アドバイザリー
会計不正 ― 会計不正の手口と事例

第六回: 無形資産、投資等に関する会計不正

2013.11.18
畠山 正一
畠山 正一
新日本有限責任監査法人
ビジネスリスクアドバイザリー部 マネージャー
公認会計士

大手監査法人にて主に保険会社の監査業務を経験後当法人に入所。当法人では、機械製造、製薬等複数業種において、内部統制関連のプロジェクトマネージメント(USSOX、J-SOX)、内部監査支援(国内、海外)、不正対応支援といったリスク関連アドバイザリーから、経営統合後の支援、決算早期化、不備コントロールの改善といったプロセス改善アドバイザリーにいたる、多岐にわたる業務に多数従事する。


前回の固定資産に続き,今回は無形資産,投資等に関する会計不正を取り扱います。連結外し,のれんに関連した不正,さらには,ソフトウェアに絡んだ不正の事例を紹介します。

連結外し

連結外しは連結決算および子会社投資に絡んだ会計不正です(図1)。企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」によれば,親会社は原則としてすべての子会社を連結の範囲に含め,連結財務諸表が,企業集団の財政状態,経営成績およびキャッシュ・フローの状況に関して真実な報告を提供することが要請されます。業績不振状態にある連結すべき子会社を意図的に連結から外す,あるいは連結外の子会社に損失を付け替えて損失を隠蔽するといった手口による不正が発生しています。「会社」を連結するかしないかという会計不正であるため,隠蔽される損失は巨額になる傾向にあります。
連結外しの最も有名な例はUS SOX導入の契機となったエンロン事件で,ガスや電力取引に関する巨額な損失を連結外の子会社に付け替えていました。本来であれば,そのような子会社は連結されて,企業集団レベルでの適切な開示がなされなければなりません。
日本において大きく報道で取り上げられたカネボウの粉飾決算では,損失を抱える子会社を連結から意図的に外すことで損失を隠蔽しました。その後も多くの企業において連結外しを利用した利益操作が指摘されています。
連結範囲の判断基準は,企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」等によって規定されており,実質的に支配している会社は原則連結されなければなりません。そのため,会計監査人等から連結外しを指摘されないように,実質的な支配が存在しない形に見せかける不正がなされます。また,連結外しは経営者自らが主導して行われる場合が多く,通常の内部統制では発生を抑止することは難しいため,専門的能力を有する社外取締役や社外監査役が積極的に関与し,透明性の高いコーポレートガバナンスを構築することが必要であると考えられます。

連結外し

のれんに関連した不正の事例

企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」によれば,のれんについて,「取得原価が,受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を上回る場合には,その超過額はのれんとして会計処理」と定義されています。取得原価が受け入れた資産および引き受けた負債に配分された純額を下回る場合もありますが,不正に利用されるのはのれんが貸借対照表上に資産として認識される場合です。一般的に,のれんは企業のブランドや超過収益力を表象したものと捉えられており,その実体が目に見えるものでないため不正に利用されます。
のれんに関連した不正にはいろいろありますが,過大にのれんを計上して利益操作を行う,あるいは,のれん計上後の償却を恣意的に操作して利益操作するといった方法があります。前者については,実際の価値をはるかに上回る高額な対価により被取得企業を買収し,多額ののれんを不正に計上のうえ,投資において生じた多額の含み損をその一連の取引の中に包み隠したという事例があります。この事例も含め,のれんの過大計上を利用した不正の事例はその仕組みが複雑であり,紙面の制約もありこれ以上の説明は省略しますが,実際に不正が行われた場合には企業結合を利用した不正であるためその影響額が巨額になる傾向にあります。後者の償却について,「企業結合に関する会計基準」によれば,「のれんは資産計上後,20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって,定額法その他の合理的な方法によって償却」と定められています。どのような償却方法を採用するかは経営者の判断によるため,恣意的に決定され利益操作に利用されるリスクがあります。
このようなのれんを利用した不正会計も,連結外しの場合と同様,経営者自らが主導して行う場合が多く,連結外しの場合と同様の対応が必要と考えられます。

ソフトウェアに絡んだ不正の事例

本来費用として計上すべき支出をソフトウェアとして資産計上し,費用を翌期以降に繰り延べる不正会計の手口があります。資産計上が認められないソフトウェア(制作費用,開発費用)30億円をソフトウェアとして資産計上し,3年間でそのソフトウェアを定額償却した場合,当期に20億円の利益の水増しが可能です。 特に自社開発されたソフトウェアは悪用されやすく注意が必要です。ソフトウェアとして資産計上される支出の多くは人件費という目に見えないものであり,監査によって発見される可能性も相対的に低くなります。
ソフトウェアに絡んだ不正を防止するには,ソフトウェアとして資産計上する際に,担当部門とは別の部門(たとえば経理部門)において知識と経験を有するレビューアーが資産の中身をレビューし,適切な支出のみがソフトウェアとして資産計上されていることを確認する内部統制を整備・運用することが有効です。

不正のダイヤモンド

上記でご紹介した不正の事例のうち,連結外しやのれんに関連した不正は高度な経理知識が必要とされ,動機・機会・正当化だけでは十分には説明しきれません。仮に動機・機会・正当化の3つの要素がそろったとしても,連結外しやのれんを利用した巧妙な粉飾手段をとり得るだけの専門的な能力がなければ投資家や監査人を欺く高度な粉飾決算を行うことはできません。
2013年1月号の第1回の連載で,不正のトライアングルをご紹介しましたが,これをさらに応用した不正のダイヤモンドという概念があります(図2)。動機・機会・正当化に四つ目の要素として「専門的能力」を加えて,「粉飾」等,一定の会計知識が必要とされる不正の本質を理解するのに非常に役に立ちます。

不正の三分類(参考)不正の三原因

(中央経済社「企業会計」2013年6月号)

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