アドバイザリー
SIU(Strategic Impact Unit)コラム【バイオの世紀】

第2回 環境に優しい「代替プラ」

2020.03.02

持続可能な社会の実現に向けて最近、大きな注目が集まっているのが、環境に優しい「バイオプラスチック」である。二酸化炭素(CO₂)の排出削減や廃プラスチック(廃プラ)が海を汚染する「海洋プラスチック問題」の解決に役立つと期待されている。

背景にあるのが、脱プラスチックに向けた世界の動きだ。2019年5月に欧州連合(EU)がストローやカトラリーなどの使い捨てプラスチック製品の流通を2021年までに禁止する法案を採択した。レジ袋については欧州の多くの国や中国などで禁止や有料化などに踏み切り、日本でも2020年7月から全小売店で有料化が義務付けられる。

バイオプラスチックは、生物由来の原料で作る「バイオマスプラスチック」と微生物などで分解される「生分解性プラスチック」の総称で、それぞれ環境への優しさや機能などに違いがある。

生産量が多いのがバイオマスプラスチックで、植物由来のバイオエタノールを主原料に作る「バイオPET」や「バイオポリエチレン」などが代表だ。一般のプラスチックと同じように使えるものが多い。植物由来なのでCO₂排出量の削減は期待できるが、必ずしも生分解性があるわけではない。数年前からペットボトルや食品容器、レジ袋などで採用が進んでおり、世界の大手素材メーカーも生産を強化している。

海洋プラスチック問題を救うと期待されているのが、生分解性プラスチックだ。石油由来の生分解性プラスチックもあるが、最近脚光を浴びているのが、生物由来の原料で作る生分解性プラスチックである。土壌や海洋で分解され、温暖化ガスの削減にもつながる。国内外の大手素材メーカーが研究と生産に力を入れており、ストローやレジ袋、包装材、化粧品容器などへの採用が進みつつある。

周辺領域で代替の域を超えるスーパー素材も登場している。1回目でも触れた木材由来の「カーボンナノファイバー(CNF)」がその一つで、鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度を持つ。日本企業が大きくリードしており、自動車からアパレル、建築など幅広い分野での用途が見込まれている。

こうした動きを受け、バイオプラスチックの需要は拡大している。米調査会社フリードニアグループによると、市場規模は2020年に世界で5000億円、日本で600億円になる見込み。川上から川下まで様々な企業が取り組み始めており、石油から始まり最終製品に至る従来の「炭素循環型」サプライチェーン(供給鎖)が大きく再構築されようとしている。

植物原料の供給に課題が残るものの、国内の生物資源を原料に利用できれば、地方や農林業の活性化にもつながる。課題が製造コストで化成製品の2倍とされる。代替プラスチックをいかに低コストで提供できるか。日本の素材産業や製造業の未来がかかっている。

表 バイオプラスチック
(日経産業新聞連載より転載)

【筆者】

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社
シニアマネージャー 齊藤 三希子

国内シンクタンクを経て現職。再エネ活用の地域活性化、スマート農業、農作物のブランド化、食農ヘルスケアなどの業務に従事。最近ESG(環境 ・投資・企業統治)など社会課題解決型の事業組成に取り組む。

※所属・役職等は掲載当時