アドバイザリー
会計不正 ― 会計不正の手口と事例

第八回: 費用・経費に関する会計不正

2013.11.18
飯田 百恵
飯田 百恵
新日本有限責任監査法人
ビジネスリスクアドバイザリー部 マネージャー
公認会計士

大手監査法人にて5年間の会計監査業務に従事後、当法人に入所。
医薬、石油、建設、総合商社等複数業種において、内部統制(J-SOX)関連のプロジェクトマネージメント、文書化、整備、運用テストにかかる支援、内部統制整備の効率化、有効化支援など多岐にわたるアドバイザリー業務に従事。


今回は,費用・経費に関する会計不正を取り上げます。

費用・経費と会計不正

費用・経費に関する会計不正として2つのバターンをご紹介します。

  • 費用処理すべきコストの資産計上
    費用処理すべきコストを,資産として計上し,費用を繰り延べるという会計不正です。
  • 経費・費用の過大計上,架空計上
    実際には発生してない経費・費用を計上する会計不正です。

費用処理すべきコストの資産計上

費用処理すべきコストを資産に計上し,利益を水増しする単純な手口ですが,多くの事例があります。
株式会社ミツウロコの事例では,特定取引先の預かり保証金および未払費用を減額,または架空の未収金を計上し,仕入原価または経費を減少させ,利益のかさ上げを行っていました。
株式会社ミツウロコの社内調査結果(注1)によると,実行者は,「預かり保証金,未収金等の勘定科目が通常ではほとんど変化のない勘定科目であり,これらの貸借対照表の数値についてチェックする者はなく,発覚することはないだろうと考えて使用した」と,当該科目を利用した理由を述べています。
さらに不正が発覚しなかった理由として,「当該社員は,預かり保証金や未収金といった通常の取引ではほとんど推移のない勘定科目を用いていること,ならびに支店長が支店の貸借対照表の数値を管理していなかったこと。
また,当該社員が入力者であったため,支店長に決裁を得るべき会計伝票を提出せず,隠匿していたこと。また,監査役ならびに本社に対して虚偽の補助簿を提出していたこと。」が挙げられています。
上記の事例のような不正を防止するためには,まず,内部統制の基本として,伝票の起票者,入力者,チェック者,承認者といった職務分掌を徹底することが必要です。また,預かり保証金,未収入金等,変動のない勘定科目についても内容を十分にチェックする必要があります。
さらに,費用の不正に限らず,不正全般に対する対策として,定期的な人事異動ローテーション,連続した営業日の休暇の取得制度化も有効です。休暇取得制度は,長期間にわたり同一業務に従事する社員が休暇を取得し,他の従業員が休暇を取得している従業員の業務を代行することにより,不正の機会を減らす効果があります。ミツウロコ事例では,改善・再発防止策として3連続営業日,土日を含め5連続休暇強制取得の制度化が示されています。

経費・費用の架空計上

実際には発生していない経費・費用を計上するもので,①カラ出張を申告し旅費を水増しして申告する,②法人カードを使ってすでに会社の経費となっているものについて,領収書を用いてさらに経費精算として二重に会社に対して請求する,③領収書の金額を改ざんし,水増し請求する等の手口があります。
法人カードや経費の承認権限者が予算を有する管理者であり,予算の範囲内で不正を行っている場合は,発覚が難しくなります。
このような不正を防止するため,法人カードに限度額を設ける,個人別の予算管理を行う,領収書を精査し,領収日,筆跡,金額,使用頻度に異常がないかチェックする,従業員教育を行う等の対応を行うことが有効です。

外部者との共謀

費用・経費の過大計上・架空計上が,外部者と共謀して実行される事例も多く,注意が必要です。
費用・経費の過大計上・架空計上について,外部者と共謀した事例として,ネットワンシステムズ社(以下,NOS)の事例を紹介します(図)。
NOSでは,従業員が,外注業者から会社に,コンサルティング費用や保守サービス費用といった架空の外注費を請求させ,総額7億8910万円にのぼる詐欺を実行しました。2005年4月から2012年8月まで同じ手口で52回にわたって実行され,騙取した金銭は,関係者で分配しています。

架空請求の流れ

この事例は,内部監査室が異常取引として把握していましたが,追及が中途半端に終わり,最終的には国税局の税務調査で,外注費に実体が伴っていないのではないかという指摘を受け,発覚しました。不正のトライアングルの3要素について,調査報告書(注2)で明らかにされていますので,ご紹介します(かっこは筆者)。
「(イ)動機
A(従業員・不正の首謀者)は,NOSの営業幹部として相当額の収入を得ていたが,高級クラブでの飲食,大きな家,高級車,ゴルフ会員権などのためには,NOSからの給与だけでは足りないと思っていた。(略)
(ロ)機会
NOSにおける内部統制システム,ガバナンスの脆弱性は,A,B,C(従業員および共謀者)らに犯行の機会を提供すると共に,長期間にわたる犯行,さらには大胆な犯行を可能にする機会を提供し続けた。
(ハ)正当化
(略)Aは,『処分については,これまでのNOSに対する私の功績を考慮してほしい。私は多額の受注,売上,利益で会社を十分儲けさせてきた。』と述べている。」

職務分掌といった内部統制だけでなく,企業風土や内部監査,内部通報制度といったガバナンスの重要性を示す事例といえます。
この事例にあるように,架空請求した経費・費用を,従業員が外部の共謀者とともに着服することを目的としている場合は,着服した個人の生活態度,生活様式が変化することがあるので従業員のふるまいにも注意を払うことが有効です。

    (注)
  • (1)平成21年11月11日不適切な会計処理の社内調査結果ならびに社内処分について
  • (2)平成25年3月8日当社元社員による不正行為に係わる調査結果に関するお知らせ 添付資料2013年(平成25年)3月7日ネットワンシステムズ株式会社特別調査委員会調査報告書

(中央経済社「企業会計」2013年8月号)

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