刊行物
情報センサー2020年10月号 パブリックセクター

ポスト・スマートシティ 
第2回 ニュータイプ企業 新しい地域経営を支えるプレイヤーたち

パブリック・アフェアーズグループ 髙山 聖
大手外資系コンサルティングファーム、公共政策大学院を経て、2008年より現職。政府・自治体向けに業務改革、IT調達支援、行政評価・EBPM、官民連携プロジェクト(PPP)、地方創生、介護・保育におけるDXプロジェクト等の行政経営コンサルティング業務に多数従事。CISA(公認情報システム監査人)、CDPSE(公認データプライバシーエンジニア)、保育士。当法人 シニアマネージャー。

Ⅰ はじめに

前号において、スマートシティの目指すべき方向性として「個別最適型の事業構造から、都市/まちの全体最適への転換が必要である」と提起しました。その後、本年5月27日、国家戦略特別区域法の一部を改正する法律(いわゆるスーパーシティ法案)が可決・成立し、スーパーシティ=「まるごと未来都市・規制改革都市」を実現するための法整備がなされました。そのコンセプトとは、「幅広く生活全般をカバーする取組」であり、「各分野の規制改革を、同時一体的に進める」ものとされています※1

Ⅱ アプローチ

1. ビッグバンアプローチ

分野横断的な取り組みを含む大きなまちの理想像を描き、そこから現状の課題や規制の障壁を析出し、こうした制度枠組みを活用し実行につなげていく(こうしたアプローチを「ビッグバンアプローチ」とします)ことは、複雑に絡み合う課題を抱えるわが国において非常に重要な取り組みであることは疑いありません。一方で、個々の自治体現場においては、「そこまで規制改革が必要な場面が思いつかない」「住民合意が得られるか不安」「横串連携・分野横断的な庁内体制が整っていない」「そもそもコロナ禍で明らかになった課題に対応するので精いっぱい」というのが実情ではないでしょうか。

2. アジャイル型アプローチ

今年発生した未曾有(みぞう)のコロナ禍の中で、そこで明らかになった社会課題の解決のために実証実験を公募する事例が幾つかの自治体で見られます。そこでは、①幅広い事業者を対象にしており、その中にはこれまでのような業務実績や地元要件が課せられた中では参入できなかったようなスタートアップ企業も含まれていること(むしろそうした新たなイノベーションを起こせる事業者をターゲットとしていること)、②実証・実装までのスピード感を重視していること、③自治体の役割として、実証フィールドの提供、広報・PR、産官学のマッチング支援などを中心としており財政負担は限定的であること、といった共通点が見られます。このような形で、顕在化した課題に対して一つ一つボトムアップで、しかも事業規模が比較的小さな形で課題解決=まちづくりを目指す進め方を「アジャイル型アプローチ」と呼ぶことにします。
「アジャイル」とは「俊敏な」という意味の、ソフトウェア開発の分野で聞かれるようになって久しい言葉ですが、この基礎的な考え方には「アジャイルマニフェスト」があり、さらにその源流には、戦後の都市計画によって作られた都市を「人工都市」と批判し、人間を疎外しない都市の在り方を志向した建築家クリストファー・アレグザンダーの思想があるといわれています※2。C.アレクザンダーはコミュニティで建設とプランニングを行うための六つの原理を提唱し、「有機的秩序の原理(全体を個別的な行為から生み出していくこと)」「漸進的成長の原理(小規模なプロジェクトに特に重点を置くこと)」等を重視しています。これらは現代の課題解決やまちづくりにおいても引き続き有効な考え方ではないでしょうか。
さて、当法人はその「アジャイル型アプローチ」の実効性を担う重要な事業者を「ニュータイプ企業」と呼んでいます。「ニュータイプ企業」の特徴は、「圧倒的な技術力・スピード・価格競争力」の3点に集約されます。
当法人では、「ニュータイプ企業」を自治体担当者に紹介する取り組みをウェビナー等で行っています(<図1>参照)。そこで紹介したA社では、3密を避ける新たなサービスのプロトタイプ版を2日で開発しました。またB社では、オンライン行政手続の開発・導入を1カ月程度、月数万円程度の利用料で提供しており、このコロナ禍において多くの団体からの引合いを受けています。総務省の調査によれば、市区町村における情報システム年間経費は人口30万人以上の団体で1団体あたり23.8億円、5~10万人未満でも2.5億円となっています※3。もちろん、この金額は住民情報系、内部管理系システムといった大規模システムが含まれたものですが、長年自治体のシステム調達の現場を支援してきた筆者の感覚としても、「ニュータイプ企業」のスピード感・費用感は破格といえます。

(下の図をクリックすると拡大します)

Ⅲ おわりに

こうした「アジャイル型アプローチ」を進めていく上でも、全体を貫く原理原則・全体最適・公益性の視点や、横展開・拡張可能な汎用(はんよう)性は不可欠といえます。それらがなければ、個々の取り組みは補助金財源、提案を持ち込んでくる事業者の有無や彼らのビジネスプラン、担当者ベースの発意などに依存して長続きせず、変化し続ける環境にも対応できずに結果的に短期的・単発的なものに終わってしまうでしょう。
ニュータイプ企業などと協業しながらスピード感を持って個別課題対応を進めつつ、一方でそれがタコツボ化しないよう、また長期的には「ビッグバン」を起こせるよう、常に全体最適や汎用性の視点を持ちながら進めていくといった両面でのアプローチが、これからの社会課題解決・まちづくりに求められるのではないでしょうか。
次号からは当法人の考える「全体最適」の実践例について、紹介していきます。