アドバイザリー

ビッグデータ(企業の競争と業務に変革を起こす)

2014.05.29
長尾 大輔
長尾 大輔
ITリスクアドバイザリー部 シニアマネージャー
公認会計士/公認情報システム監査人
1991年に監査法人に入所、監査部門での勤務の後、政府開発援助(ODA)関連アドバイザリーを実施、中国/カザフスタン/ウズベキスタン/ポーランド/インド/パキスタンにて、組織・制度改革のスペシャリストとして活躍した実績がある。特にポーランドで実施された国有鉄道民営化計画調査では、その調査結果は高い評価を受けており、ポーランド共和国運輸貢献者名誉賞を授与された。
組織改革の分野でのアドバイザリー実績には定評があり、現在は、データ分析サービスや経営管理の分野で、企業の組織改善活動を支援している。データ分析業務に関する著作としては、2014年4月にEYから発行された「ビッグデータ 企業の競争と業務に変革を起こす」がある。

スティーブン ウァン
スティーブン ウァン
EYコロラド州デンバー(2000年)/金融アドバイザリー部 ITRA (2011年9月)
CBIP (Certified Business Intelligence Professional)/公認情報システム監査人/公認内部監査人
スティーブンは、グローバルに展開する金融機関に対して、アドバイザリーや保証業務を幅広く提供している実績がある。また、EY Japanのビジネスアナリティクスとデータ分析チームのリーダーとして、様々なデータ関連サービスの提供の責任を担っている。これまでの経験を活かし、様々な国際会議にてデータ分析や情報セキュリティーについて講演も行っている。データ分析業務に関する著作としては、「ビッグデータ 企業の競争と業務に変革を起こす」(2014年4月発行)がある。

1. はじめに

データが企業価値の源泉であるということは、もはや目新しい考え方ではありません。今ではデータを有効に活用することが競争力の源泉となりつつあります。企業は、社内のデータと社外の情報を統合し、統計的・予測的な見地から過去を分析し、未来を見通そうとしています。ビッグデータは、企業の競争や業務の在り方を根本から変えることになるでしょう。データに対して投資を行い、価値を引き出すことのできる企業が、優れた競争力を手に入れることになります。

EYによる『2013年グローバル情報セキュリティサーベイ』の結果によれば、ビッグデータを実際に導入・利用している企業の数は限られているものの、この技術に対する信頼度や認知度は上昇傾向にあります。このサーベイでは、さまざまな技術の重要度、理解度、サイバーリスクへの対応力を回答者に評価してもらう項目があり、それによると、ビッグデータ技術は「近く普及する技術」(ここ最近注目されており、近いうちに導入や採用が拡大してくる可能性がある技術)に分類されています。一般的に、多くの企業は、ビッグデータ関連技術によって業績改善や競争優位性を生み出せると考えています。

(下の図をクリックすると拡大します)

EY 2013グローバル情報セキュリティサーベイ

出典:『EY 2013グローバル情報セキュリティサーベイ』

2. ビッグデータがもたらすメリットとリスク

データが私たちの生活に与えた影響は、ビデオレンタルサービスに起きた変化を見れば一目瞭然です。顧客が近所のレンタルビデオ店に出向いて映画を借りていた頃は、店は客の好みや店側の主観で作品を薦めていました。しかし、今日のビデオレンタル会社やコンテンツ配信サービスは、膨大な量のデータポイントを基に顧客に作品を薦めることができるようになりました。どの作品がいつ、どのようなデバイスで閲覧されたか(さらには早送りや巻戻し、一時停止などの操作が行われたか)に加え、インターネット検索、ウェブページ内の閲覧といったユーザーの行動を分析することにより、何百万人もの顧客に対して、それぞれの嗜好に合った作品をリアルタイムで薦めることが可能です。現在では、主要な業者でレンタルされる商品の約75%が、こうしたレコメンド機能に基づいています。

フォレンジック・データ・アナリティクス(Forensic data analytics、以下「FDA」)技術は、増大するデータ量や、ますます複雑化するビジネスや規制環境への対応を迫られている企業にとって、強い味方となるはずです。一例を挙げると、FDA技術の一つであるリアルタイム分析処理エンジンを使用すれば、不正が疑われる支出や企業取引の停止、データの可視化、統計分析、テキストマイニングを統合した不正や腐敗監視機能の導入といった、ビジネスの上で重要な決定を迅速に行うことができるようになります。

ビッグデータ革命は、確かに企業と消費者の双方に膨大な利益をもたらす一方、相当なリスクがあることを忘れてはなりません。ビッグデータの活用にあたっては、新技術や外部環境の利用による新たなリスクが伴います。例えば、データウェアハウス(DWH)として外部のクラウド環境を利用する場合、セキュリティに関するリスクが増大します。また、新しいセンサー技術や分析ツールを利用する場合、その利用に伴う課題を正しく理解していなければ、不測の事態に遭遇する可能性があります。

(下の図をクリックすると拡大します)

ビッグデータ利用に伴う関連リスク・イメージ図

ビッグデータの分野は急速に進化しており、そのメリットは無視できないものとなっています。それをうまく活用するためには、新たなリスクを管理しつつデータの使い方を慎重に検討しなければなりません。ビッグデータの活用にあたっては、攻め(アクセル)と守り(ブレーキ)のバランスが大切なのです。

図3

3. 7つの重要項目

企業がビッグデータを活用し、競争力をさらに高めていくためには、関連するリスクをより広範に捉え、より多くのデータソースを統合し、より優れたツールを使用する必要があります。そこで初めて、リアルタイムまたは準リアルタイムでの分析に移行し、データ量を拡大できるようになるのです。ビッグデータに潜む可能性と危険性を理解し解決するためにも、7つの重要な項目(ガバナンス、マネジメント、クオリティ、アーキテクチャ、活用、セキュリティ、プライバシー)について、留意する必要があります。

ビッグデータの本格活用に取り組む際の事前評価として、次に挙げるチェック項目を確認することをお勧めします。

7つの重要項目(チェックリスト)

1. ガバナンス (1) データガバナンス体制は、データの所有者や消費者の位置付け・定義の変化に対応していますか?
(2) データガバナンスは、データのライフサイクルの各ステージにおけるリスクに対応していますか?
2. マネジメント (1) ビッグデータの技術や手法は、比較的新しいものがほとんどですが、こうした技術や手法を扱うことのできるスキルや内部機能がありますか?
(2) ビッグデータの特性である量、種類、速度等を十分に管理できる体制が整っていますか?
3. クオリティ (1) 非構造化データに十分対応できる手法を採用していますか?
(2) ビッグデータの利用によって達成すべき目標と、それに見合うデータ品質の検討ができていますか?
4. アーキテクチャ (1) ビッグデータに関連した戦略に対応できるITインフラを整備していますか?
(2) ビッグデータを扱うために必要な処理能力や保存能力を柔軟に変更できますか?
5. 活用 (1) ビッグデータの分析結果を正しく扱い、モデル化し、解釈することのできる人材がいますか?
(2) データに基づく意思決定という新たなパラダイムに備えた従業員教育を行っていますか?
6. セキュリティ 堅牢性と、データ量の増加に対処できる柔軟性の両方を備えたセキュリティインフラを整備していますか?
7. プライバシー (1) ビッグデータ情報の所有者や、情報を使用することについての承諾の要否は明確になっていますか?
(2) ビッグデータの保存・利用方法によっては、重大なプライバシーの問題が生じる可能性があることを理解していますか?

4. おわりに

組織の情報は、一般的に過去のものであり、不完全かつ不正確であるケースも多々あります。そのため、将来を正確に予測するためには、統計的・予測的モデリングを使用し、組織の情報を外部情報によって補強するといった取組みが必要です。しかし、従来のシステムやアプローチでは迅速性や柔軟性に欠けるため、複雑で圧倒的なボリュームを持つビッグデータには対応しきれません。これに対応するためには、上記チェックリストを活用して課題を把握し、変革していくことが必要です。

企業の成功は必要な情報を必要なタイミングで活用できるかどうかにかかっています。「なに」を決定すべきか、その決定を「いつ」実行すべきか、その決定が決算や業務パフォーマンスに「どのように」影響するかを理解していなければなりません。こうした考え方が多くの企業に浸透していくにつれ、ビッグデータはさらに普及していくことでしょう。ビッグデータにより、企業はデータをより効果的に活用した意思決定が可能になり、業務の進め方や市場競争の在り方も変わっていくことでしょう。

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ビッグデータ(企業の競争と業務に変革を起こす)
Insights on governance, risk and compliance
ビッグデータ
企業の競争と業務に変革を起こす




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