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情報センサー2020年新年号 Tax update

過大支払利子税制の見直し(令和元年度税制改正)

EY税理士法人 公認会計士 南波 洋
1993年から、太田昭和アーンスト アンド ヤング(現EY税理士法人)にて、日本企業・外資系多国籍企業に対する国内および国際税務アドバイザリー業務に従事。国際税務、税制改正、組織再編税制などに係る講演、寄稿、執筆多数。2004年から、日本公認会計士協会 租税調査会国際租税専門部会 専門委員。

Ⅰ はじめに

BEPSプロジェクトの最終報告書(行動4 「利子控除制限ルール」)において、第三者への支払利子も含めて、企業が損金算入可能な利子の額を所得の一定割合に制限する利子控除制限制度の導入が勧告されました※1。平成25年から施行されている日本の過大支払利子税制※2も基本的には最終報告書の勧告と同様の考え方に基づく制度です。しかし、対象とする利子、調整所得の定義及び損金算入限度額の基準値(割合)等について、現行制度と勧告内容に乖離(かいり)があるので、勧告を踏まえた見直しが令和元年度税制改正において行われました。この改正は、法人の令和2年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用されます。

Ⅱ 見直しの内容

現行の過大支払利子税制と改正後の同税制のイメージは<図1>の通りです。また、主な見直し内容については、<図2>をご覧ください。

(下の図をクリックすると拡大します)

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1. 対象とされる利子および対象外とされる利子

現行制度においては、概(おおむ)ね「国外関連者」への支払利子等が対象となる純支払利子等とされていますが、BEPS勧告においては、国内外及び関連者/非関連者を問わず全ての支払利子等が対象とされています。今回の見直しにおいては、対象の範囲が「第三者に対するものを含む」支払利子まで拡充されたものの、通常の経済活動(国内銀行からの借入等)を考慮した結果、現行制度と同様に、利子の受領者において当該利子が日本の課税所得に含まれている場合については、制度の対象外とされています。

2. 調整所得

BEPS勧告においては、免税所得について調整計算を行わないこととされていたので、見直しによって、当期の所得金額に加算する金額から受取配当等の益金不算入額及び外国子会社配当等の益金不算入額が除外されることになりました。

3. 損金算入限度額の基準値(割合)

BEPS勧告における基準固定比率のベスト・プラクティスは10%~30%です。見直しにより、現行の50%から20%に大幅に引き下げられました。

4. 適用除外基準

新たに、国内グループ企業(持株割合50%超)の全体合算計算による適用除外基準が設けられます。グループ企業の合算純支払利子等の額が合算調整所得の20%以下である場合には制度の適用が免除されます。

5. 超過利子額の損金算入

超過利子額が7年間繰越可能である点は、変更がありません。

Ⅲ おわりに

調整所得に国内外の受取配当等の益金不算入額を含めないことになったこと(調整所得の減少)及び損金算入限度額の基準値が調整所得の50%から20%に引き下げられることなどは、受取配当や支払利子を多額に計上している企業にとっては厳しい見直しであると考えられます。
しかし、見直し前と同様に、受領者側で日本の課税所得に含まれる利子については制度対象から外されることになっています。実質的には対象となる利子が国外への支払利子等にほぼ限定されたことにより、日本企業に与える影響はそれほど大きくはならないと思われます※3。また、企業集団等の全体計算による適用除外基準が設けられるなど、日本企業に配慮した改正になっています。
一方、国外関連者からの借入が多い外資系企業、ストラクチャード・ファイナンスを行う企業、国外で債券を発行している企業等については十分な留意が必要になります。


  • ※1BEPSプロジェクトにおいて、支払利子の控除について租税回避との関係で議論がなされ、利子は多国籍企業グループがタックスプランニングに利用できる最も簡単な手法の一つであることが指摘されている。
  • ※2わが国においても、支払利子の損金算入を利用した租税回避行為については、移転価格税制(第三者間で成立する利率よりもはるかに高い利率が付された関連者間ファイナンスの抑制)や過少資本税制(負債の額が資本の額に比して過大なファイナンスの抑制)によって、以前から防止措置が講じられてきた。過大支払利子税制は、所得金額に比して過大な利子を関連者間で支払うことを通じた租税回避を防止するために導入された。
  • ※3国外の関連者や第三者(外国銀行等)からの多額の借入を有する日本企業は、それほど多くはないと思われる。

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