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会計不正 ― 会計不正の手口と事例

第十回: 税効果・諸税金に関する会計不正

2013.11.18
飯田 百恵
飯田 百恵
新日本有限責任監査法人
ビジネスリスクアドバイザリー部 マネージャー
公認会計士

大手監査法人にて5年間の会計監査業務に従事後、当法人に入所。
医薬、石油、建設、総合商社等複数業種において、内部統制(J-SOX)関連のプロジェクトマネージメント、文書化、整備、運用テストにかかる支援、内部統制整備の効率化、有効化支援など多岐にわたるアドバイザリー業務に従事。


今回は,税効果・諸税金に関する会計不正を取り上げます。
税効果会計,諸税金とも,決算の時点で算出され計上されるものであり,算出の根拠が十分であるか重要なポイントとなります。

税効果会計

税効果会計は,企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に相違がある場合において,法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金(以下「法人税等」。)の額を適切に期間配分することにより,法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする手続きです。
課税所得計算上の資産及び負債の金額とは,貸借対照表上の資産の額及び負債の額に税務上の加算額又は減算額を調整した後の資産の額又は負債の額で,その差額を一時差異といいます。法人税等については,一時差異に係る税金の額を適切な会計期間に配分し,計上します。
当該一時差異が解消するときにその期の課税所得を減額する効果をもつもの(以下「将来減算一時差異」。)と,当該一時差異が解消するときにその期の課税所得を増額する効果をもつもの(以下「将来加算一時差異」。)があります。
たとえば,税務上では損金として認められない棚卸資産の評価減を会計上で計上した場合,会計上の棚卸資産の額は税務上の資産額よりも低くなり差額が生じます。会計上は,棚卸資産を評価減したときに費用処理されますが,税務上は棚卸資産を処分した時に損金とされます。この場合,評価減計上後の会計上の資産額と税務上の資産額との差額が一時差異であり,将来の課税所得の計算上で減算効果があるため,将来減算一時差異となります。
将来加算一時差異は,たとえば,利益処分により租税特別措置法上の諸税金等を計上した場合があります。また,一時差異の準ずるものとして,税務上の繰越欠損金,繰越外国税額控除があります。
一時差異に係る税金の額は,将来の会計期間において回収又は支払が見込まれない税金の額を除き,将来減算一時差異については繰延税金資産を,又は将来加算一時差異については繰延税金負債として計上しなければなりません。
繰延税金資産と繰延税金負債の差額を期首と期末で比較した増減額は,法人税等調整額として計上しなければなりません。ただし,資産の評価替えによる評価差額が直接資本の部に計上される場合には,当該評価差額に係る繰延税金資産又は繰延税金負債を当該評価差額から控除して計上します。

繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産は,将来減算一時差異が解消されるときに課税所得を減少させ,税金負担額を軽減することができると認められる範囲内で計上するものとし,その範囲を超える額については控除しなければなりません。
たとえば,当期に貸倒引当金を計上しており,税務上その一部が損金に算入されない場合,この損金不算入とされた貸倒引当金は,翌期以降において税務上損金算入が認められたときに課税所得の計算上減算処理されることになります。ところが,税務上の損金算入が認められる将来の期に税務上欠損金を抱えていると,貸倒引当金の損金算入が行われてもその全部又は一部について税金の軽減効果はありません。
会計基準では,繰延税金資産の回収可能性の判断要件として,以下の3項目を定めています。

  • (1)収益力に基づく課税所得の十分性
  • (2)タックスプランニングの存在
  • (3)将来加算一時差異の十分性

不正な会計処理に伴う繰延税金資産の過大計上

繰延税金資産が増加すると,法人税等調整額が貸方に計上され,結果として当期純利益が増加することになります。反対に,繰延税金資産が減少すると,法人税等調整額が借方に計上され,当期純利益が減少することになります。ここに,企業が当期純利益の確保を動機として,繰延税金資産を過大に計上する誘因が存在します。
収益力に基づく課税所得の十分性を根拠に繰延税金資産を計上する場合については,過年度の納税状況および将来の業績予測等を総合的に勘案し,課税所得の額を合理的に見積もる必要があります。将来の業績予測を勘案する場合,合理的でない業績予測を用いることにより,過大計上が行われる可能性があります。将来の業績予測は,事業計画や経営計画又は予算編成の一部として取締役会や常務会等の承認を得たものであることが必要です。
タックスプランニングに基づいて繰延税金資産の回収可能性を判断している場合は,過大な含み益の算定,実現可能性がない資産の売却計画により利益の過大計上が行われる可能性があります。当該資産の売却等に係る会社としての意思決定の有無および実行可能性,並びに売却される当該資産の含み益等に係る金額の実現可能性を検討する必要があります。
恣意的な計上を防止するためには,回収可能性の検討の手順の策定,算出資料の作成,確認,承認の職務分掌といった内部統制の整備・運用が必要です。特に子会社等では,知識が不足していることもあり,手順が策定されておらず,十分な検証が行われていないケースがあるため注意が必要です。

過大なタックスクッション

決算時に税金計算を行いますが,申告納税額より,多めの金額を計上することがあり,この金額をタックスクッションと呼びます。タックスクッションは,財務報告が税務申告より早いことから決算後の調整による税額の変更や申告漏れ等による延滞税等などに備え,計上します。
申告納税額は,会計上の未払い法人税の金額より少ないため,タックスクッションの金額が過大となると,見積もり計算が妥当でなく,不正な費用計上となってしまいます。
タックスクッションの金額が妥当であるかどうか,当年度の納税額と比較し,差異が過大でないことを確認することが必要です。

輸出取引の免税制度を利用した不正還付

輸出取引は付加価値税(消費税)が免除されますが,それに対応する課税仕入れには消費税及び地方消費税の額が含まれており,輸出の場合には,課税仕入れに含まれる消費税や地方税の額は仕入税額を申告することで還付を受けることができます。
この制度を悪用し,国内で仕入れ,海外に輸出したとする架空の取引を作り出し,虚偽の還付申告書を税務署に提出し,不正な還付を受けた事例があります。
諸税金に関する過少計上や,消費税の還付が,不正の動機となる場合もありますので,注意が必要です。

(中央経済社「企業会計」2013年10月号)

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