超えて計上されている場合には、連結財務諸表上は連結納税主体の分類によることになることから、当該超過部分については連結修正として取り崩す必要があります。
例えば、連結納税主体の分類が(分類4)であるとすると、2年目以降の課税所得から繰延税金資産の回収可能性を見込むことができないとされているため(適用指針27項)、期末日後2年目以降の課税所得を基礎として計上されていた、個別財務諸表上の繰延税金資産の取崩しが必要となってくるものと考えられます。

Ⅲ 引継ぎが認められない繰越欠損金に係る繰延税金資産の取扱い

連結納税子会社が単体納税制度適用時に有していた税務上の繰越欠損金のうち、一定の要件を満たす場合には、連結納税への加入又は連結納税制度の適用後も引続き税務上の繰越欠損金の控除の適用を受けることが可能(特定連結欠損金)になりますが、連結納税子会社が特定連結子法人(親法人による完全支配関係が長期間継続している子法人等、一定の要件を満たす法人(法人税法第81条の9第2項第1号))に該当しない場合には、連結納税への加入又は連結納税制度の適用により当該連結納税子会社の税務上の繰越欠損金は切り捨てられることになります。
連結納税制度上、連結納税への加入前又は連結納税制度適用前の子会社の税務上の繰越欠損金(法人税)が連結欠損金としての引継ぎが認められない場合、子会社の個別財務諸表における繰越欠損金(法人税)に係る繰延税金資産については、<表2>の時点で連結納税への加入又は連結納税制度の適用がなされるものと仮定して、回収可能性を判断し繰延税金資産を取り崩すことになります。

(下の図をクリックすると拡大します)