アシュアランス
IASBの動向

ディスカッション・ペーパー「ダイナミックヘッジ・リスク管理:マクロヘッジに対するポートフォリオ再評価アプローチ」の公表

2014.04.22

2014 年4月17日、国際会計基準審議会(以下、IASB)は、ディスカッション・ペーパー「ダイナミックヘッジ・リスク管理:マクロヘッジに対するポートフォリオ再評価アプローチ」(以下、本DP)を公表しました。

本DPにおいて、IASBは、企業が行うダイナミック(動的/連続的)なリスク管理活動について、実務的に運用可能であり、その経済的実質を財務諸表に忠実に反映することのできる新たなヘッジ会計の枠組みとして、ポートフォリオ再評価アプローチ(Portfolio Revaluation Approach: PRA)を検討しています。

ポートフォリオ再評価アプローチの要旨は、(1)企業が行っている、契約上のみならず顧客行動も考慮したうえでの経済的なエクスポージャーの発生タイミングを考慮した動的なリスク管理、及びそれに基づき連続的に変化するオープン・ポートフォリオを前提に、(2)企業が実際にリスク管理しているポジション(managed net open risk position)に係る管理対象リスクの公正価値変動と、ヘッジ手段の公正価値変動を毎期再評価し純損益で認識させ、ヘッジの効果を反映させるというものです。

なお、IAS第39号においても、金利リスクのポートフォリオ・ヘッジに対する公正価値ヘッジ会計の規定が設けられており、本DPで提案するポートフォリオ再評価アプローチの内容をカバーする点もありますが、対象が事実上、金融機関(銀行)の金利リスクのヘッジに限定されている点や、複雑で実務適用が困難な点などが問題とされています。 これに対して本DPのポートフォリオ再評価アプローチは、企業が動的にリスク管理している限り、事業会社による非金融項目のコモディティ・リスクや、為替リスクも対象とし、こうしたヘッジ活動に対して実務適用が可能なアプローチとの位置付けです。

ポートフォリオ再評価アプローチと、IAS第39号における金利リスクのポートフォリオ・ヘッジに対する公正価値ヘッジ会計を除く、一般的なヘッジ会計との主な相違は以下のとおりです。

図表1:現行の一般ヘッジ会計規定と本DPのポートフォリオ再評価アプローチとの主な相違

項目 現行の一般ヘッジ会計規定 ポートフォリオ
再評価アプローチ
1.対象とする企業のリスク管理活動、及びヘッジ対象ポートフォリオ
  • 静的
  • クローズド・ポートフォリオ(資産の入替なし)
  • 動的(連続的に変化)
  • オープン・ポートフォリオ(資産の順次入替)
2.ヘッジ対象エクスポージャー 原則としてグロス(総額)エクスポージャー ネット(純額)・エクスポージャー
3.ヘッジ対象キャッシュ・フロー 契約ベース 顧客行動ベース

1. 対象とする企業のリスク管理活動及びヘッジ対象ポートフォリオ

現行の一般ヘッジは、基本的に企業の静的なリスク管理活動を想定しており、ヘッジ会計を適用するうえでは、原則としてヘッジ手段とヘッジ対象の個別的な紐付けと、それに基づくヘッジ指定が要求されます。そのため、企業がヘッジ対象リスクを動的に管理しており、ヘッジ対象ポートフォリオを連続的に変化させる場合には、その都度、ヘッジ指定の取消しと再指定が必要となる点が問題となります。この点、ポートフォリオ再評価アプローチは、オープン・ポートフォリオを前提としており、このような頻繁なヘッジ指定の取消し/再指定は不要となります。

2. ヘッジ対象エクスポージャー

IFRS第9号「金融商品」(2013年)の新たな一般ヘッジ規定では、外貨リスクのキャッシュ・フロー・ヘッジについて、一定の条件の下、純額ポジションのヘッジ指定及び会計処理が認められていますが、これを除き、現行のヘッジ会計規定においては、企業が債権債務のネット・ポジションに基づきリスク管理を行っていたとしても、ヘッジ指定上は、そのネット金額を、債権又は債務のグロス(総額)ポジションとみなしてヘッジ指定することが要求されます。このため、収益と費用が異なる期間に発生する場合には、企業の経済的なヘッジの効果が会計上反映されないという問題が生じています。ポートフォリオ再評価アプローチでは、こうした問題は解消されると想定されています。

3. ヘッジ対象キャッシュ・フロー

現行のヘッジ会計規定では、原則として、ヘッジ対象キャッシュ・フローを契約ベースで取り扱います。しかし、実務上、例えば銀行は、契約上の満期が到来したものの、預金者が引出しを行わず底溜りするコア要求払預金や、早期償還オプションがいつ行使されるかといった、顧客行動を考慮したエクポージャーの発生時期及びボリュームに基づきリスク管理を行っています。本DPでは、こうした「顧客行動」に基づきヘッジ会計を適用することを検討しています。

このほか、本DPでは、契約締結前で資産・負債の定義を満たさないパイプライン取引(例:顧客への提示レートによる固定金利商品の予想引出量)から生じるエクスポージャーに対するポートフォリオ再評価アプローチの適用など、企業が行っている経済的なリスク管理活動について幅広い検討を行い、関係者の意見を要請しています。なお、本DPに対するコメント提出期限は2014年10月17日です。





情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?