コンサルティング
SIU(Strategic Impact Unit)コラム【バイオの世紀】

第1回 デジタルと融合、社会変革

2020.02.25

デジタル革命に続く、次のイノベーションの核となるのは何か。今、大きな期待を集めているのが「バイオ」だ。医療から農業、環境、食品まで幅広い産業分野でバイオ技術の活用が加速している。

技術的に注目されているだけではない。経済協力開発機構(OECD)が2009年、バイオ技術で社会課題の解決と経済成長を両立させる「バイオエコノミー」の概念を提唱して以降、第5次産業革命とも言うべき大きなうねりになっている。OECDは2030年までに世界のバイオ産業市場は国内総生産(GDP)の2.7%(約1.6兆ドル)に拡大すると予測。特に工業、農業、健康の3分野に影響をもたらすとしている。

欧州では既にバイオエコノミー市場で2.2兆円、1860万人の雇用を創出。米国のバイオ産業の規模は2008年頃から加速的に拡大し、3930億ドルの市場と420万人の雇用を生み出した。日本では経産省の報告書によると、2015年の市場規模は3兆円で2005年の10倍に拡大。業界の関連団体の予測では、2030年には約40兆円の市場と80万人の雇用が創出される見通しだ。

生物由来のバイオ素材も進化している。これまで耐熱性や耐久性、成形性に課題があると思われていたが、自動車にも利用可能なものができてきた。今年の東京モーターショーでは、木材を原料にした軽くて強い新素材「セルロースナノファイバー(CNF)」を使った「木のクルマ」が登場した。京都大学など22の大学・研究機関・企業が共同開発した。

遺伝子を自在に操作する「ゲノム編集」や人工的に生物を創る「合成生物学」の研究も活発になっている。合成生物学はまだ発展途上ではあるが、人工遺伝子を細菌などに組込むことには成功。新しい微生物からバイオ燃料や医薬品を作る研究が進んでいる。

バイオ革命を大きく後押しするのがAI(人工知能)に代表されるデジタル技術だ。両技術が融合することで、膨大な遺伝子情報の素早い解析やバイオ医薬品の迅速な開発につながるほか、微生物や農産物の培養・生産が飛躍的に高まることなどが期待されている。

世界経済フォーラムも社会経済に影響の大きい「2019年10大新興技術」に「生分解性プラスチック」や「DNAに情報を記録する新技術」など4つバイオ関連を選び、この分野を重視している。本連載ではバイオ技術が様々な分野で社会を大きく変える姿を追う。

「バイオ世紀」のイメージ
(日経産業新聞連載より転載)

【筆者】

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社
シニアマネージャー 齊藤 三希子

国内シンクタンクを経て現職。再エネ活用の地域活性化、スマート農業、農作物のブランド化、食農ヘルスケアなどの業務に従事。最近ESG(環境 ・投資・企業統治)など社会課題解決型の事業組成に取り組む。

※所属・役職等は掲載当時