新型コロナウイルス(COVID-19)危機後に、5つの新しい消費者セグメントが生まれてくることを、第3回「EY Future Consumer Index(これからの消費者像に関する指標)」が示しています。「EY Future Consumer Index」は、消費者の心理や行動を追跡するためEYが毎月行っている調査で、第3回調査には18の国と地域から14,074人が参加しました1 。各セグメントに属する消費者は、コロナ後にどのような生活を送ることを望んでいるのか、どのような選択をしていくのか、本当に重要なことは何なのか、といった問いに対して、それぞれ異なる展望をもっています。
消費者は正常な生活を切望するも新たな優先事項を有する
第3回調査結果によると、安定した日々を切望する傾向が、ますます強くなっていることがわかります。回答した消費者の40%が、「普通の生活へ戻る」ことを希望しており、これは先月の調査(第2回調査)時の20%から倍増しています。しかし、消費者の半数(50%)は依然として、自身の生活が長期的に大きく変化すると予想しています。一方、今回のコロナ危機の体験によって、自らの価値観や生き方を見直すようになったと回答した消費者は53%に上っています。
「EY Future Consumer Index」によると、消費者心理の変化に伴って台頭した5つの新しい消費者セグメントは以下の通りです。
- 価格優先:このセグメントの消費者は収入の範囲内で生活することを望んでおり、全回答者の30%を占めています。このセグメントの消費者はまた、自国の状態が回復し、安定した経済が戻ってくるまでに要する時間に関して、最も悲観的な思いを抱いています。彼らの半数以上が、価格がますます重要な要素になると考えています。
- 健康優先:このセグメントの消費者(26%)は、安全性に信頼を置くことができ、不必要なリスクを最小限に抑えたブランドや商品を好んでいます。このセグメントの消費者の57%が、購入する商品が自分たちの健康にとってどれだけ良いものなのか、今まで以上に注意を払っていると回答しています。
- 環境優先:このセグメントの消費者(17%)は、購入する商品をコロナ後にこれまでとは変える可能性が最も高く、高品質で、倫理的に調達されたサステナブルな商品に対してより高額なお金を払うことをいといません。彼らの57%が、これからは長期的に、国内で生産された商品を買う機会を増やす意向だと回答しています。
- 社会優先:このセグメントの消費者(16%)は、社会全体の利益のために、すべての人々が協力し合うべきだと考えており、彼らの73%が社会の利益のためなら進んで自らの行動を変える意向だと回答しています。このセグメントの消費者は、誠実で、自社の活動について高い透明性を有する組織からの商品の購入を希望しています。
- 経験優先:このセグメントの消費者(11%)はそのときどきの瞬間を生きることを重視しており、自身の健康や経済状態に対する懸念が最も少ない人たちです。彼らの3分の2は、自国のコロナ危機が収束してからわずか数日後、または2,3週間後に再びショッピングセンターで買い物することに抵抗がないと感じています。
EYグローバル コンシューマーリーダーのKristina Rogersは、次のように述べています。
「企業や組織が対応を考えていかなくてはならないのは、商品の価値や健康をこれまで以上に重視するようになった消費者だけではありません。環境や社会に対して消費者自身の価値観を反映している、理念の高いブランドを求める消費者への対応も考える必要があります。こうした消費者に求められる企業となるために、今後の消費者行動を反映したデジタル顧客体験(顧客が購入に至るプロセス)を提供し、消費者の信頼を確保するために必要な透明性を生み出していけるように、企業のリーダーたちは事業ポートフォリオの再構築に注力していく必要があります。」
コロナ後、大多数の消費者の関心を占めるのは健康および価格の手頃さ
消費者は、自らの行動を深く、長期的に見直していくことを考えています。消費者の62%が、これからは自分自身の身体的健康に今まで以上に気を配り、より注意深くなることを示唆しています。また、消費者の58%が、今後は価格に見合った価値をこれまで以上に重視すると回答しています。こうした行動や好みの傾向は決して新しいものではありませんが、「EY Future Consumer Index」は、消費者が今後、自分の価値観を貫くことにこれまで以上に注力するようになると予想しています。
EYグローバル コンシューマー・ナレッジ・リーダーのAndrew Cosgroveは、次のように語っています。
「企業の多くが、自社が現在有しているポートフォリオ、マーケティング、サプライチェーンは適切であると信じています。しかし、今回の調査結果が示すように、消費者の期待はより高くなっています。こうした期待に応えられるだけの、十分な順応性を備えた企業はほとんどありません。効率性は重要ですが、効率性重視と今後の成長を可能にするケイパビリティを継続的に開発する必要性とのバランスを取ることが重要です。企業は今、過去に上手くいったことをやり続けるだけではなく、将来の成功を積極的に形成していく機会を手にしているのです。」
EY Japan消費財・小売セクター 日本エリアリーダーの平元 達也は、次のように述べています。
「消費者の行動変化を見据えたとき、企業がとるべきアクションの一つとして『事業ポートフォリオの見直し』を提言します。自社の各事業が消費者のニーズや価値を満たす商品、サービス、顧客体験を提供できているかを再評価すべき時です。消費者の変化により自社での継続が合理的ではないと判断される商品やサービスの事業売却、新しい商品、サービスを取り込み消費者への提供価値を強化するための事業買収といった、より戦略的なM&Aが必要になるでしょう。」
1 第3回調査は2020年6月8日に完了。