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情報センサー2019年12月号 Tax update

外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の令和元年度改正 後編

EY税理士法人 税理士 宮嵜 晃
2007年EY税理士法人に入所。税務コンプライアンス業務に従事。その後、14年7月から17年3月まで経済産業省 貿易経済協力局 貿易振興課(国際租税担当)に出向。帰任後は主に国際課税、研究開発税制に関するアドバイザリー業務に従事している。

Ⅰ はじめに

前編(本誌2019年11月号掲載)では令和元年度改正のうち、実務への影響が大きなペーパー・カンパニーの範囲から除外される一定の外国関係会社※1について説明しました。後編となる本稿では、同じく実務への影響が大きな連結納税やパススルー課税(法令上は企業集団等所得課税規定※2という)を現地で適用している外国関係会社の適用対象金額等の計算方法の整備を中心に説明します。

Ⅱ 令和元年度改正

1. 現地で連結納税を適用している場合の適用対象金額等の整備(<図1>⑥⑦)

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米国連邦法人税率が引き下げられたことにより、米国にある外国関係会社については、合算課税される可能性が高まりました。合算課税の対象になった場合には、米国では連結納税やパススルー課税が活用されており、その場合における適用対象金額、租税負担割合、外国税額控除(これらに共通するのは所得の金額と外国法人税の額)の計算方法等が不明確であったことから、これらを明確化するための改正が行われました(<図2>参照)。また当該改正を踏まえて、国税庁からはこれらの計算方法に係る具体的な計算例や疑問点等について明らかにしたガイドライン※3が公表されました。

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<図3>における連結子法人やパススルー事業体である外国関係会社は、現地では納税義務を負っていません(連結親法人や株主等である外国関係会社に納税義務があります)。本改正前は、このような場合において、連結子法人やパススルー事業体である外国関係会社の所得が合算課税されたときは、合算課税に係る外国税額控除を適用できるのかという懸念がありましたが、本改正により適用できることとなりました。

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また、<図3>における連結親法人の所得の金額が500で、連結子法人の所得の金額が△200の場合(連結納税における所得は300で、納付税額は60の場合)には、外国子会社合算税制上の連結親法人の所得の金額は500で、外国法人税の額は100として外国税額控除を適用できるのか(これまでは連結全体では60しか納付していないため、60を超えて外国税額控除を適用することはできないのではないか)という論点がありました。こちらについても前述の国税庁ガイドラインQ10により、100を外国税額控除の対象にできることが明確化されました。
連結納税やパススルー課税が適用されている場合における適用対象金額、租税負担割合、外国税額控除の計算方法の詳細については前述の国税庁ガイドラインに記載されていますが、基本的なコンセプトとしては、これらに共通する所得の金額又は外国法人税の額は、本店所在地国の単体納税制度の規定を当てはめて計算し直した金額となります。
なお、租税負担割合の計算における外国法人税の額(分子)については、本店所在地国の法令の規定のうち、その適用が法人の選択によることとされている税額控除規定については、適用して計算しなくても差し支えないとされています(措通66の6-24の3)。つまり、税額控除前の金額により計算することができ、納税者にとっては有利な計算方法になります。

2. 保険委託者特例等における一の内国保険会社による100%保有要件の見直し(<図1>②)

ペーパー・カンパニーの判定におけるロイズ特例及び保険委託者特例の対象となる外国関係会社について、次の改正が行われました。

  1. (1)「一の内国法人(保険業を主たる事業とするものに限る。)によってその発行済株式等の全部を直接又は外国法人を通じて間接に保有されている外国関係会社である」旨の要件について、「一の内国法人(保険業を主たる事業とするもの又は保険持株会社に限る。)及び当該一の内国法人との間に発行済株式等の全部を保有する等の関係のある内国法人(保険業を主たる事業とするもの又は保険持株会社に限る。)によってその発行済株式等の全部を直接又は外国法人を通じて間接に保有されている外国関係会社である」旨の要件に改正。
  2. (2)特定保険受託者(特定保険協議者)の要件に、その役員又は使用人がその本店所在地国において保険業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事している旨の要件を追加。

※ 上記改正は、対象外国関係会社の判定及び部分対象外国関係会社である外国金融機関の判定についても同様である。

3. キャッシュ・ボックスに一定の外国関係会社を追加(<図1>③)

関連者からの収入保険料が保険料の大宗を占め、かつ、引き受けた保険リスクの多くを自ら抱え込んでいるために、保険におけるリスクの移転や分散という重要な機能を果たしていると考えにくい外国関係会社について、特に租税回避リスクが高いキャッシュ・ボックスとして、会社単位の合算課税の対象とされました。これにより、<図4>の算式①及び②のいずれにも該当する外国関係会社がキャッシュ・ボックスに加えられました。

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4. 保険業における非関連者収入割合の計算上、一定の再保険を関連者取引から除外(<図1>④)

保険業を主たる事業とする外国関係会社の非関連者基準の判定について、次の改正が行われました。

  1. (1)特定保険受託者に係る特定保険委託者は関連者に含まれないものとはしない(関連者に該当する)こととする。
  2. (2)特定保険委託者又は特定保険受託者の再保険に係る収入保険料のうち、次に掲げる要件の全てに該当する再保険に係るものについては、関連者から収入する保険料に該当しないこととする。
    1. その特定保険委託者とその特定保険委託者に係る特定保険受託者との間で行われる再保険又は同一の特定保険受託者に係る特定保険委託者の間で行われる再保険であること。
    2. その再保険に係る原保険に係る収入保険料の95%以上が本店所在地国に所在する非関連者のリスクに係るものであること。
    3. 資本の効率化に資するものであること。
  3. (3)特定保険受託者が特定保険委託者から受ける業務委託手数料の額について、関連者からの収入保険料に該当しないこととする。

※ ロイズ市場における保険引受子会社と管理運営子会社についても上記改正事項(1)及び(3)と同様とする。

5. 特定所得の金額に保険所得を追加(<図1>⑤)

BEPSプロジェクトの最終報告書(行動3「外国子会社合算税制の強化」)では、保険所得も配当や利子と同様にBEPSリスクの高い所得類型とされており、諸外国の外国子会社合算税制においても基本的に合算対象所得とされていることを踏まえ、(1)に掲げる金額から(2)に掲げる金額を減算した金額について、部分対象外国関係会社(外国金融子会社等に該当するものを除く)に係る部分合算課税の対象となる特定所得の金額に追加されました。

  1. (1)収入保険料の合計額から支払った再保険料の合計額を控除した残額に相当する金額
  2. (2)支払保険金の額の合計額から収入した再保険金の額の合計額を控除した残額に相当する金額

6. 二重課税調整に係る当初申告要件の見直し(<図1>⑧)

内国法人が合算課税の対象となった外国法人等から受ける配当等に係る二重課税調整について、修正申告書又は更正請求書にその適用を受ける金額等を記載した書類の添付がある場合にもその適用を受けることができることとする等の見直しが行われました。この改正により、当初の確定申告で合算課税の適用がなく、事後の修正申告又は更正で合算課税が適用されることとなった場合にも、配当等に係る二重課税調整規定の適用ができることとなりました。

Ⅲ おわりに

平成29年度及び令和元年度改正により抜本的な見直しが行われた外国子会社合算税制については、日本親会社が3月決算の場合は2020年3月期(合算対象となる外国関係会社が2019年3月期、2019年12月期)、日本親会社が12月決算の場合は2019年12月期(合算対象となる外国関係会社が2019年3月期))から、当該改正後の制度に対応する申告の初年度を迎えます。会社によっては、情報収集の対象となる海外子会社数が従来と比べると2~3倍近くに増えることから(特に米国連邦税率の引き下げにより、米国子会社が対象になることが大きい)、①日本親会社が3月決算の場合は、2019年3月期の外国関係会社の情報は2020年1月までに収集し、2019年12月期の外国関係会社の情報についてのみ2020年3月以降に収集するなど申告作業の前倒しによる業務の平準化を図るケースや、②これまで海外子会社からの情報収集等は「メール+エクセル」で行ってきたが、当該改正後の制度対応を機に、税務情報の一元管理のためにクラウドを活用したシステムを導入するケースも増えています。
改正前の制度では、ペーパー・カンパニーの判定や受動的所得の有無については、情報収集する必要がありませんでしたが、改正後の制度では情報収集する必要がありますので、これらの情報から優先的に対応していくと共に、早めの対応をお勧めします。


  • ※1国税庁「外国子会社合算税制に関するQ&A(平成29年度改正関係等)」(平成30年1月(平成30年8月・令和元年6月改訂))には、前編<表1>における不可欠機能要件や被管理支配要件の具体例が記載されている。
    www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/180111/pdf/01.pdf
  • ※2企業集団等所得課税規定とは、連結納税規定(当該企業集団に属する一の外国法人のみが当該法人所得税に係る納税申告書に相当する申告書を提出することとされているため、米国やフランスにおける連結納税規定はこの規定に該当するが、英国のグループ・リリーフやドイツのオルガンシャフトは、それぞれの所得に係る外国法人税についてそれぞれ申告書を提出することとされているため、この規定には該当しないとされている)またはパススルー課税規定をいう。
  • ※3国税庁「連結納税規定等が適用される外国関係会社の適用対象金額等の計算方法等の改正に関するQ&A」(令和元年7月)
    www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/190628/pdf/0019006-116.pdf