コンサルティング
SIU(Strategic Impact Unit)コラム【バイオの世紀】

第11回 エコシステムの確立 不可欠

2020.05.25

ベンチャーエンタープライズセンター(東京・千代田)によると、日本のベンチャーキャピタル(VC)の投資額は6年連続で増え、2018年度は前年度比37%増の2706億円となった。スタートアップ企業への投資は日本でも活発になってきていると言えるが、米国の投資額が57.8%増の14兆4000億円超になったことを考えると、まだまだ足りないのが現状だ。

急成長が見込まれるバイオ分野への投資も世界的に見ると日本は立ち遅れている。経済産業省の報告書「伊藤レポート2.0バイオメディカル産業版~(改訂版)」(座長・伊藤邦雄・一橋大学特任教授)によると、上場した創薬型バイオ系スタートアップの機関投資家の株主構成比率は1社平均約9%で、米国(76%)や欧州(34%)と比べてかなり少ない。

これにはバイオ特有のいくつかの事情がある。1つは創薬バイオ中心に他分野と比べて製品化まで時間がかかり、評価が難しいことがある。また、素材や燃料分野などのバイオ製品は既存製品の代替となることが多く、価格など大きな優位性がないと市場形成を図ることが難しいこともある。デジタル分野などと比べて技術力がより問われることもある。上記で触れたように代替製品として市場に出ることが多く、ビジネスモデルでカバーすることが難しいからだ。

事情は海外も同じだが、欧米ではこうした障壁を乗り越えるため、国を上げて民間投資を後押ししている。欧州連合(EU)では欧州戦略投資基金を設立し、イノベーションやバイオテクノロジーなど将来の成長のために重要な分野に重点的に投資している。

米国は新しい材料戦略として2011年、新規素材開発の低コスト化や短期化を目指す「マテリアルズ・ゲノム・イニシアチブ」を掲げ、バイオを有望な基幹技術として位置づけた。この結果、米国ではバイオ系の新興企業が次々に起業、これまでデジタル産業に投資してきた投資家がバイオ投資に移行し始めた。バイオ分野でも、投資家からの資金調達で成功した企業が次の投資を生むエコシステム(生態系)ができつつあるといえる。

日本でもまずは政府資金を特定分野に絞って投下して新興企業の成功事例をつくり、呼び水にさせることが必要である。例えば、日本が強い領域の1つである生分解性プラスチックなどの生産などに対して戦略的に投資し、グローバルリーダーを狙うべきである。その上で、消費者の意識・行動改革なども含めて、民間の人材と資金が循環するエコシステムを構築することが欠かせない。

上場バイオ企業の平均株主構成

図 上場バイオ企業の平均株主構成
(日経産業新聞連載より転載)

【筆者】

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社
シニアマネージャー 齊藤 三希子

国内シンクタンクを経て現職。再エネ活用の地域活性化、スマート農業、農作物のブランド化、食農ヘルスケアなどの業務に従事。最近ESG(環境 ・投資・企業統治)など社会課題解決型の事業組成に取り組む。

※所属・役職等は掲載当時