コンサルティング
SIU(Strategic Impact Unit)コラム【バイオの世紀】

第12回 国際ルールが生む新市場

2020.06.01

将来の気候変動は人類にとって大きなリスクだが、個別企業にとってはその解決策を手掛けることが、新たなビジネスチャンスにつながる。それに気づいた海外の企業や国などはすでに環境関連需要の開拓に乗り出している。欧米では市場戦略と規制・標準化戦略を官民連携で一体となって世界に先駆けて進め、グローバルスタンダード化と市場優位性の確立を狙っている。

そうした取組みの1つが米国の「バイオプリファード」プログラムである。天然素材などを使った製品の消費推進を目指し、生物由来成分の含有量を認証する「バイオプリファード」ラベル制度を2002年に制定。米農務省が定める洗浄剤、カーペット、塗料など97分野について、すべての連邦機関に認証ラベル付商品を購入することを義務づけているのである。

欧州でも欧州連合(EU)を中心に脱プラスチックへ向けた取組みが進む。EUの行政執行機関である欧州委員会が2018年1月、「プラスチック戦略」を採択し、EU域内に流通するすべてのプラスチック製の容器や包装材を2030年までに再生またはリサイクル可能なものにする目標を盛り込んだ。この目標に基づき、2021年までにストローなどの使い捨てプラスチック製品の流通禁止など具体的な法律も順次制定されている。

廃プラスチックを巡る動きもある。有害廃棄物の国際的な移動を規制する「バーゼル条約」を改正することが2019年5月に決まり、2021年からは汚れた廃プラスチックの輸出には相手国の同意が必要になる。これまで海外に輸出して処理していた日本の廃プラスチックは完全に行き場を失う。

このような背景を追い風に、世界的に再生プラスチックやバイオプラスチックの需要が高まっている。2018年の欧州バイオプラスチック会議では、バイオプラスチックの世界市場は今後5年間で約25%成長すると予想している。世界は欧米主導による新たなルールの下で、環境関連の新しい市場の果実をもぎ取り始めたと言える。

日本はどうか。官民とも技術開発に注力しがちで、国際的なルール作りには距離を置いている面がある。しかし、いくら日本の技術が優れており、それを主張しても、国際的なルールに当てはまらなければ普及させることは難しい。

現在、環境省も「バイオプラスチック導入ロードマップ」の策定を検討している。日本企業は、関連規制や規格が整備されることを待つのではなく、日本の技術が世界の戦略の中で適用されるよう、日本主導で国際的なルールを形成し、規制・規格を整備していく必要があると言える。また、技術だけではなく、制度の構築もあわせたロードマップを検討することも重要だ。

ルール形成戦略のイメージ

図 ルール形成戦略のイメージ
(日経産業新聞連載より転載)

【筆者】

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社
シニアマネージャー 齊藤 三希子

国内シンクタンクを経て現職。再エネ活用の地域活性化、スマート農業、農作物のブランド化、食農ヘルスケアなどの業務に従事。最近ESG(環境 ・投資・企業統治)など社会課題解決型の事業組成に取り組む。

※所属・役職等は掲載当時