アドバイザリー
連載 「統制活動の効率化(合理化 / 最適化 / 再設計)」

第1回 内部統制報告制度への対応に関する課題

新日本有限責任監査法人 ITリスクアドバイザリー部
長尾 大輔
2012.03.01

1. はじめに

平成20年4月1日以後開始する事業年度から適用された内部統制報告制度は、今年で5年目を迎えます。多くの上場企業は、より効率的に対処するために様々な工夫を凝らしています。
平成23年3月には金融庁は「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂に関する意見書」(意見書)が公表しました。その改訂の目的の一つは「内部統制報告制度の効率的な運用手法の確立」であり、企業に過度な負担をかけることなく本制度を運用していく方針であると考えられています。
一方、多くの上場企業の内部統制の評価や運用は安定してきています。しかしながら、一部の企業では、より効率的な内部統制を目指し、重複した統制や過度な統制の見直しを検討しています。

今回から5回シリーズで、「統制活動の効率化(合理化 / 最適化 / 再設計)」をテーマに解説します。

  • 第1回: 内部統制監査への対応に関連した課題
  • 第2回: 統制活動の合理化
  • 第3回: 統制活動の最適化
  • 第4回: 統制活動の再設計
  • 第5回: 統制活動と情報セキュリティ

2. 米国におけるEYの調査結果

2011年4月、EYは米国サーベンス・オクスリー法(SOX)への対応について、225名のグローバル企業の経営者に対面式調査を実施しました。本調査において、「SOX対応に際しての今後の課題は何でしょうか?」という質問に対して、58%の回答者が「統制テストに関わる取り組みの効率化」を今後の課題として挙げています。

SOX対応に際しての今後の課題は何でしょうか?

米国SOXへの対応に関する調査結果
出典: EYによる米国サーベンス・オクスリー法(SOX)への対応について対面式調査(2011年)

上のグラフは、米国SOXへの対応に関する調査結果の一部ですが、内部統制報告制度を採用している日本においても「統制テストに関わる取り組みの効率化」を課題とする企業が多いことは米国の状況と同じです。

3. 評価手続の効率化と統制活動の効率化

「内部統制報告制度の効率化」には、「評価手続の効率化」と「統制活動自体の効率化」の二つが考えられます。「評価手続の効率化」については、「金融庁の意見書等を通じて、十分に検討されており、一定のアプローチが確立しているため、このコラムでは説明を省略します。
一方、「統制活動自体の効率化」 は各企業によって事情が異なるため、画一的な手法はないと考えられますが、既に多くの企業では統制の効率化を検討 / 実施しており、それらのアプローチを参考にしていくことは有意義と考えます。

4. 統制活動の効率化についての共通した考え方

統制活動だけを切り出して考えることは、不効率で形骸化された業務を生み出す原因となります。効率化に成功している企業には各種の統制活動を業務プロセスにビルトインするといった共通の考え方があります。
また、対処しなければならないリスクへの効率的な対応を見据えることは、統制活動だけでなく業務プロセスの効率化にもつながると考えられます。

業務プロセス

5. 統制活動の効率性向上のためのアプローチ

企業は統制活動の効率性を高めるために様々な工夫を凝らしていますが、その代表的なアプローチは、以下の3つに分類されます。

  1. (1)合理化:統制活動及びプロセスの不要な部分または重複した部分を削除するアプローチ
  2. (2)最適化:手作業統制の自動化等を通じて、現在の統制をより効率的な統制に代えるアプローチ
  3. (3)再設計:組織の設計(タスク/役割/責任の所在)を再定義し、統制構造全体を見直すアプローチ

上記のうち「(1)合理化」が最も容易でリソース・労力が少なくて済みます。一方、「(3)再設計」は最も多くのリソース・労力を必要としますが、その結果による効率化や得られる効果も大きくなると考えられます。


次回から、これらの3つのアプローチについて解説します。第2回目は、「統制の合理化」を解説する予定です。


連載 「統制活動の効率化(合理化 / 最適化 / 再設計)」




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