刊行物
情報センサー2019年12月号 FAAS

会計方針周辺の問題を解決する新たなソリューション

FAAS事業部 ニエツコ ラファエル
ドイツとポーランドの会計監査業務に従事し、その後、ドイツと日本において財務会計アドバイザリー業務に従事。ドイツ語、ポーランド語、英語および日本語の4カ国語でのビジネス対応が可能。ドイツ基準、日本基準、IFRSで国際的なクライアントに業務提供した豊富な経験があり、ツールの開発や決算プロセス改善等の業務に従事している。

FAAS事業部 川崎洋子
Ernst & Young LLP(米国)の日系企業サービス(JBS)にて製造業等の会計監査業務に携わり、その後当法人の財務会計アドバイザリーにて、米国IPOを含む米国上場に係る会計支援、上場企業のIFRS導入等の業務に従事している。米国の大学の学位と米国会計基準とIFRSに関する豊富な知識を持ち、特に米国市場での日本企業のアウトバウンド活動における会計に係る業務に特化している。

Ⅰ はじめに

最近、多くの企業でますますグローバル化が進んでおり、M&Aが増加しています。その際に親会社の財務経理部門の方々にとって課題となるのが、言語の壁や時間差によるコミュニケーションです。主に、新たに買収した企業への会計方針等を適切に伝えることが負担と感じられている企業が多いと思います。また、決算時の留意事項を含む指針は年度や四半期ごとに更新され、従来の会計方針や手順書を更新せず、補足資料のみ配布されることもあり、新たに企業グループに参加した企業や、経理財務部門に移動してきた人員にとって、必要な情報を網羅的に確認するのが困難な場合が生じています。
さらに、ここ数年で新たな収益認識、リース基準、金融商品基準等を含む会計基準の変更がより頻繁になっており、かつそれらの新基準がより詳細になっています。そのため、企業が持つ会計方針や会計マニュアルは膨大な量の情報で複雑化しており、必要な情報を検索するのが困難となっています(<表1>参照)。

(下の図をクリックすると拡大します)

このような中、会計方針や会計マニュアルに関連するデータの正確性かつ効率的な保管およびメンテナンスとスムーズなアクセスがますます重要になってきています。
この課題を解決するに当たり、情報の保存と共有を改善するためには、全社で情報共有するソリューションが必要となります。
この課題に取り組むための事例を幾つか紹介します。

Ⅱ 会計方針のデジタル化

会計方針書をワードファイルやエクセル等でバージョンごとに管理している事例が多くの企業で見られます。しかし、複数の会計基準で報告書を作成している企業や、複数の言語で同じ内容のファイルを管理している企業については、ウェブ上の一つのプラットフォームで管理することが重要です。そのプラットフォームとしてもっとも適切なツールは、同時に加工できるコラボレーションツールや共有ツールです。使用するプラットフォームの機能によっては、承認の段階を経て更新されるように運用することも可能です。また、複数の言語で作成し、更新する環境を整えておけば、子会社の担当者との共有もよりスムーズになります。

Ⅲ 実例

EYでは、新会計基準対応のクライアント企業への支援を通じて蓄積した実績に加えて、これまで培った業務改善・内部統制に関するノウハウを活用し、業務変革を支援しています。
例えば、輸送機器製造業者では、長年にわたり、会計方針や会計処理マニュアル等を幾つかの異なるシステム、プラットフォーム、およびドキュメントファイルを使用して保存し、周知していました。情報が増える中でコンテンツを最新のものに更新し、会計方針や会計処理マニュアル等の全体を把握することが課題でした。
この会社はEYが開発したコラボレーションツールおよびドキュメントやファイルの共有ツールを用いることによって、会計方針や会計処理マニュアル等の財務情報を収集、構造化、保存、一元管理をすることが可能となりました。
また、ある金融機関では、複数の地域で事業を運用していました。そのため、情報が即座に更新され、周知されることが運用の中で重要でした。この事例についても、専門家が支援することによって、世界中のあらゆる場所からのリアルタイムでのアクセスとメンテナンスを可能にしました。このケースでは、海外の子会社に出張中でも、スマートフォンを通じて最新の会計方針を閲覧することを可能にしました。
コラボレーションツールおよびドキュメントやファイルの共有ツールで会計方針をデジタル化するメリットは、<表2>の通りです。

(下の図をクリックすると拡大します)

Ⅳ 留意点

会計方針をデジタル化する前に、会計方針の品質自体が整っていることが必要です。また最新の会計基準が適切に導入されていることが必須となります。さらに、情報を複数の言語で利用するためには、海外子会社がメンテナンスに関与し、海外での専門知識を効率的に活用することが望ましいといえます。

Ⅴ おわりに

企業のグローバル化や会計基準がますます複雑化する世界において、最新の会計方針をタイムリーに共有することは重要になってきています。このため、コラボレーションツールおよびドキュメントやファイルの共有ツールは欠かせない道具になります。それらのツールを利用し、早期に情報を整備する準備を進めていくことが望まれます。


情報センサー 2019年12月号